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インクルーシブな博物館へ ―0歳からのプラネタリウムとアウトリーチ活動― #放送大学講義録(博物館教育論第13回その6)

ーーーー講義録始めーーーー

 

「先ほど『やさしい日本語でプラネタリウムを楽しもう』という取り組みをご紹介いただきました。六都のプラネタリウムドームは、世界最大級の大きさなのですよね」
はい、六都には「サイエンスエッグ」と呼ばれる、直径27.5メートルのプラネタリウムドームがあります。光学式投映機「CHIRONⅡ(ケイロンⅡ)」は1億4000万個を超える星々を映し出すことができます。当館では、天文スタッフが皆さんとやりとりをしながらお話しする生解説を行うほか、季節の星空紹介に、約2か月ごとに入れ替えるテーマ解説を組み合わせて投影しています。子どもを対象としたキッズプラネタリウムや、大型映像番組の上映も行っています。また、平日は学校団体向けの学習投影(学習プログラム投影)を行っています。

「六都で行われている『0歳からのプラネタリウム』や『思いやりプラネタリウム』、大型映像についてもご紹介いただけますか」
2019年5月22日に、0歳から3歳くらいの乳幼児とその保護者を対象とする「0歳からのプラネタリウム」を初めて開催しました。初回は、平日の朝一番の投影だったにもかかわらず、定員234人が満席となりました。そのうち0歳から3歳の乳幼児は102人でした。平日のプラネタリウムが満席になったのは、科学館が開館して以来、25年間で初めてのことでした。
このほか、音や光の出る医療機器を使用されている方や、乳幼児をお連れの方など、普段入りづらいと感じている方々にも気兼ねなく観覧していただける「おもいやりプラネタリウム・大型映像」を、毎月第3木曜日(8月を除く)に実施しています。

「プラネタリウムへの参加をためらってしまう状況下にある方々へ、ぜひ参加してくださいというメッセージを感じます。六都の今後の展望についてもお聞きできますでしょうか」
まずは冒頭で紹介した「地域の皆さんをはじめとする様々な方々とともに、誰もが科学を楽しみ、自分たちの世界をもっと知りたいと思える多様な学びの場を作り上げていくこと。そして、活動の幅を広げ、皆さんをつなぎ、地域づくりに貢献すること」。この2つのミッションの実現のために、地道な活動を重ねていくことです。
その具体化のために、さらに地域課題に向き合い、六都という場と科学というコンテンツを活用してできることにチャレンジし続けることで、地域科学館の可能性を広げていきたいと考えています。

「六都のこれからも続くチャレンジが楽しみです。最後に受講生の皆さんにメッセージをお願いできますでしょうか」
繰り返しになりますが、やさしい日本語のプログラムは今後も継続・発展させていきますので、興味をお持ちになった受講生の方にはぜひ参加してもらいたいです。そして、博物館が多文化共生の実現にどのように貢献できるか、一緒に考えていく仲間が増えることを願っています。

「今回は多摩六都科学館・六都の高尾戎美さんにお話を伺いました。高尾さん、ありがとうございました」
ありがとうございました。

アウトリーチ活動:葛西臨海水族園の移動水族館
次に、地域の博物館のアウトリーチについて見ていきましょう。2020年以降のコロナ禍においては、日本においても多くの人々が長期間にわたる外出自粛を経験し、各地の博物館も臨時休館を経験しました。博物館に足を運ぶことのできない状況下にある人々に、博物館ができることは何でしょうか。
全国の様々なミュージアムが、子どもたちがお家で楽しく学べるアイデアを伝える「おうちミュージアム」など、オンラインでの情報発信を広げていきましたが、コロナ禍が落ち着き、多くの人々が博物館に出かけられるようになっても、博物館への来館が困難な状況下にある人々に博物館を届ける取り組みを続けていくことが望まれます。

コロナ禍以前から取り組まれている、博物館が人々のところへ行く事業として、葛西臨海水族園による来館困難な利用者を対象とした移動水族館事業を紹介します。キャッチフレーズは「うみ、おとどけします!」です。2014年4月から1年半の準備期間を経て、2015年9月に本格的に開始しました。
移動水族館班長の雨宮健太郎さんによると、移動水族館とは「水族園で開発・実施してきた教育プログラムや伝える技術を活かし、水族園に来園が難しい方々を対象に園外で行う教育普及活動」であり、「水族園に来館が難しい方々を対象にした」というのが、この事業の特色だといいます。
訪問施設は、病院、特別支援学校、社会福祉施設などであり、教育を目的としたイベント(国や自治体の主催・共催・後援など公共性が高いもの)などにも出展しています。海を届けるための移動水族館車は、「うみくる号」と「いそくる号」です。うみくる号には熱帯水槽と温帯水槽があり、車の両側面から観覧できます。いそくる号は、ふれあいプログラム用水槽や解説用の標本、パネルなどを載せています。
移動水族館では、「じっくり観察!ウニ・ヒトデ・ナマコ」、「へんてこ?海の生き物」、「東京湾の干潟の生き物」などのプログラムを行っています。手作りのペーパーパペットや塗り絵、「イトマキヒトデ」や「ヤドカリ」などのオリジナルのぬいぐるみも作成して、生き物を観察してもらうときに、道具や教材も工夫して用いながらプログラムを実施しています。

このように、博物館は出張用の学習キットなどを作ることで、来館の困難な状況下にある人々のところへ自ら赴き、プログラムなどの実施が可能です。また、博物館には学校や団体向けに資料を貸し出しているところもあります。誰もが博物館を利用することができるよう、博物館はあらゆる努力を続け、そして実践によって得られた経験やノウハウを他の博物館や連携機関と共有し、博物館全体として取り組みを積み重ねていくことが重要です。