F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

【保存版】たば塩コレクションの源流を解く:特別展「実業と美術―たば塩コレクションの軌跡―」(2019)で学ぶ収集史と展示の見どころ #放送大学講義録(博物館教育論第2回その3)

ーーーー講義録始めーーーー

 

特別展「実業と美術―たば塩コレクションの軌跡―」


印刷教材には、タバコと塩の博物館のコレクションの形成史とその特徴を時代の文脈の中で解き明かした、2019年開催の特別展「実業と美術―たば塩コレクションの軌跡―」を紹介しています。

 

特別展の概要
博物館は「たば塩」の愛称で親しまれてきました。2019年に開催した特別展「実業と美術―たば塩コレクションの軌跡―」では、当館のタバコに関するコレクションのハイライトともいえる日本の美術工芸品、キセル、タバコ盆、タバコ入れなどの精巧な喫煙具や、江戸時代の喫煙風俗を生き生きと描いた屏風や浮世絵等の美術品を一堂に展示しました。
そして、当館のコレクション形成の歴史とコレクションの特徴を、「資料収集事始め」「昭和初期という時代」「収集品の活用」「たば塩コレクションの特徴」という4つの視点(4コーナー)から解き明かしました。

 

コレクションのはじまり
最初のコーナーでは、昭和初期の昭和7(1932)年に、当時、大蔵省専売局長官だった佐々木謙一郎が、喫煙文化の資料収集を事業として開始したことや、その理由として、刻みタバコから紙巻きタバコへと需要が変化する喫煙風俗の転換期であった当時を、資料収集の好機と捉えていたことを、当時の資料とともに紹介しました。
この収集事業は、佐々木の旧知の友であり、浮世絵収集家としても知られていた古堀栄とともに進められ、数年後には『大日本煙草史料図録』としてまとめられました。
この佐々木が指揮した事業によって収集された浮世絵と喫煙具を中心とした大蔵省専売局のコレクションが、当館の所蔵資料の源流になっています。

 

時代背景
明治期から導入された専売制度(たばこは明治31〔1898〕年の葉たばこ専売、明治37〔1904〕年の製造専売へ、塩は明治38〔1905〕年に専売制度が開始)をめぐっては、その後も制度運用や体制が整えられていきました。
佐々木は、関東大震災後の復興事業に関わったのち、1923年にはたばこと塩の専売制度見直しの責任者となり、戦後に引き継がれる専売事業の基礎を作っていく時期を担った人物でもありました。
また、佐々木が専売事業に関わった大正末から昭和初期は、震災、金融恐慌、昭和恐慌と、何度も不況に襲われた時期でもありました。不況により没落した旧大名家や財閥などが、その書画・美術品を売り立て(展覧入札)等によって市場に放出し、そうした機会に購入された美術工芸品もありました。
図2-3は、当時公開された売立(展覧入札)の場の様子を伝える写真で、静和園(紀州徳川侯爵家別邸)蔵品展覧入札下見会の様子として紹介されています。
売り立てでは、このような下見会・展覧が行われ、出品目録が制作されたことを今に伝えています(例として、静和園第二回蔵品展覧目録に掲載された資料があることが示されています)。