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なぜ博物館運営は苦しいのか:箱物行政と教育普及の現場から考える日本の課題 #放送大学講義録(博物館教育論第15回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

日本の博物館が抱える構造的問題


寺島洋子さんがご覧になったデンマークのアーケン近代美術館における博学連携プログラムは、3年間という時間をかけてじっくり取り組む継続的な課題提起教育の素晴らしい事例ですね。課題提起教育は私たちの現実社会における課題を博物館と利用者が一緒に考えていくものですから、そのアプローチは人文科学系、自然科学系のいろいろな学問領域にわたる学際的なものと言えます。
15回にわたって博物館教育論を学んでいらっしゃった受講者の皆さんは、博物館教育は学際的であることをすでにご存知ですね。ヨーロッパが直面する社会問題の多くは同様に、日本も直面している問題であると言えますので、日本の博物館でも博物館の種類に関わらず、こうした学際的な課題提起教育の機会が増えていくことを期待しております。
そうですね。では、その日本の博物館が抱える問題については、その利用者である私たちも、学芸員を目指す方々も知っておく必要がありますので、今回は印刷教材第15章第2節(2)に沿って考えてみましょう。
第二次世界大戦後の教育改革の一環として、戦後の法制度整備のもとで博物館は社会教育機関として位置づけられ、その後、高度経済成長期を経て、特に1970年代から1990年代にかけて、多くの博物館が各地で設置されてきました。さらに博物館法の登録を受けた民間の博物館も増加してきました。量的な拡大が見られる博物館は、その質的な問題が指摘されてきました。その最たるものは、いわゆる「箱物行政」への批判です。
箱物行政とは、博物館などの文化施設の整備において、建物や施設の設置(いわばハード面)に力点が置かれやすい一方で、施設の運営体制や事業の企画・実施、人材配置や調査研究の継続といった運営(ソフト面)への投資や制度設計が十分に伴わない、という問題を指す文脈で用いられてきました。
しかし、博物館を運営する国や地方公共団体等の財政が逼迫し、博物館の運営を改善する目立った動きはないばかりか、運営予算や人員が縮小傾向にあることが指摘されてきました。
この点については、平成20年度「日本の博物館総合調査研究報告書」においても、平成9・16・20年調査の時系列比較という形で、運営・経営環境の厳しさの中での博物館の変化や課題が整理されています。
また、同報告書が掲げる時系列比較の枠組みの中では、博物館が社会の変化や利用のあり方の変化に対応しながら、展示や教育普及活動、地域連携などの取り組みを模索してきたことが論点として示されます。
私も同感ですし、各回のゲストのお話も、教育資源、教育機会の提供には学芸員による収集保存・調査研究活動の質を高めていくことが要であることを明らかにしてきました。