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学芸員はなぜ足りないのか:博物館の運営基盤(職員・資料・財政)の現状と課題 #放送大学講義録(博物館教育論第15回その5)

ーーーー講義録始めーーーー

 

博物館の運営基盤と学芸員の現状

 

私も全く同感です。この調査は、昨今の博物館の教育活動重視の動向の積極的・消極的要因を明らかにした点で、意義深いと言えます。また、日本では教育普及活動を展示とは別に考えてきたこともわかりますね。

さらに、より最近の令和元年度に実施された日本博物館協会の「日本の博物館総合調査」報告(調査は2019年10~11月に実施)では、「一番目に力を入れている活動が展示と教育普及」だった博物館が7割以上だったことから、この傾向が日常的な研究活動、収集保存活動に裏付けされたものかを検証すべく、「一番目に力を入れている活動」と「主要事業に対する不十分度」について、クロス解析がされました。

その結果、展示および教育普及活動を重視している館の7割以上が「調査研究活動が十分にできていない」「必要な資料整理が進んでいない」といった悩みを抱えながら業務に取り組んでいる実態が明らかになりました。

この結果を踏まえ、同報告書は次のように提言します。「博物館において、調査研究並びに収集保存は、事業の根幹を成すものであり、それらの積み重ねによる成果が展示、教育普及、さらにはレクリエーション活動を通じて、市民に還元されるという関係性を基本において、運営がなされるべきである。」

では、収集保存・調査研究に携わる学芸員はどのような状況にあるのでしょうか。印刷教材表15-1は、文部科学省が実施した平成30年の社会教育調査結果から、2018年10月1日現在の博物館法に基づく博物館、1館あたりの学芸員数を算出したものです。

日本の博物館は、博物館法に基づくものだけではありませんが、文部科学省の社会教育調査は概ね3年ごとに実施されており、社会教育調査の集計結果の推移を見ると、博物館(博物館法に基づく博物館等)や博物館類似施設の職員配置をめぐる状況は、年次ごとに変動しつつ把握されてきました。とはいえ、表15-1の通り、2018年の1館あたりの学芸員数は依然として少ないですね。

2019年の「日本の博物館総合調査」の結果をもとに、職員体制・所蔵資料・財政基盤という博物館の3つの運営基盤を概観すると、同調査を実施してきた20年以上に及ぶ期間を経てもなお、その整備改善がなかなか進まない実態が見えてくると、同調査を総括した半田昌之さんは指摘しています。

博物館の運営基盤である職員体制、所蔵資料、財政基盤のいずれにおいても、その整備改善が進まない実態が20年以上に及ぶということは、日本の文化度が脆弱であるという残念な状況です。なぜこのような状況は続くのでしょうか。

寺島さん、ご自身、学芸員として国立西洋美術館で仕事をされたご経験の中で、どのような課題があり、どのような取り組みをされましたか?

私が担当する教育部門も、「日本の博物館総合調査」で指摘されている職員体制が一番の課題でした。私が国立西洋美術館に就職した当初、教育担当の学芸員は私一人で、さらに広報も私の仕事だったので、本当に忙しかったですね。

今日の多くの博物館が直面する厳しい状況と同じ状況ですね。

そうですね。そこで通年で毎日行うプログラムを実施するのは難しいと思い、年に1回、所蔵作品を活用して子供を対象に小展覧会を開催することにしました。当時、西洋美術館では特別展に関連する講演会しか実施していなかったので、西洋美術館に欠けている活動から始めることにしたのです。

この小展覧会に関連して作成したワークシートや実施したギャラリートーク、様々な創作や体験のプログラムが、その後に開始したスクールギャラリートークやファミリープログラムといった活動の基盤となりました。

活動の実績を積む一方で、非常勤でも良いので、教育担当の増員を訴え、少しずつスタッフを増やし、ボランティア制度の導入によって通年のプログラムを継続して行える人員体制になりました。日本の多くの博物館でも同様の課題を抱えていると思いますが、私はたとえ非常勤であっても増員してもらえて、運が良かったと思います。人員確保の問題は、行き着くところ財政基盤の問題なので、社会全体が不況のときは増員は難しいですからね。