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行政法の存在意義がわかる:予防的規制の役割と刑法(未遂・予備)との違いを古物営業法で解説 #放送大学講義録(行政法第1回その6)

ーーーー講義録始めーーーー

 

行政法の特色①:予防的対策としての役割


印刷教材の3「行政法の存在意義」、これから移りたいと思います。これまでの仕組み、新聞記事に現れた問題点なんかを説明してきましたが、もうちょっと一般的に、行政法の存在意義について、これから学んでいきたいと思います。
日常生活を送る中では、行政法が時々出てくると思いますけれども、ほとんど意識することはないと思いますね。古物営業法も今初めて聞いた方が多いかもしれません。ただ、こういった古物営業法を始めとする行政法は、公益を守って社会を守るために重要な役割を果たしているということですね。じゃあ、そういった行政法の特色をまず見ていきたいと思います。
1つ目のポイントは予防的な対策ということになりますね。説明から始めます。

窃盗罪に見られるように、刑法は、犯罪を処罰してその犯罪が繰り返されないようにする、という機能を持っています。ただポイントは、原則として、内心で「やりそうだ」という段階ではなく、外界に現れた行為を対象にして、犯罪が起きた後に捜査・裁判を経て処罰する、という事後的な側面が強い、ということですね。 もちろん、犯罪によっては未遂が処罰されたり、さらに一部には予備・準備段階が処罰対象になるものもありますが、それでも、基本は「行為」を基準にして責任を問う仕組みである、というところを押さえてください。
刑法に基づく制裁というのは非常に強力なものがありますので、そういった意味では効果はあるとは言えます。

これに対して、行政法の役割なんですね。事後的な対策、何か問題が起きてから対処する、公の利益が侵害されてから対処する、という場合ももちろんありますけれども、多くの場合、問題が起きにくいように、つまり事前に予防的な対策を組み立てていく、というところに大きな特色があるわけなんですね。

古物営業法からわかってもらえたと思うんですけれども、いろんな義務やルールを定めて、盗品の売買を防止し、速やかな発見等を図って、結果として窃盗その他の犯罪を防ぐ、そして被害の迅速な回復にも資する、というのが目的なんですよね。
こういった、予防的に犯罪を起こしにくい世の中にするんだということ、そういう意味でまさに予防的な対策ということがありますね。ただ、「被害の迅速な回復」という目的もありますから、こちらはどちらかというと事後的な対応の側面も含んでいる、という理解になりますね。

行政法、古物営業法に限らず、行政法に属する法律では、将来のリスクや損害が現実化する前の段階であっても、一定の必要性がある場合に、許可制や義務付けなどによって行為をコントロールする、という発想がよく見られます。 ただし、何でも無限定に制限できるという話ではなくて、法律に基づき、必要な範囲にとどめる形で制度が組み立てられる、ということが前提になりますね。
さらに、こういった予防的な手段というのは、行政法の特色であると言えるわけなんですね。

 

図表(刑法と行政法の「予防/事後」イメージ)

 

観点 刑法(典型) 行政法(典型)
基本のタイミング 事後(犯罪後の捜査→裁判→刑罰)  事前(許可・義務・監督でリスクを抑える) 
例外(既遂前) 未遂・予備など(犯罪類型により限定)  予防的規制自体が制度設計の中心になりやすい 
古物営業法の位置づけ 盗品等売買防止・速やかな発見等→犯罪防止・被害回復