F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

【行政法】許可制の仕組みと審査基準を食品衛生法で理解──自治体許可・監督・処分と「規格基準」の法的根拠 #放送大学講義録(行政法第2回その3)

ーーーー講義録始めーーーー

 

許可制の仕組みと審査基準


さて、皆さん、飲食店、レストランで食事をするときですね、営業許可が張り出されているのを見たことがあるかもしれませんね。よく知られているように、レストランやカフェといった飲食店、あるいはお弁当の製造工場といった、そういう食品を製造・販売する際には、事前に行政―都道府県だけでなく、保健所を設置する市や特別区などを含めた、いわゆる食品衛生行政を担う自治体ということになりますけど―その許可を得なければならないということになります。ということになりまして、この点は古物営業法と同じということになりました。
審査のポイントですね。行政庁がどういう点をチェックして、許可を与えるのか、あるいは与えないのかということになりますが、それは、要件・基準を満たしているというのが基準になるわけですね。問題となる営業に応じて、審査のポイント―許可が与えられる条件も変わってくるんだということを覚えておいてくださいね。
古物営業法の場合ですね、盗品の売買とかがされないことといった、そういう面から審査をしていたんですが、飲食店の場合は、また衛生面から審査するというふうに違いがあるわけです。
法律違反の恐れがある場合、行政が監視・監督を実施することも前回と同じになります。場合によっては行政処分をして、さらには罰則を用いることもできるのだということで、そういう許可制の基本的な仕組みがここで導入されています。
他にもいろんな規定があるのですけれども、今回の授業では、この新聞に関係する部分を説明していきたいと思います。

 

法律と規格基準の関係―法律による委任


さて、ということで、この記事では、豚の生肉を飲食店で提供することが禁止されたということになります。ここに出てくるのは、「できる限り」ではなく、肉の中心を63度で30分以上加熱する、そういう細かい基準があって、これを守ってくださいということになりますね。
ただ、ここでいう規制の切り方は、一般に「豚のお肉や内臓を生食用として販売・提供することを禁止する」という整理になります。ですので、豚肉料理の提供一般が禁止されるというよりは、「生食用としての販売・提供を禁止する」という形で、危険の大きい行為類型を狙って規制している、という点がポイントになります。
また、63度で30分以上という基準については、「同等以上の殺菌効果」がある方法も認めるという枠組みで、例えば中心部75度で1分以上といった示し方がされています。
食品衛生法の目的からすると、健康に有害な食品等の販売を規制できることは当然だと思いますよね。ただ、今回ですね、その法的な根拠ですね、つまり、それがどういう法的な根拠に基づいて実施されているのかということを見ていきたいと思います。
衛生の観点から何かを規制すると、規制されないということもありますが、その規制がどういう手続き・手段で実施されたのか、どういう法的根拠に基づいているのかということが重要になってくるんですね。普段の生活では気にすることはないかもしれませんが、重要だということです。
注意して記事を読み返してみると、「新たな規格基準を定めて」というふうに書いてありますね。実は、規制を強化する―規制緩和の話をしましたが、その逆の規制を強化するという方向―、通常であれば国会が法律を改正して新たな規制を導入するということも結構あるのですが、どうやら、この場合にはそうではなさそうで、法律の委任に基づく「規格基準」を改正して対応した、という仕組みが問題になるわけですね。
「新規基準」という言葉が出てきますけれども、この基準って何なんだろうかということを考えないといけないということですね。では、細かい点で考えるんだなと思うかもしれませんが、そこがポイントということになります。
この後で説明するように、法律で人々に義務を課したり、権利・自由を制限したりする場合には、法律の根拠が必要になるとされるわけですね。この法律というのは当然、国会で作るもので、結局は国民の代表である議会・国会の承認なしに、行政が国民に不利益を与えることは許されないということになるわけですから、何か規制を強化するという場合には、法律を改正してくださいと。法律を改正するということは、国民の代表である国会議員がするということが求められる。
そうすると、改正しないので、食品衛生法を改正せずに豚肉の生食禁止ということになりそうなので、法律主義違反になるのではないかと、そう思う人もいるかもしれませんが、ここでは問題になっていないんですね。
そして、ということで、食品衛生法は長いんですけども、ざっと見ても、豚肉の生肉の提供を禁止するといった、より細かい詳細ルールが定められているわけではないんですね。人の健康を害するような場合が必要になったときに、法律を改正しないといけないということで、非常に時間がかかるということで非効率が悪いということになりまして、ですので、今では、法律では基本的な原則を定めるに留めているということになります。
じゃあ、豚肉の生肉の提供禁止といった細かいルールはどこに書いてあるのかということを見ていくと、食品衛生法13条がポイントになってくるわけです。
長い条文で、ぱっと何が書いてるかよくわからないと思いますが、ポイントとなる文を抜き出してみると、厚生労働大臣は、これこれこういう点に関して基準を定めることができるというのが基本的な仕組みですね。
どういった点かというと、公衆衛生の見地から、販売の用に供する食品もしくは添加物の製造、加工、調理もしくは保存の方法につき、基準を定めることができるとなっています。これは要するに、厚生労働大臣が細かい基準を定めることができますよという、そういう法律の定めになっているわけですね。
この規定には、食品の調理の方法というのも含まれますので、豚肉の加熱処理については、厚生労働大臣が基準を定めることが法律で認められているということになるわけです。
そして、この食品衛生法13条2項によると、この基準は法的な強制力を有するので、飲食店は当然従わないといけない。従わないと、行政処分、行政罰を受けることになりますよということですね。
難しかったかもしれませんが、実際上の必要性ということになりますけれども、詳細な法的ルールの制定を、国会が法律で直接に担うのではなくて、担当大臣に委ねるという、そういう方法が取られることが非常に多いですね。
古物営業法であれば、国家公安委員会ということになりまして、今回の飲食店に関するものであれば、厚生労働大臣ということになるようですね。それぞれの行政機関が細かいルールを定める、そういうことが多い。行政がルールを定めるということを、まとめて「行政立法」と呼びますね。
行政立法にもいろいろ細かい種類がありますね。これはまた後の授業でも学んでいきたいと思います。ここで専門用語なんですが、覚えておいてほしいのは、「法規命令」という概念ですね。人々を法的に拘束する力を持つ、そういった行政立法のことを特に法規命令というふうに呼びます。
またじゃあ、その命令の中でも、誰が制定するのか、誰が定めるかによって違いがいろいろとありまして、内閣が定めるのは「政令」ですね。大臣―この場合は厚生労働大臣ですけど―厚生労働大臣が定めるのは「省令」と呼んでいますね。こういったいろんな命令があるということを覚えておいてほしいと思います。
ただ、今回の記事でいう「規格基準」そのものは、実務上は「食品、添加物等の規格基準」という形で、告示(厚生省/厚生労働省告示)に置かれている、という点も押さえておきましょう。つまり、行政が一般的・抽象的にルールを定める仕組みは確かに行政立法なのですが、この事例の“基準”は、典型的な省令というより、告示として整備されている、という整理になります。
じゃあその先、出てきたように、法律で規制を導入する細かいルールまで定めるということが理想的かもしれませんね。ただ、実際に先ほど少し説明したように、法律改正には手間ひまがかかるということですので、また硬直的なものになるのを防ぐために、この行政立法が多用されています。
ただし、ということで、法律主義の原則は、あくまで国民の代表である国会がこういった法的ルールを定めなさいということを求めていますので、この行政立法というのは、この法律主義に対する例外に当たると。そのため、無制限に認めることはできませんよということになります。
これも、「法律による委任」という考え方が出てくるんですが、法律が委任した範囲で、委任した限りにおいて、行政側は様々なルールを定めることができるという、そういう原則が、法律主義のルールということになりますね。
それはどういうことかというと、食品衛生法13条を読み返してみると、どの大臣が、どのような目的で、どのような事項について基準を定めることができるか、具体的に示されているわけですね。厚生労働大臣が、公衆衛生の見地から、例えば食品の調理方法について基準を定めることができると、具体化されてますよね。で、この食品衛生法13条を根拠として、この記事で言う新規基準を定めたということになります。

 

図表(講義用:この事例の「法→委任→基準→効果」整理)

 

レイヤー 位置づけ この事例での具体例
法律 国会制定。基本原則と委任根拠 食品衛生法13条(規格基準を定め得る/適合しない場合の禁止)
委任に基づく基準 行政が定める規格基準(法の授権の範囲内) 「食品、添加物等の規格基準」(告示)
規制内容(例) 具体的・技術的な水準の設定 豚肉:中心部63℃30分(同等以上の例:75℃1分等)
法的効果 違反時の帰結(行政処分・罰則等) 営業禁止・停止等(例:法61条)/罰則は法に規定