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行政法を学ぶ本当の意味:権利救済・リスク管理・裁判の使い方がわかる #放送大学講義録(行政法第15回その7)

ーーーー講義録始めーーーー

 

立法政策と行政法学習の意義

立法政策の重要性
さて、どんどん話が飛びますが、今度は立法政策、いかに法律を改正していくかという、そういう問題ですね。この法律の制定・改正問題というのは結構いろんなところで取り上げました。これも重要でして、例えば道路運送法等の改正によって道路運送事業者、バス会社、タクシー会社が翻弄されたっていうそういう記事も見てきましたが、こういった法律の制定・改正も非常に重要になってきますね。

解釈論と立法論
一つは解釈論ということで、現行の法律を前提として、その中でどういった対策を取ることができるか、そういった手立てを考える。これはなんでそうなるかっていうと、法律の規定はだいたい曖昧なものですから、幅があるわけですね。その幅の中で、どういった対策が可能であるかっていうようなことを考えることがあるわけですから、これは解釈論という風に呼んでいますね。

ところが、どういうふうに解釈してもこれは無理っていうパターンがありますとね、その場合は今度は立法論ということで、法律を改正して対策を講じるということになりますね。あるべきより理想的な法律を目指して、それを考えるというのが立法論ということになりますね。

当然どちらも重要ですので、解釈論と立法論、両方ともしっかり押さえておく必要があると思います。

法改正の必要性と柔軟性
もし古くなって時代遅れになってしまった法律がある場合には、それを早く改正した方が望ましいということは当然ですよね。今回の授業をいろいろ振り返ってみますと、例えば生活保護制度については、生活保護世帯の子どもの大学等への進学を支援するための「進学準備給付金」が制度化されるなど、制度改善の例も見てきましたね。これは、改正法の施行(2018年6月8日)に伴うものです。

ところが、道路運送法等の改正というものもありまして、これは需給調整規制の廃止など、自由競争を促進する方向での大きな制度変更でした。バス・タクシー分野では、2002年2月1日に施行されています。
ただ、それがすべてうまくいくとは限らないわけでして、例えばタクシー業界については、供給過剰などの問題への対策として、後にタクシーの適正化・活性化に関する特別措置法(いわゆるタクシー特措法)が成立・施行され、対策が講じられるようになった。そういう流れも確認しましたね。

それで、一旦法律を改正して新しい政策を実行しても、それがもし何か問題があった場合には、それをすぐに修正した方がいいわけなんですね。そういった法律の改善も大事だけど、もし問題があったらすぐに見直す、必要なら軌道修正するという柔軟性も大事になってきますので、それも押さえておいてほしいと思います。

新型コロナ対策と今後の課題
この新型コロナウイルス問題についても、感染症法や特措法の改正がされましたし、今後もさらに、例えばより強い行動制限の仕組みを導入すべきかどうか、といった点が議論になり得る。そういった場合、本当に必要かどうかをしっかり検討しないといけませんね。

先ほど言ったように感情に流されるのではなくて、理性的に検討しないといけない。こういった強い仕組みを導入するよりか、医療体制を充実させることによって、人々の自由、経済の活動なんかを守りつつ、感染症と共存するという道もあるかもしれませんね。そういったこともいろいろ考えないといけないということになります。

行政立法の重要性
さて、また行政立法ですね。行政立法について見てきました。これも、現実の行政過程では、法律の改正を経ずして、この行政立法の改正だけでいろんな改革が実施されていることも多いよね。実は、そちらの動向もしっかり見ていかないといけないということですね。

液体ミルクの、液体ミルクの解禁問題については第6回で見てきましたが、これは行政立法や運用の整備が積み重なって実現していった例として整理できますね。例えば、制度面では、特別用途食品としての表示許可など、健康増進法に基づく枠組みが関わりますし、また製造に関わる承認について、2019年1月31日に厚生労働大臣の承認を取得した旨が公表されています。
非常に重要な改革ではあったのですが、必ずしも「法律改正」だけで動くわけではなくて、こうした行政立法・運用の側面も含めて進んでいく、そういうことになりますね。

実際、これから社会に出ている方もいらっしゃると思いますし、これから社会に出る方もいると思いますが、いろんな経済活動においては、法律というのは重要な原則を定めるのですが、その細かいルールというのはこういった省令等で決められていて、そちらの方が実際上は重要であるっていうパターンも多いですので、そういった省令の動向をきちんと把握し、必要ならコントロールするというのも大事になってきます。

最終回のまとめ
さて、いろいろと復習をちょっとしてきましたが、どうでしたかね。今回の授業では、もう一度この新型コロナウイルスの問題を参考にして権限濫用の禁止について学びましたね。法律の目的というのは重要ですよということになりますね。

そしていろんな論点をちょっと取り上げてみましたね。立法論の問題とか、あるいはマイノリティの保護といった問題ですね。こういったこの今回の行政法の授業の中を貫いているいくつかのテーマについて、最後にまとめとして触れてみました。

本授業の特徴
さてじゃあいよいよまとめということになりますが、なかなかちょっとまとめるのは難しいところではありますね。今回のポイントは、従来の伝統的な教科書に比べるとちょっと変わった方法で、皆さんに行政法を伝えることにしました。

まずは記事を見てもらって、そこにどういう問題があるのかっていうのをまずちょっと想像してもらって、そして行政法の観点から問題を分析するということですね。こうすることによって、行政法というのが実際の生活にどういうふうに関わっているかということをより深く理解してもらいたいと思ったからなんですね。

行政法のエッセンス
私も行政法を学び始めて長いですね。もう20年近く経りまして、まだ若手だと思ってたんですが、もういつの間にか中堅とか、だんだん長老の域に達していまして、これもちょっと残念なんですが、最近やっぱり強く思うのは、その行政法のエッセンスをできるだけわかりやすく抽出して、それを人々に伝えたいと。そういうこのエッセンスが非常に面白いものなんですね。

エッセンスがわかると、この行政法のこう難しい論点なんかを学ぶ意欲がどんどん出てくるわけなんですね。ですので、まずはちょっと細かい知識とか体系的な知識ではなくて、やはりそのエッセンスをしっかりわかってもらって、それがあると、それを踏まえて細かい知識をだんだん学んでいくというのがいいのではないでしょうか。

これは行政法に限らないということですね。憲法や民法、刑法なんかもそうですね。こういった学問も非常に体系的で難しい概念が並んでいるんですが、エッセンスが非常に簡単なものなんですよね。そういったことを、エッセンスをわかるのは楽しくなりますね。ぜひそこから始めてほしいなと思いますね。

法を身につける意義
そしてまたこの法というのは、今回行政法もそうでしたが、人々の権利や自由を守るための手段ということになりますから、自分たちを守るため、あるいは自分たちの友達とか家族を守るための道具だという風に思って、それを身につけておいてほしいと思いますよね。

例えば、いろんなリスク管理ということですね。例えば地震が起きた時に懐中電灯を用意しておくとか、保管用の水を用意しておくとか、そういう備えをしている家庭は多いと思いますよね。それと同じですね。法の知識を身につけておくということは、細かい知識は必要ないですよ。しかもだいたいこういう問題の時には、こういった法の規定があって、例えばこういうふうに自分たちの権利を守るといった原則を知ってほしいと思います。それが自分たちの身を守るためのリスク管理と言えるわけなんですよね。

法的知識の実践的意義
例えば自然災害や病気といった困難にあったとしても、法律に関する知識がある程度あれば、国や自治体が必要な支援を速やかに受けることができるわけなんですね。

さらに、行政との間に法律をめぐる争いが生じた場合には、裁判所に提訴することができると。そして可能性としてはまだちょっと低いんですけど、自らの権利は裁判を通じて守ることができるわけなんですね。

そういったそもそも裁判による救済というものについて、全くイメージがない、全くその存在を知らないという人にとっては、裁判を提起するということが非常にハードルが高い、あるいはそもそもそういうことを思いつきもしないということになるわけなんですね。

ところが、こういったこういうふうに裁判というのが機能していて、実際に救済されている人も多いことを知っていれば、自分たちの身を守ることも容易になってきますよね。裁判っていうのは対岸の火事ではなくて、皆さんの生活にもやっぱり関係してるということになります。

行政法学習の困難さと意義
しかしということで、繰り返しになりますが、行政法の体系はやっぱり複雑なんですよね。行政法の教科書を、ある程度きちんとその細かい知識を学ぶとすると、3冊本とか4冊本ぐらい、非常に分厚い教科書になる。それを見ていくとやっぱり抽象的な原則とか理念がずっと並んでいて、これは一体どういうことなのか、どういう意義があるのか、どういう役割を果たしているのかっていうのが、なかなか見当がつかないんですよね。

そうするとなかなか、初学者の人にとっては学びにくい学問であるということになって、その結果として損をしてしまうことも少なくないということになりますね。

具体例から学ぶ重要性
さて、この授業で取り上げた様々な事例というのは、必ずしも頻繁に起きるものではないのですが、行政法が問題となる典型例にあたるわけなんですね。こういったことを学んでおけば、類似の問題が起きた時に的確に対処できるようになると思いますね。

例えば、難民認定の問題なんかを取り上げましたが、例えば学校の友人で、その難民として逃れてきた人がいると。その人が本国に強制送還されそうになってるという場合に、こういった知識があると、「いや、この難民認定という仕組みがあるから、それを利用して日本に居続けることができる」といったそういうアドバイスをすることができますよね。

そしてまた、この問題に詳しい専門の弁護士なんかを調べて、その人に助けを求めることによって権利を守ることができますよね。こういった知識をどんどん積み重ねておくと、いざという時に非常に役に立つということになりますね。

おわりに
ですので、この授業で出てきた様々な登場人物を、未来のあなた、あるいはあなたの友人、あなたの家族であるかもしれないっていう、そういうふうに想像しながら、また振り返ってほしいなと思います。

 

何を考えるか 中心となる問い 典型的な手段 この講義での例
解釈論 いまの法律で、どこまで可能か 文理解釈・目的解釈、一般原則(比例等) コロナ対応で「現行法の射程」を検討
立法論 いまの法律では無理なら、どう直すか 法改正(国会での意思決定) 感染症法・特措法改正、生活保護の進学支援 
行政立法(行政規則含む) 法改正なしで、何が動くか 省令・告示・通達、承認・許可など運用 液体ミルク:制度整備+承認