ーーーー講義録始めーーーー
研究開発技術者の特性:コスモポリタンとローカル
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では、まず研究開発技術者の人的資源管理から考えていきたいというふうに思います。まず、研究開発技術者とホワイトカラーというのは異なる特性を持っているということ
が、古くから論じられていますので、そのことについて説明することから始めましょう。
一般に企業組織で働く人々、ここでいう人々というのはすなわちホワイトカラーですとか工場で働く人々をイメージしてくださればいいんですが、そういった人々は所属する組織に準拠し、そこで認められることを目指しているというふうに考えられます。組織から評価されたいし、できれば昇進したいというふうに考えているということになります。
ところが、研究開発技術者などの専門的で、かつ体系的な知識を用いて働く人々というのは、志向の置き方が異なる場合がある、ということが言われています。組織の中だけではなくて、組織外の同業者集団、すなわち企業外部にいる同じ分野の研究者の集団ですとか、同じ領域の開発者の集団ですとか、そういったところに準拠し、それらの人々から高く評価されること、このことを重視する傾向があるということなんですね。つまり、組織内部の評価と並んで、組織外部の同業者集団からの評価を強く意識することがある、ということになります。
グールドナーという社会学者は、こうした志向の違いを、コスモポリタンとローカルという概念で区別して論じました。コスモポリタンは、組織の内部だけではなく、組織外部の専門的な参照枠(同業者・専門職コミュニティ等)との結びつきが強い志向として説明されます。これに対して、ローカルは、所属組織そのものへの結びつきが強く、組織内部での承認や地位に比重を置く志向として説明されます。
研究開発技術者が相対的にコスモポリタン志向を示しやすい一方で、組織に準拠するホワイトカラーの人たちが相対的にローカル志向を示しやすい、という整理で、その2つは志向の置き方が異なるんだということになるわけです。
このように研究開発技術者には、所属する組織そのものよりも、自らの仕事や専門性、そして専門職コミュニティからの評価に比重を置きやすい傾向がある、こういったことが指摘されてきたわけですね。
そのため、組織を重視するホワイトカラーと同じ発想だけでマネジメントをしていっても、必ずしも十分に動機づけられない可能性がある、ということが考えられるわけです。
図表(理解補助:Gouldner の「志向」の整理)
※本文の趣旨を視覚化した模式図(新しい主張の追加ではなく、説明補助)です。Gouldner の枠組みは「組織への志向」と「専門職(同業者)への志向」の組合せで理解されます。
| 組織への志向:高 | 組織への志向:低 | |
|---|---|---|
| 専門職(同業者)への志向:高 | (両方を重視するタイプ:状況により混在) | コスモポリタン |
| 専門職(同業者)への志向:低 | ローカル | (両方が弱いタイプ:周辺化の可能性) |
