F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

知識労働者のマネジメント最前線:実務家インタビューと今後の課題(国際獲得競争・中高年対策) #放送大学講義録(人的資源管理第12回その7)

ーーーー講義録始めーーーー

 

実務家インタビューと今後の課題
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【実務家インタビュー】

 

これまで知識労働者に適した人的資源管理を考えてきたわけですが、ここで実際の企業における知識労働者のマネジメントについて詳しい実務家の方にお話を伺いたいと思います。多くの会社で人事管理や人材開発のサポートをしていらっしゃいます、株式会社ライフワークスにてコンサルティング事業統括ゼネラルマネージャーおよびシニアコンサルタントを兼務されています野村圭司さんにお話を伺いたいと思います(※肩書は公開資料上の表記に基づく)。


野村さん、どうぞよろしくお願いいたします。

野村氏:どうぞよろしくお願いいたします。

――まず、野村さん自身も知識労働者のお一人ということになります。簡単にお仕事の内容をご紹介いただいて、どんな特徴があるというふうに認識されているのか、ご意見を聞かせていただけますでしょうか。

野村氏:ありがとうございます。私は主に企業の人事担当者の方をお客様としまして、その企業に対して人事政策ですとか、従業員のキャリア開発、人材育成に関する施策ですとか制度や仕組み、こちらを構築するお手伝いをする仕事をしております。仕事の特徴としましては、出来上がったいわゆる製品やプロダクトを売るというよりかは、お客様1社ごとの状況を詳細にヒアリングをさせていただいて、問題の分析ですとか課題の設定をして、その課題はどういう方向で解決していくのかということのシナリオを作っていく、そしてそれを具体化するための施策を設計して実行していくというそういう仕事をさせていただいております。

――ということは、オーダーメイドというか、カスタムメイドのような形でメニューやサービスをご提案して提供するというような形ですね。

野村氏:おっしゃる通りでございます。

――かなりクライアントさんとのコミュニケーションというのは、濃密な感じになるんでしょうか。

野村氏:そうですね。内容にもよりますが、定期的にミーティングを設定させていただいて、いろんな角度から現状をインタビューさせていただくですとか、場合によってはお客様先の複数の方々がいらっしゃるので、その方々の会議体をファシリテートすることによって状況を可視化していったりとか、そういったご支援をすることもございます。

――多分ですけども、お客様の中では問題意識がはっきりしてなかったりとか、メンバーによって意見が違ってたりとか、そういったケースもあると思いますが、そういうのをまとめていくというのは難しいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

野村氏:そうですね。規模が大きい企業ほど、同じ人事といっても多様な役割の方がいらっしゃるので、各お立場で意見ですとか目指す方向がだいぶ違っているなということがございますので、そこをいかに合意形成していくのかということは、非常に骨が折れる部分もございますね。

――野村さん自身はお仕事でこんなことをやってみたいという目標ですとか、こんな風になりたいというご希望はお持ちですか。

野村氏:そうですね。私は今ライフワークスという会社に所属した立場でお仕事をさせていただいておりますが、雇用されている立場でありながら、人事管理ですとかキャリア開発という領域に対してコミットしていきたいという考えがありますので、その領域に対していかに自分の提供価値を上げられるかということに対しては、日々意識をしながら仕事をさせていただいているので、雇用されている立場でありながら個人事業主のような感覚を持ちながら仕事をしているような感じではございます。

――授業でも議論しているのですが、自律性ですとか職業意識、知識労働者の方がそれを強く持っていらっしゃるのですが、それが当てはまるというようなお話ですかね。

野村氏:そうですね。

――ではライフワークス社内のお話になると思いますが、部下の方もいらっしゃって、後輩の方もいらっしゃる。そういった方々の育成ですとかマネジメントについて何か気をつけていらっしゃることがあれば教えていただきたいんです。

野村氏:そうですね。比較的一人一人が自律的に働いている集団の会社ではありますので、手取り足取り教えていくですとか、何かその知識を体系立ててレクチャーしていくという形よりも、まず実際のお客様の案件を一緒に取り組むことによって、そこでそのメンバーがどういうふうに課題を捉えたのかということを問いかけながら実践的に鍛えているというのが現状かなというふうに思っております。

――対話が結構重要になるということですね。

野村氏:そうですね。

――御社は新卒採用と中途採用ではどちらが多いんでしょうか。

野村氏:基本的には中途採用という形で人材の確保をさせていただいております。

――多くの日本企業は新卒を採用して若くて何もない頃から育てるのは得意なんだけど、よそからきた人をうまく受け入れて活躍させるというのは苦手だという会社が多いと思うんですが、外から来た人たちをうまく活用していくところの留意点というか、コツのようなものは何かありますでしょうか。

野村氏:そうですね。まずは一定の経験を積まれている方々になりますので、上下関係ということを外して、お互いリスペクトし合うという関係性をベースとしてはあるかと思います。2つ目は、やはりその会社の一員となったわけですので、この会社・チームとしてどこを目指して事業をやっているのかという共感、ここがとても大事になります。ですのでベクトルを合わせながら、ただプロセスは一人一人の多様性を活かしながら、得意な分野を発揮してもらおうと。それをまとめ上げていくとかコーディネートしていく。そういう意味でシェアード・リーダーシップを発揮していくような関わりがよろしいのかなというふうに考えています。

――知識労働者の場合は個人の自律性や専門性が高い、その上でチームワークをやるというのが現在の知識労働者の非常に大きな特徴になっていると思うんですが、その意味では、先ほどおっしゃった共感するとかシェアード・リーダーシップというのはすごく大きな鍵になりそうですね。

野村氏:そうですね。私自身も会社のメンバーともプロジェクトを組んで仕事をするのですが、お客様の人事担当者の方ともコラボレーションして仕事をしていくので、多様性のあるプロジェクトを推進していくということはとても多いんですけれども、だからやはり2つのことが大事で、このプロジェクトでみなさんと何を目指していきたいのかということの目指すべきものを共通に持つということ、その上で一人一人のスペシャリティというのがありますので、それをこういう形で活用していただきたいとかということのコーディネーションをするということがとても多くなっております。

――ありがとうございました。今日はお忙しいところ本当にありがとうございました。

 

【今後の課題】

 

これまで知識労働者に適した人的資源管理を考えてきたわけですが、最後に今後の課題について考えてみたいと思います。

まず何よりも、日本的な人的資源管理があまりうまくマッチしていないということが分かってきたわけです。その限界を認識した上で、知識労働者の自律性を生かすようなマネジメント、これを目指すことが必要だと思われます。その上で2つ大きなポイントがあります。

1つは、徐々に激しくなりつつある国際的な人材の獲得競争に対処することです。特にITやAIの技術者についてなのですが、高度な技術者や新興専門職は多くの国・多くの企業から引く手あまたになっています。たとえば、シリコンバレー周辺のソフトウェア技術者については、求人投稿データに基づく推計では年収水準が非常に高いことが示されています(地域・職種定義に依存するため、数値の読み取りには注意が必要ですが、少なくとも高水準であること自体は確認できます)。その一方で、日本国内でも賃金は年齢階級や産業によって大きく異なり、とりわけ若年層が相対的に低い賃金水準からキャリアを開始しやすいことが、統計上も読み取れます(賃金構造基本統計調査の年齢階級別賃金カーブ等)。こうした環境の中で、日本企業が国際的な獲得競争に対応していくには、知識労働者の市場価値や成果に見合う処遇の設計、早期からの成長機会の提供、そして評価・承認の納得性を高める仕組みづくりが重要になると考えられます。

もう一つは、技術者や新興専門職のなかでも中高年のマネジメントを豊かにしていくということが必要です。これまでの知識労働者のマネジメントは若者中心として考えられていました。これからの高齢化社会では、中高齢者に対するマネジメントの充実が必要だと思われます。

今回は知識労働者についてお話してきました。