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人事考課のプロセスをわかりやすく解説――多段階考課・考課ランク・分布制限の仕組みと特徴 #放送大学講義録(人的資源管理第5回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

人事考課のプロセス――多段階考課と考課ランクの分布制限

では次に、人事考課がどのようなステップを踏んで行われていくか、そのプロセスについて見ていきたいと思います。ここにも日本企業の特徴が色濃く表れます。

日本企業では、複数の考課者が段階的に人事考課を行う方式が広く見られます。まず最初に、一人ひとりの従業員の直属の上司、つまり最も近くで仕事ぶりを見ている人によって一次考課が行われます。

このときの考課は、誰か他人と単純に比べるというよりも、職能資格要件や目標、行動基準などに照らして、その人がどの程度できているかを評価するものです。したがって、一次考課は相対評価というより、基準に照らした絶対評価的な性格が強いと言うことができます。

しかし、日本企業の場合は、その後さらにその上の上司による二次考課が行われることが少なくありません。その理由はいろいろあるのですが、最も大きなものの一つとして、考課者ごとの評価の甘辛を調整し、不公平を避けるということがあります。例えば、同じ部門の中に課が三つあったとします。第一課、第二課、第三課のようなイメージですね。

そのときに、第一課の課長はすごく厳しい人なのだけれど、第二課の課長は甘い人だということが現実的にあり得るわけです。そうなった場合に、不公平があってはいけないということで、その上の上司、例えば部長が、評価の甘さや厳しさの調整も含めて二次考課を行うということになります。ですから、ここでは一次考課よりも、部門間の比較や全体のバランスを見る観点が入りやすいということになるわけです。

会社によっては、さらに第三次考課があったりするわけなのですが、最終的には、人事部門や上位管理職による最終調整、あるいは全社的な調整が行われることがあります。当然、この段階になってくると、全体のバランスを取るという考え方が強くなりますので、相対的な比較や分布調整の発想が入りやすいということになります。こういうように、多段階で行われるわけですね。

その結果として、各従業員には考課の結果が考課ランクというかたちで表されます。これは五段階などのランクが用いられることが多く、例えば、アルファベットのS・A・B・C・Dといった形になります。Sが最も良くてDが最も低いという形ですね。このランクに基づいて昇給額が決まったり、賞与の額が決まったりするということになります。

さて、ここでまた日本企業らしい特徴なのですが、この考課ランクの出現率に一定の分布制限、あるいは分布調整が設けられることが多いです。つまり、Sは何パーセント以内、Aは何パーセント程度まで、あるいは資格等級ごとに平均点が一定になるようにするといった調整が行われるということになります。JILPTの事例でも、A評価の分布を一定割合に決めている企業や、資格等級ごとに平均三点になるよう評価を調整している企業が紹介されています。

そうすると、全員が頑張って、今年は業績も良かったからみんな良い評価になるかなと思っていたとしても、こうした全体バランスの中で制限されてしまうことがあるわけです。その方が毎年の評価分布が一定に維持されますし、昇給額や昇格人数、賞与原資の管理もしやすくなります。企業の側からすると、非常に扱いやすい方法だということが言えようかと思いますが、他方で、従業員の側からすると、納得しにくさや不満につながる可能性もある。そういったことも、この仕組みの特徴になるということが言えます。

 

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