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人的資源管理の基礎から学ぶ賃金制度論――職能給・成果主義・職務給・役割給の変遷と意義をわかりやすく解説 #放送大学講義録(人的資源管理第6回その1)

ーーーー講義録始めーーーー

 

賃金制度の概要と重要性
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テーマは賃金制度です。企業などの組織は、優れた人材を獲得し、企業内に維持するために、公正かつ魅力的な報酬を提供する必要があります。組織が従業員に与える報酬には、金銭的なものだけではなく、金銭以外の報酬も含めて様々なものがありますが、中でも今回取り扱う賃金は、人的資源管理において非常に重要なものだと言えるでしょう。

賃金とは、法的には、名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうとされています。したがって、給料や諸手当だけでなく、就業規則などで支給要件が明確に定められている賞与や退職金なども賃金に含まれ得ます。人的資源管理の観点から言えば、賃金は、組織と従業員との交換関係において、従業員が提供する労働や貢献に対して組織が支払う中心的な経済的報酬であると捉えることができます。

このことからもわかるように、賃金は組織で働く人々の生活を支える基盤となるものです。それ故、その制度や管理が重要であることは、もう言うまでもないということになります。

また、それだけではなくて、賃金の決定や改定には、人事考課の結果が反映されることが少なくありません。しかし実際には、それだけでなく、等級、職務、役割、市場の賃金水準、企業業績など、様々な要因が関わっています。したがって、企業側から見れば、賃金というのは、従業員に対する期待や承認を具体的に示すものであると同時に、人材確保や動機づけの仕組みの一部でもあると言えるでしょう。それ故、それを管理する制度は、従業員にインセンティブを与える仕組みだということも言えます。

日本企業では、1970年代から1980年代にかけては、職務よりも人の能力に着目する職能給が広く普及し、年功的な処遇と結びついて運用されてきました。その後、1990年代以降、成果主義の導入や年功賃金の見直しが進む中で、職務給や役割給といった、仕事内容や役割の重要性をより重視する制度にも注目が集まるようになってきました。ただし、こうした制度の導入の仕方や位置づけは企業によって様々であり、日本企業の賃金制度が一律に同じ方向へ転換したとまでは言えません。

今回の授業では、こうした賃金制度の考え方や変遷、その意義を中心に議論していきたいと思います。