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職能給の仕組みと昇給管理の実態 #放送大学講義録(人的資源管理第6回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

職能給の仕組みと昇給管理
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ここから職能給について詳しく見ていきたいと思います。職能給とは、先ほど言いましたように、職務ではなく、仕事内容そのものではなくて、個人の職務遂行能力を評価して、それで賃金を決めようというものです。実際の運用ではですね、例えば、新卒一括採用で入社した社員は、同じ学歴や同じ職群であれば、入社時に同程度の等級に格付けられることが多く、仕事に直結して格付けられるわけではありません。そして、毎年の評価や経験の蓄積、さらに昇格の有無などを通じて、長年かけて少しずつ差がついていくような制度というふうに言えるでしょう。

職能等級に基づいて職能給が決まるわけなのですが、何よりも、仕事や配置が変わっても、それに応じて直ちに賃金を大きく変えずに運用しやすいというのが日本企業にとっては便利でした。そのため、能力主義の賃金管理を追求するということと、柔軟な組織運営を維持するということ、これらを両立しやすいというところが日本企業にとっては非常に良かったわけですね。だからこそ普及したということが言えるでしょう。

ただ、長年かけて少しずつ差を積み重ねていくような制度というのは、多分に年功的になりやすいです。ですから、能力主義を追求したと言いながら年功的な特性が残った、いわゆる修正年功的な制度だというふうに批判する人もいますけれども、そういった特徴のある賃金制度であったということも言えるでしょう。

では、この職能給というのはどのように昇給をしていたのか、昇給管理の方法を簡単にご説明していきたいと思います。

【表6-3・表6-4 職能資格制度における昇給管理のイメージ】

職能資格制度における昇給は、典型的には大きく2種類に整理することができます。

◆ 1. 習熟昇給(毎年の定期昇給)
・毎年1回、定期的に行われることが多い
・職務遂行能力の習熟や伸長を理由とした昇給
・人事考課の結果(5段階・7段階など)が反映されることが多い
・評価の高い人は昇給幅が大きく、低い人は小さい、あるいは昇給が抑制される場合もある
・ただし、その差は昇格時の差に比べると比較的小さいことが多い

◆ 2. 昇格昇給(数年に1度)
・職能資格等級が上がる、すなわち昇格する際に行われる
・昇格すると毎年の昇給幅、すなわち昇給額の基準も大きくなりやすい
・本人にとってのメリットも大きい

─── 昇給額のイメージ(習熟昇給)───────────────────
人事考課ランク : S A B C D
昇給号数(例) : 5号 4号 3号 2号 1号
(※ これは伝統的な職能給の典型的イメージであり、実際の運用は企業により異なる)
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日本企業では、毎年1回、春先頃に昇給が行われることが多かったわけですね。職能給もこの時期に毎年昇給が行われることが多く、これが能力が向上したことを理由とする昇給ということで、習熟昇給というふうに呼ばれてきました。この習熟昇給を決める時に、毎年行われている人事考課の結果が反映されるわけです。もっとも、定期昇給の範囲に昇格昇給まで含めるかどうかは企業によって異なることには注意が必要です。

前回勉強したように、人事考課の結果は5段階とか7段階のランクに分かれるわけなのですが、そのランクによって昇給の差があるわけなんですね。いい評価の人はランクが高くて、賃金の上がり幅が大きいということになるわけです。ただ、この差というのは、昇格した時の差に比べるとあまり大きくないことが多い。ですから、1年ごとの差は本当にわずかで、長く積み重なって初めて一定の差になってくる、そういう特徴があるんです。なお、企業によっては、低い評価の場合に昇給がない、あるいはマイナス調整がなされることもあります。

もう1つ昇給があります。それは、昇格した時に行われる昇給ということで、数年に1度、職能資格等級が上がるわけなのですが、その時に昇格昇給が行われるということになります。昇格すると、毎年の昇給幅・昇給額も大きくなりやすいので、本人にとってのメリットも大きくなるわけです。

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では、なぜ職能給は年功的になってしまうのかを確認しておきましょう。3点あります。

◆ 年功的になる理由1:習熟昇給の差が比較的小さいこと

毎年、定期的に昇給が行われて皆さんの賃金が上がるわけなのですが、その時に、評価の低い人でも昇給が小幅にとどまるだけで済む場合が多く、高い評価を得た人との差がそれほど大きくないことがあります。もちろん、企業によっては昇給なしやマイナス調整もありますが、伝統的な職能給では、毎年の評価差による賃金差は昇格差に比べると小さいことが多かった。ですから、1年ごとの差は本当にわずかなんです。それを長年にわたって蓄積していって、10年、15年経った後にいくらかの差がついてくるのがこの制度の特徴になります。これは年功的になりやすいんだなというのは、よく分かることではないかと思います。

◆ 年功的になる理由2:昇格しなくても一定期間昇給可能なこと

職能資格制度では、昇格すると昇給幅も大きくなって個人に対するメリットも大きくなるのですが、あまり評価が高くなくてなかなか昇格できないという人も、同じ等級の中で一定期間昇給することが可能な場合が多かったんですね。つまり、各等級の賃金テーブルには一定のレンジ幅が設けられていることが多く、そこでとどまりながら昇給できるということになるわけです。だから、あまり評価が高くない人でも、同じ等級内でかなり賃金が上がっていくことがあり得たということになります。

◆ 年功的になる理由3:昇格自体が年功的に行われる傾向があったこと

昇格というのは、ある一定の評価結果が蓄積されて、「彼はもう上の等級に行ってもいいだろう」というふうに判断されたら昇格ということになるわけなのですが、多くの企業では、目安となる昇格の標準年数や在級年数の考え方が設けられていて、例えば5年で上がる、6年で上がるといったような、標準的な年数から大きく離れないような管理がなされる傾向があったわけです。ですから当然、年功的になってしまうというのは明らかだということになります。

こういったような管理が行われていると、若い上位等級者、例えば人よりも早く5等級に上がりました、優秀ですという人よりも、ベテランの下位等級者、30過ぎ、40過ぎても4等級にいますよという人の方が賃金が高い、といったようなことが起こり得るわけなんですね。そういったことがあるので、職能給は能力主義だと言いながら、実は多分に年功的だというような批判がなされることになるわけです。