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人的資源管理における職能給の意義と問題点――長期勤続・多能工育成・熟練形成と年功化・若手処遇の課題を解説 #放送大学講義録(人的資源管理第6回その5)

ーーーー講義録始めーーーー

 

職能給の意義と問題点
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職能給の最後に、その意義と問題点をまとめておきたいと思います。

【職能給の意義】3点

◆ 意義1:従業員に長期勤続のインセンティブを与えたこと

長く勤めることによって昇給する可能性が高い、というのが職能給の大きな特徴でした。もちろん、形式的には能力評価に基づいて昇給するわけですが、長期雇用を前提に能力をじっくり評価し、育成していく仕組みであったため、結果として、長期間勤めながら頑張り続けることに対するインセンティブがかなり強く働いたわけです。そうした長期勤続への動機づけを与えたということは、日本企業にとっては大きな意義であったと思われます。

◆ 意義2:多能工的な人材の育成を進めやすかったこと

仕事を変わりながら熟練することによって昇給することができる、すなわち配置転換を受け入れながら能力を高め、処遇も上げていくことができるという仕組みですから、自分の今の仕事の評価が下がるのを恐れて配置転換を強く拒否するという人は少なくなりやすいわけです。そうすると、いろんな部署を経験して、いろんなことができるような人たちが増えてくることになりますから、多能工的な人材の育成は進めやすかったということが言えるでしょう。

◆ 意義3:現場や実務を担う熟練人材の育成を促したこと

日本の企業、とくに製造業では、現場で熟練を積み重ね、改善や応用的な対応ができる人材が重視されてきました。これは、多能工的な能力形成や長期勤続へのインセンティブが強いことと大いに関係しているわけです。そういった現場を支える熟練人材、あるいは実務担当者の育成を促した面があったということは、職能給の大きな意義だと言えるでしょう。

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【職能給の問題点】3点

◆ 問題点1:依然として年功的であること

先ほどから申し上げているように、職能給には非常に年功的な要素が残っています。そのことは、中高年層が厚くなってくると、人件費負担が重くなりやすいということにも繋がります。高齢化や社員構成の高年齢化が進んでくると、中高年の社員が増えてきますから、人件費負担が重くなりやすいというのは企業にとっても大きなデメリットになります。

◆ 問題点2:昇格に対するインセンティブが弱くなりやすいこと

昇格しなくても同じ等級の中である程度賃金が上がっていく仕組みがありますので、頑張って昇格しなければならない、と従業員に強く思わせる力が弱くなりやすいんです。もちろん、企業によっては昇格時の加給を大きくしている場合もありますけれども、制度の設計次第では、昇格を目指す動機づけが相対的に弱くなるという面はあり得るのではないかと思います。

◆ 問題点3:若くて優秀な人を高く処遇しにくいこと

非常に若くて優秀な人がいて、企業からするとできるだけ早く処遇してあげたいと思ったとしても、職能資格制度が標準的な在級年数や長期的な能力育成を前提にしている場合には、制度上、時間をかけないと高い賃金を与えにくいということが起こり得ます。今のような不確実な時代には、若くて優秀な人の処遇というのは非常に大事になりますし、転職が増えてくると、こういった人が他社に引き抜かれてしまうということも考えられます。こういったことは、新しい時代においては非常に大きなデメリット・問題点として認識されるということが言えるでしょう。