F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

IoT・MQTT・ネットワーク社会を学ぶ 経営情報学講義:社会技術複合体の大変動と人と技術の融合 #放送大学講義録(経営情報学入門第14回その1)

ーーーー講義録始めーーーー

 

社会技術複合体の大変動とIoTの登場
════════════════════════════════════════

本日は「人と技術の融合」ということで、未来の新しい現実を構想するというお話をしたいと思います。今回は次の四半世紀で何が生じうるのか、次の半世紀で何が生じるのか、次の250年で何が生じるのかを考えたいと思います。

インターネット革命で生じたグローバルの大変動は、機能的な資源の配分だけではなくて、私たちの世界の意味的な相互作用も、その根底から変化させました。その変化はまだ途上です。我々の社会は激しい変化にさらされています。この我々の社会そのものの、社会技術・産業経済・文化複合体としての変化をいかに読み解いていくかが課題となります。

今日の巨大な社会技術複合体としてのネットワーク社会が、我々の生活や働き方、あるいは産業構造にどのような影響をもたらすかについて、前回の議論を受け、さらに進んだ理解を試みます。この四半世紀、インターネットを活用したビジネス領域では、巨大なプラットフォーム企業の出現など、企業と消費者の関係が大きく変化しました。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)や人工知能などの技術はさらに大きな変化を我々の社会にもたらし、多様な財やサービスの生成プロセスの再編成や、疎に結合したビジネス生態系の形成を促す可能性があります。本日はそのお話をしたいと思います。

■ IoTとはどのようなものか

IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とは、インターネットに接続された多様な機器や装置が、センシング、通信、場合によっては制御や作動を行いながら、データをやり取りする仕組みのことです。IoT機器には、センサー、コントローラー、家庭用機器、産業用機器などが含まれます。したがって、IoTを単に「工業製品」や「専用のCPUを内蔵したもの」だけに限定して理解するのは正確ではありません。重要なのは、機器がネットワークにつながり、物理世界と情報世界を結びつける点にあります。

冷蔵庫、テレビ、洗濯機、電子レンジ、炊飯器などの家庭用機器に加え、産業用センサー、車両、医療機器、ウェアラブル機器なども、IoTの対象となりえます。こうした機器に組み込まれるのはCPUに限らず、センサー、アクチュエータ、通信インタフェースなど複数の要素です。これらがインターネットや各種ネットワークを介して接続されることで、データの収集、伝送、分析、制御が可能になります。

ただし、今日の議論では、つながるのはモノだけではありません。IoTを広く捉える議論では、人、場所、データ、ソフトウェアをも含めた接続の広がりが問題になります。Ciscoも、IoTを拡張した概念として、人・場所・モノ・データを結びつける「Internet of Everything(IoE)」を提示しています。したがって、ネットワーク化の進展を考える際には、モノ中心のIoTと、それをさらに拡張した接続概念とを区別しつつ理解する必要があります。

■ Cisco(シスコ)による普及予測

インターネット・オブ・シングス(IoT)の進展については様々な予測があります。ここではCiscoによって広く示された見通しに従って見ていきましょう。Cisco IBSG の資料では、2015年に250億、2020年に500億のデバイスないし接続がインターネットにつながると予測されました。したがって、「2025年に向けて、10億の場所、50億の人、500億のものがつながる」という表現は、Ciscoの代表的な予測値としては時点の置き方が正確ではありません。教育上は、Ciscoが2010年代前半に、2020年時点で約500億の接続を見込んでいた、という形で説明するのがより適切です。

IoTは、機器やセンサーが相互に接続され、データをやり取りすることで、産業や市場のあり方に大きな影響を与えると考えられてきました。その意義は、単に個人データが収集されるという点だけではありません。生産、物流、保守、サービス提供、需要予測、遠隔監視など、多くの業務プロセスがデータ駆動型に再構成される可能性にあります。

■ 基盤技術としてのMQTTとパブリッシュ/サブスクライブ

IoTの前提となる基盤技術として、MQTTと publish/subscribe の仕組みを簡単にご紹介しましょう。MQTTは、OASISによれば、クライアント・サーバ型の publish/subscribe メッセージング転送プロトコルです。軽量で実装しやすく、小さなコードサイズや限られた帯域幅の環境にも適しているため、M2MやIoTの文脈で広く用いられています。したがって、MQTTそのものが publish/subscribe 型のプロトコルである、と整理しておく必要があります。

MQTTブローカーは、そのプロトコルにもとづいてメッセージを受け取り、必要な購読者に配送する役割を担うサーバ側の仕組みです。これによって、人、ソフトウェア、センサー、機械などのノードは、相手先を個別に強く意識しなくても、トピックにもとづいて疎結合に情報交換を行うことができます。この意味で、IoTの重要な技術的特徴の一つは、接続先同士を固定的に結びつけるのではなく、ブローカーを介して柔軟に組み替え可能な通信構造を実現できる点にあります。

こうした技術がどのような仕組みの変化を社会にもたらす可能性があるのかというビジョンの提示が、大きな社会技術複合体の変動期には必要です。IoTは、単に「モノがつながる」というだけでなく、物理世界の状態を継続的にデータ化し、それを分析・制御・自動化へと接続することで、産業・生活・社会制度の再編成に関わる技術基盤として理解することが重要です。

 

IoTとIoEの関係図(PNG)

 

MQTTの publish/subscribe 構造図(PNG)

 

センサー→通信→分析→制御 の4段階フロー図(PNG)