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IoT時代の原価設計を学ぶ経営情報学講義:タスク単位の実物データと3層マネジメント構造 #放送大学講義録(経営情報学入門第14回その6)

ーーーー講義録始めーーーー

 

 

タスク単位の実物簿記による原価設計
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■ 企業単位から製品・サービス単位の経営・会計へ

IoTベースのマネジメントの構想の背景と狙いをお示しします。まず企業単位の経営や企業単位の会計だけでなく、製品・サービス単位の経営や製品・サービス単位の会計を、より精緻に行えるようにすることが必要になります。これは非常に大きな

変化です。もしそれが可能になるならば、超多様な財やサービスを生み出す産業構造というものが実現できるようになるかもしれません。

現在の会計システムというものは、企業あるいは工場単位の管理だけをしている、というわけではありません。既存の管理会計にも、製品、サービス、活動、プロジェクトといった単位で原価対象を把握する考え方は存在します。ただし、それをIoTによってより細かく、実物データに即して、リアルタイムに近い形で把握しやすくすることには大きな意味があります。次に、製品・サービスを疎結合のタスクからなる付加価値生成のプロジェクトとして把握すること自身が課題になります。IoTベースでそれをマネジメントすることで、タスク単位で異なる組織や個人が参画して、全体のプロジェクトを組み上げる――そういう分散組織としてのプロジェクトの計画と実施、そしてマネジメントに関する経営、あるいはそれに対応する会計も可能になる必要があります。

ダウンサイジングされたマネジメントの単位となるのは、タスクとプロジェクトです。企業単位のマネジメントから、製品・サービスを形成するマイクロプロジェクト単位のマネジメントへの――マネジメント概念の転換というものが可能になるでしょうし、それが求められます。ここでいう「マイクロプロジェクト」は、一般標準用語というより、講義上の説明概念として理解するのが適切です。

■ 銅の切削加工タスクを例とした実物簿記

次にタスク単位の実物簿記による原価設計を見てみましょう。ここでは先ほど例にとった銅の切削加工のタスクを取り上げます。このタスクでの生産に関する投入・産出関係は実物単位で計測されます。それを多次元的に記述するわけですが、ここでは通常の簿記のテーブルの形で書いてあります。なお、「実物簿記」という表現は講義上の整理概念としては有効ですが、国際標準で近い考え方としては、物質フローを physical units で追跡し、それに対応するコストを評価する ISO 14051 の material flow cost accounting(MFCA)が知られています。

図6:銅の切削加工タスクの実物簿記(計画値)PNG

この銅の切削加工工程では、まず原料として銅材8キログラムが投入されます。そしてそれの加工に必要な切削加工サービス――これを物的資本サービスと言いますが――これが1時間。そしてそれに必要な人的資本サービス(オペレーター)が0.2時間――ここに投入されます。結果として、銅の切削加工の仕掛品が1個と、副産物としての銅屑が2キログラム生成されます。この投入・産出関係というものが、ここでの銅の切削加工の原価管理をするのに必要な情報になります。

さらにこの物的資本サービスと人的資本サービスというものはさらに分解されます。物的資本サービスというのは、その切削加工に必要な切削加工装置のコスト――すなわち減価償却費やエネルギー消費など――が投入になって、このサービスがここで提供されるという形になります。人的資本サービスの場合には、切削オペレーターの作業時間が0.2時間分入力されて、サービスが出力されるという形になります。それぞれをテーブルの形で書くことができます。

そして、この情報そのものは、そもそも生産計画の根拠にあるもので、製造計画をするのに必要な情報ということになります。これらはお金の出ないものの単位であるならば、IoTで計測することは可能です。したがって、IoTで計測することによって、より精緻な計画及び計画のシミュレーションということも可能になります。ただし、原価そのものをIoTが直接計測するというより、質量、時間、稼働、エネルギー使用量などを計測し、それを金額評価へ結びつけると理解するのが適切です。

■ 原価計算の具体例

すなわち、ここでは銅材8kg・切削加工サービス(物的資本サービス)1時間・人的資本サービス0.2時間から、銅屑2kgと切削加工仕掛品1個が出たと考えましたが、この時に例えば以下のような単価を仮定します(以下はあくまで計算例です)。

 


図7:銅の切削加工タスクの原価計算例(修正版)PNG


ここでは物的表示がベースで、金額表示は副次的に求められます。したがって、銅材のコストや電力などいろんな条件が変わった時に、仕掛品のコストがいくらになるかというのが、これ自身が実はシミュレーションの単位になっています。資源エネルギー庁の資料では、日本の産業用電気料金は2024年比較で 30.2円/kWh と示されています。

■ 3層のマネジメント構造

この物やサービスの価値形成に関して、タスク単位・プロジェクト単位・プロジェクト集合単位の3層のマネジメントが必要になります。

【図8:3層のIoTベースマネジメント構造】
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│ 第3層:プロジェクト集合単位のマネジメント │
│ (複数プロジェクトへの資源配分・スケジューリング) │
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│ 第2層:プロジェクト単位のマネジメント │
│ (原価計画・実績差異分析・プロジェクト間調整) │
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│ 第1層:タスク単位のマネジメント │
│ (実行管理・状態遷移・IoTによるデータ取得) │
└────────────────────────────────────┘

今まで我々はプロジェクトを中心に見てきましたが、実行管理ではタスクの中を細かく分けて、それをIoTで情報を取ることが必要になります。スケジュールに関しては、複数のプロジェクトに資源を割り当てるという意味でのプロジェクトのスケジュール管理が必要になります。この3層の管理がIoTで高度化することで、新しいマネジメントが可能になるというふうに考えられます。ただし、この3層構造は ISA-95 の標準そのものをそのまま写したものではなく、製造管理と経営管理の接続を考えるための講義上の整理として理解するのが適切です。 ISA-95 は enterprise-control system integration のための標準であり、企業システムと製造制御システムの活動・情報交換を整理します。