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ロングテール型サービスとIoT時代の産業構造を学ぶ経営情報学講義:標準化システムを越える新市場のビジョン #放送大学講義録(経営情報学入門第14回その7)

ーーーー講義録始めーーーー

 

ロングテール型サービスプロジェクトと新たな社会技術複合体へのビジョン
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■ 巨大フランチャイズ型システムの問題点

人の能力をビジネスの末端で十分に生かしにくい設計の、巨大で標準化の強いフランチャイズ型システムや中央集権的サービスシステムが、第一次のインターネット革命以降の社会で大きな存在感を持つようになりました。これはセンターに情報を集めて、ビジ

 

ネスモデルの最適化を行う、そういうビジネスモデルの一つの典型です。周縁のコンポーネントは取り替え可能なものとして扱われやすく、そこで働く従業員や現場の裁量は狭くなりやすい。こうした仕組みの下では、能力開発の機会が限定される場合があり、それが問題になるわけです。ただし、これはすべてのフランチャイズに一様に当てはまるというより、標準化を強く押し出したビジネスモデルで特に生じやすい傾向として理解するのが適切です。

このコンポーネントの中心と周縁への分割は、アダム・スミスやチャールズ・バベッジの言う分業と、そのまま同一視することはできません。工場は現場からの改善を受け入れるし、技術者・労働者の能力向上や独立・スピンアウトが可能な場合があります。ところが、コンビニやバーガーチェーンのような店頭では、本部主導の標準化が強く、現場改善の余地や裁量が比較的小さくなりやすい。また、従業員の独立や暖簾分けも、製造業の技能蓄積型の現場に比べれば一般的とは言いにくい。付加価値コンポーネントを入れ替え可能な形で構築するビジネスモデルが拡大している、ということは言えるでしょう。

■ 社会技術複合体へのリアリティシフトとデザイン論の必要性

新たな社会技術複合体へのリアリティシフトを考えたい。そのために、そこで生じる問題に対しては、技術単独でもマネジメントでも制度だけでも課題解決はできません。人工物としての社会技術複合体の手綱を握るためのデザイン論が求められています。そのためには、実現されるべき世界に関するビジョンの構築と共有を行う必要があります。この部分は、事実の叙述というより、講義全体の規範的な問題提起として理解するのが適切です。

■ 多様性と組み替えコストのジレンマ

そこで多様性と組み替えコストのジレンマについて見てみましょう。多様性のあるビジネス、あるいはビジネスの迅速な組み替えをシステム化しようとすると、従来の技術ではコストが大きくかかります。コストを小さくしようとすると、多様性があり迅速な組み替え可能なシステムの構築は難しくなります。多様で迅速な組み替えをしようとするビジネスワークフローを、低コストで現場主導で構築でき、それが迅速に組み替えでき、オープンな連携の下で進化できる――新しいマネジメントの仕組みが求められているわけです。ここでいうジレンマは、厳密な理論命題というより、システム設計上の実践的課題の整理として理解すると分かりやすいでしょう。

■ ロングテール型サービスプロジェクトという新市場

スケーラブルに多様で進化するデジタル基盤やIoTベースのワークフロー管理のためのプラットフォームは、ロングテールのワークフロービジネスを従来より成立しやすくします。ロングテールとは、少数の大ヒットだけではなく、多数のニッチ需要の総体が大きな価値を持ちうるという考え方です。したがって、ここで言いたいのは、オープンな連携による多様で頻繁な組み替えがあるプロジェクト型ワークフローを対象としたロングテール型ビジネスを、デジタル基盤がより支えやすくなる、ということです。IoTプラットフォームやクラウドネイティブな連携基盤をオープンに提供することが、その条件の一つになるでしょう。

個別的で多様なタスクを組み替えながら進化できるようなサービスを、ここではロングテール型のサービスプロジェクトと呼びます。このロングテール型のサービスプロジェクトは、今後大きな市場を形成する可能性があり、新しい働き方を可能とする新たな産業構造を創出する可能性があります。従来、コスト的にも管理的にも難しかった、企業の壁を超えた分散組織のサービス提供も、IoTベースのマネジメントやクラウドネイティブな連携によって、以前より実現しやすくなるかもしれません。ただし、これは将来ビジョンであって、すでに一般的現実となったと断定する段階ではありません。

■ ウィナー・テイク・オール社会からの脱却へ

第一次のインターネット革命で、マスメディア等の巨大なコミュニケーションサービスへの対抗軸が生まれました。第二次のインターネット革命としてのIoT革命――この表現は比喩的な言い方ですが――では、マイクロサービス・オーケストレーションによって、低いコストで様々なサービスを組み合わせて構築しやすくなることは予想されます。ここでいうマイクロサービス・オーケストレーションとは、小さく独立したサービスの実行順序や連携を制御する仕組みを指します。したがって、それ自体は社会構造を自動的に変えるものではありませんが、多様なサービスを柔軟に構成しやすくする技術的基盤にはなります。

巨大で一様なサービスでロックインされたウィナー・テイク・オール社会から、我々の社会は直ちに脱却するとまでは言えません。むしろ、デジタル市場ではネットワーク効果、規模の経済、データ集積によって、集中や市場の tipping が生じやすいことが OECD でも指摘されています。他方で、ネットワーク効果があるからといって常に単一勝者に収斂するわけでもなく、多様な対抗的サービスや複数基盤が成立する余地もあります。したがって、ここでは「winner-take-all 的傾向に対抗する可能性が、IoTや分散型サービス設計によって広がりうる」と理解するのが最も正確です。

 

① 巨大標準化システム と ロングテール型サービスプロジェクト の対比図(PNG)

 

② ロングテール市場 と winner-take-all 的集中傾向 の併存図(PNG)

 

③ マイクロサービス・オーケストレーションによるサービス構成図(修正版PNG)