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システム思考とは何か――経営情報学の基本枠組みを「境界・創発・階層性」からわかりやすく解説 #放送大学講義録(経営情報学入門第1回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

システム思考――経営情報学の基本的枠組み
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経営情報学では、基本的枠組みとして、「システム思考」、すなわちシステム的なものの見方を採用しています。その理由は、先ほども述べましたように、経営情報学が対象としている領域が非常に広範で、複雑で、しかも変化の激しい現象を含んでいるからです。そのため、個別の事象をばらばらに並べて理解するのではなく、それらを関係の全体として体系的に捉えるものの見方が求められるのです。システム論では、世界を部分の寄せ集めとしてではなく、相互に関係づけられた全体として理解することが重視されます。

■ システム志向とは何か

システム志向とは、複数の要素から成る全体を、特にその相互関係に注目して考察する研究態度を指します。より基本的に言えば、対象を、それを構成する諸要素が互いに関係し合いながら全体性・一体性をもつ存在、すなわちシステムとして認識する態度を意味します。ここで重要なのは、単に要素を列挙することではなく、それらの要素がどのような関係を取り結び、どのような全体を形成しているかに注目することです。システム論では、システムは「要素の集合」である以上に、「要素間の関係のまとまり」として理解されます。

そこでは、システムを構成する各要素の単なる機能分析や、その総計としての全体の把握にとどまらず、要素間の相互作用に着目し、関係全体を説明する全体論的思考が求められます。つまり、要素の相互作用こそが、システムとしての性質を生み出していると言えるのです。全体の特性は、しばしば部分の分析だけでは十分に説明できず、関係の網の目そのものを見なければ理解できません。

■ システム思考の4つの重要な特徴

システム思考の重要な特徴として、(1)認識の枠組み、(2)境界設定と観察者依存性、(3)全体性と創発特性、(4)複雑性と階層性を挙げることができます。

 

システム思考の4つの特徴(概念図)PNG

(1)認識の枠組み
ここで言いたいのは、対象が最初から固定的にシステムであるというよりも、対象をシステムとして捉えるという認識の枠組みがあるということです。したがって、自然現象であれ、組織であれ、情報ネットワークであれ、さまざまな対象をシステムとして把握することが可能になります。つまり、システム思考は、対象そのものの性質を述べるだけでなく、対象をどのように理解するかという見方の問題でもあるのです。

(2)境界設定と観察者依存性
何をシステムとして捉えるのか、どこまでをシステムの内部とし、どこからを環境とみなすのかという境界設定は、自動的に決まるわけではありません。分析目的や観察者の立場によって、同じ対象であっても異なる境界の引き方が可能です。たとえば、企業を一つのシステムとみることもできますし、企業と顧客、取引先、制度環境まで含めたより大きなシステムとして捉えることもできます。この意味で、システムの境界は観察者の認識や問題設定に依存しています。

(3)全体性と創発特性
システムは、要素の相互関係から成る全体として認識されますが、同時に、その全体は構成要素の特徴に単純には還元できない性質を持ちます。これが創発特性です。システム論では、関係の網の目が統合されることによって、個々の部分を個別に見ているだけでは現れない全体の特性が生まれると考えます。経営におけるシナジー効果は、その具体例の一つです。ただし、創発特性はシナジーだけに限られるものではなく、調整能力、組織文化、適応能力なども広い意味では創発的に現れる性質として理解できます。

(4)複雑性と階層性
システム思考は、複雑な対象を理解するための枠組みでもあります。複雑なシステムは、しばしば複数のサブシステムから構成され、それらがさらに下位のサブシステムを含むというように、階層的ないし入れ子状の構造を取ります。したがって、システムを理解する際には、全体だけを見るのでも、部分だけを見るのでもなく、複数の階層水準を往復しながら考える必要があります。ただし、複雑性は常に単純な上下関係だけで表せるわけではなく、ネットワーク的な連関として現れることもあります。その意味で、階層性は複雑性の重要な現れ方の一つと理解するのが適切です。

特に、考察の対象を組織という生存可能システムとして捉える場合には、階層性を維持するために、単なる命令系統だけではなく、サブシステム間のコミュニケーション、調整、統制、環境への適応、そして全体の方針形成が欠かせません。生存可能システム論では、組織の存立には、現場の運営、相互調整、管理、外部環境への適応、全体方針の維持といった複数の機能が相互に結びついていることが重視されます。したがって、経営情報学においてシステム思考を採用することは、組織を単なる部署の寄せ集めとしてではなく、相互に連関する多層的な情報処理システムとして理解することにつながるのです。

【キーワード】
システム思考、システム志向、認識の枠組み、境界設定、観察者依存性、全体性、創発特性、シナジー効果、複雑性、階層性、サブシステム、入れ子構造、生存可能システム