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経営情報学で学ぶ組織の意思決定モデル比較―マネジメント・サイエンス、カーネギーモデル、ゴミ箱モデルを整理して解説 #放送大学講義録(経営情報学入門第2回その5)

ーーーー講義録始めーーーー

 

組織における意思決定の3つのモデル――マネジメント・サイエンス、カーネギーモデル、ゴミ箱モデル

ここでは、組織における意思決定について、いくつかのモデルを学習します。組織における意思決定は1人で行われるものではなく、通常複数の人間が関与しています。以下では、組織における意思決定をどのような前提で捉えるかによって、マネジメント・サイエンス、カーネギーモデル、ゴミ箱モデルという代表的な3つのモデルを紹介します。なお、これらは単純に合理性の高低だけで機械的に並べるよりも、問題の構造化のしやすさ、目標の明確さ、参加者間の関係、意思決定過程の安定性の違いとして理解する方が適切です。

組織における意思決定モデルの比較.png

■ マネジメント・サイエンス

まず、マネジメント・サイエンス(Management Science)について見てみます。これは、組織が解決すべき問題が比較的明確で、変数を特定し測定することが可能なときに有効な意思決定の手法全般を意味します。特に、問題を構造化し、モデル化し、分析できる場合に強みを発揮します。

例えば、オペレーションズ・リサーチ(OR)は、経営活動における意思決定を科学的・定量的に分析する手法です。OR は、数学的方法を用いて合理的計画や最適解を導く学問として説明されます。身近な例として、電車の乗り換えシステムを見てみましょう。これによって、目的地までの最短時間、乗り換え回数、最も安い金額で目的地に到着する方法などを示すことができます。

マネジメント・サイエンスは、構造的・定型的な問題に適しており、最適基準による意思決定を志向するものです。この手法を用いれば、在庫管理や発注量の決定なども効率的に行うことができます。マネジメント・サイエンスは、個々の人間の処理能力を超える多数の変数を正確かつ迅速に処理することを可能にします。ICT の進展により、このモデルの活用可能性への期待はさらに高まっています。

■ カーネギーモデル

次に、カーネギーモデル(Carnegie Model)について見てみましょう。このモデルは、組織における意思決定には多くの管理者が関与していることに着目して、最終決定は管理者の連合(coalition)、すなわち組織の目標や問題への優先順位について一定の合意を形成した管理者たちによって行われる場合が多いと考えます。カーネギー学派では、組織内部の葛藤は例外ではなく常態であり、その中でどうやって集団的意思決定が可能になるかが重要な論点です。

カーネギーモデルでは、組織の目標は必ずしも一義的ではなく、個々の管理者も限定された合理性しか持ち得ないため、組織における意思決定は満足基準、すなわち満足化によって行われやすいと考えます。加えて、意思決定はしばしば標準作業手続や意思決定ルールにも支えられます。したがって、ここで重要なのは、単に探索段階や選択段階だけではなく、問題の定義、交渉、ルール化、合意形成を含む組織的過程全体です。

カーネギーモデルでは、議論と交渉が重要な役割を果たしています。個人の目標、意見、価値観、経験はそれぞれ異なっていますが、討議や交渉を通じて一定の合意を形成し、組織として行動可能な決定へとまとめていくからです。この意味で、カーネギーモデルは、完全合理的な最適化モデルではなく、葛藤の準解決と合意形成を重視するモデルとして理解するのが適切です。

■ ゴミ箱モデル

最後に紹介するモデルはゴミ箱モデル(Garbage Can Model)です。このモデルは、組織の意思決定において、合理的意思決定の前提が十分に成り立たない側面に着目します。ゴミ箱モデルでは、組織の実態を「組織化された無秩序(organized anarchy)」と呼び、問題を抱えた選好、よくわからない技術、流動的な参加という特徴を持つと捉えます。

こうした状況下では、意思決定は単純に問題解決のためだけに進むのではなく、選択機会の場に、さまざまな問題、解、参加者が流れ込み、偶発的に結びつくものとして捉えられます。ゴミ箱モデルは、4つの要素の流れに注目します。それは、
①意思決定が行われる場としての選択機会の流れ
②決定に直接的に関与する参加者の流れ
③選択機会において考慮されることが期待される問題の流れ
④何らかの考え方やアイデアであるの流れ
です。

ゴミ箱モデル_Cohen_March_Olsen_1972.png

図に示されているように、ゴミ箱モデルでは、参加者・問題・解はゴミに、選択機会はゴミが投げ込まれるゴミ箱に例えられます。つまり、組織の意思決定は、問題・解・参加者のそれぞれが選択機会という場で偶発的にマッチングするものとして捉えられているのです。原論文でも、選択はしばしば、問題がうまく解かれるから生じるというより、問題・解・意思決定者の組み合わせがたまたま行為可能な状態を作ることで生じると説明されています。

このように、ゴミ箱モデルでは、論理的・必然的な秩序よりも、偶発的・一時的な秩序に着目します。ただし、これは単に「無秩序だから何もわからない」ということではなく、合理的モデルの前提が崩れた状況でも、意思決定がどのように生じうるかを説明しようとする試みなのです。

【キーワード】
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