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経営情報学で学ぶ組織の情報処理モデルとコンティンジェンシー理論―ガルブレイスの不確実性・情報処理能力・組織設計を解説 #放送大学講義録(経営情報学入門第2回その6)

ーーーー講義録始めーーーー

 

組織の情報処理モデルとコンティンジェンシー理論――ガルブレイスの理論とその背景

さて次に、そもそも組織はなぜ情報を処理しなければならないのか、その根拠について考えてみましょう。組織がなぜ情報を処理しなければならないのかという根本的な問いに対し、その理由を明確に提示した代表的理論の1つとして、ガルブレイス(Jay R. Galbraith)が提示した組織の情報処理モデルが挙げられます。ガルブレイスは、課業不確実性が高まるほど意思決定者に必要な情報処理量が増えることを出発点に、組織デザインの問題を説明しました。

■ コンティンジェンシー理論の背景

まず、この理論の背景となったコンティンジェンシー理論(Contingency Theory)について見てみましょう。コンティンジェンシー理論は、1960年代を中心に発展した組織研究の重要な潮流であり、組織が環境と相互作用するオープンシステムであるという組織観を持っています。そこでは、どの組織にも普遍的に最善な唯一の構造があるのではなく、環境や技術などの状況要因との適合によって、有効な組織のあり方が変わると考えます。

それまでの組織論では、環境というものが十分には意識されないまま、どのような組織が最も優れた組織かについて探求される傾向がありました。このような組織観は、環境に対して比較的閉じた、すなわちクローズドシステム的な組織観であったということができます。これに対して、コンティンジェンシー理論は、組織を外部環境との関係のなかで捉える点で、オープンシステム的な転換を示したものだと言えます。

1960年代になると、企業組織を取り巻く環境の変化は激しくなり、環境を無視して企業の存続を考えることが難しくなりました。つまり、理論的要請だけでなく、実践的要請からも、クローズドシステムという組織観からオープンシステムという組織観へと移行していったということができます。コンティンジェンシー理論は、環境の変化に応じて組織特性を変えることで、組織が有効性、すなわち組織目的の実現の程度を高めることができるという基本的な枠組みを持っています。

■ コンティンジェンシー理論の特徴と限界

しかし、コンティンジェンシー理論も、初期の研究では、タスク環境などの特定のコンティンジェンシー要因、すなわち状況要因のもとで、主としてどのような組織構造を持つことが有効であるのかを、実証研究によって明らかにしていくというものでした。つまり、状況要因と組織特性との対応関係を探ることが中心課題だったのです。

コンティンジェンシー理論の特徴をまとめてみましょう。まず、コンティンジェンシー理論は、環境や技術などの状況要因に応じて組織をどのように変化させるのかを問題としています。その際、個人や小規模なユニットではなく、主として組織全体レベルを対象とし、環境と組織との適合関係と、その適合によって導かれる組織の有効性について検討するものでした。ここでは、強い意味での環境決定論というより、環境適合的な立場が重視されていると理解する方が適切です。

しかし、実際には、特定の状況要因を取り扱う限られた範囲の環境を問題とするものであり、その意味から中範囲理論として理解されることもあります。また、コンティンジェンシー理論は、実証研究に基づく事実発見から、状況要因と主として組織構造との経験的適合関係を明らかにする、いわば結果に着目したもので、なぜそのような関係が成立しうるのかを十分に説明するものではありませんでした。

■ ガルブレイスの組織の情報処理モデル

そこで、このような適合関係がなぜ成立するのかという説明原理確立の要請に応えるために登場したものの1つが、ガルブレイスの組織の情報処理モデルです。組織の情報処理モデルでは、情報に着眼し、情報を媒介とすることで、それまで別々に扱われていた多様な状況要因の統合を図ろうとしました。ガルブレイス自身も、この枠組みは、課業不確実性と組織形態との関係を説明し、情報システムや集団的問題解決のように別々に扱われてきた組織介入を統合する基礎を与えると述べています。

それでは、組織の情報処理モデルを見てみましょう。

ガルブレイスの組織の情報処理モデル_基本的枠組み.png

組織は、直面している環境から処理しなければならない様々な情報処理負荷を課せられています。そこで、組織は、この情報処理負荷とこれに対処し得る情報処理能力との適合を図ることで、組織の有効性を確保しようとします。この「情報処理需要と情報処理能力の適合」という考え方が、このモデルの中心です。

このような基本的な考え方に基づき、組織の情報処理モデルは、組織の環境への適合・適応行為を不確実性に対処する行為として把握しようとしました。そして、不確実性に対処し得る組織の情報処理能力を備えることが、組織の有効性を導くと考えたわけです。課業不確実性が大きくなれば、それだけ事前計画や事前決定が難しくなり、組織はより多くの情報処理を必要とすることになります。

■ 不確実性の定義と組織デザイン戦略

さて、ここで言う不確実性とは何を意味するのでしょうか。ガルブレイスは、不確実性を「組織が課業を遂行するために必要な情報量と、組織がすでに持っている情報量との差」として捉えました。したがって、組織が必要とする情報量が欠如し、不確実性が大きくなれば、組織はそれだけ多くの情報を処理しなければならなくなります。

さて、組織がどのように不確実性と情報処理能力を適合させるかは、実践的な要請からコストを意識しなければなりません。そのために、環境に適合し得る組織デザイン戦略として、次に示すような方法が考えられました。ガルブレイスの原型的整理では、戦略は大きく、情報処理の必要性を減らす方法と、情報処理能力を高める方法に分けられます。

【図:組織デザイン戦略の選択肢(ガルブレイス)】

不確実性の程度に応じた組織デザイン戦略:

①【情報処理の必要性を減らす方法】
・スラック資源を設ける(例:納期や在庫にゆとりを持たせる)
・複数の自己完結的な意思決定単位や作業単位を形成する

②【情報処理能力を高める方法】
・垂直的情報システムを強化する
・組織の横断的関係(横断的チームやラテラル・リレーション)を形成する

加えて、比較的安定した状況では、ルールやプログラム、階層的意思決定による調整も重要な役割を果たします。しかし、不確実性が高まると、それだけでは十分でなくなり、上のような戦略が必要になると考えられました。

こうして、組織は、様々な組織デザイン戦略のいずれか、あるいはその組み合わせを選択することで、不確実性への対処を試みるとされました。

組織の情報処理モデルの発想は、組織の情報処理のあり方を検討するベースとして、その後の研究に多大な影響を与えました。しかし、このモデルは、組織の環境適応を組織デザイン戦略の選択という視点から接近するものであったため、基本的には環境への適合を中心に問題とするものになっています。そのため、組織が環境を能動的に形成したり変化させたりする視点は、相対的には弱いと見ることができます。

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