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経営情報学で学ぶ組織の情報処理モデルの精緻化―不確実性・多義性・解釈システムをわかりやすく解説 #放送大学講義録(経営情報学入門第2回その7)

ーーーー講義録始めーーーー

 

組織の情報処理モデルの精緻化――不確実性から多義性へ、そして組織情報処理の統合的理解

■ 情報の多義性という概念の導入

ガルブレイスによって提示された組織の情報処理モデルに対しては、その後、さらなる精緻化が試みられました。とくに、組織と環境との関係について、単に情報量の問題としてだけでなく、解釈の側面を含めて捉える見方が重視されるようになりました。このような展開は、情報を画一的で一義的なものとして捉えるだけでは、組織と環境との適応メカニズムを十分に扱いきれないという発想を反映しています。つまり、情報に関して、量的側面だけでなく、解釈の側面が取り入れられるようになったのです。こうした方向は、組織を解釈システムとして捉える議論や、equivocality を重視する議論に明確に見ることができます。

そこでは、組織が情報からいかなる意味を引き出すか、情報にいかなる意味を与えるかという点が強調されることになります。組織は単に情報を受け取るだけではなく、その情報に意味を与え、行為の根拠へと変えていく存在として捉えられるようになります。

■ 多義性(equivocality)とは何か

それでは、次の図をご覧ください。

【図:ルビンの壺(多義的な図形の例)】

〔説明〕この図は、見方によって「壺」とも、「向き合う2人の顔のシルエット」とも見えます。観察者の解釈によって意味が変わる多義的な図形の典型例です。

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※壺として見ると:中央の白い部分が壺の形に見える
※顔として見ると:両端の黒い部分が向き合う2つの顔の輪郭に見える

この図は壺を表しているとも、向き合う人の顔を表しているとも言えます。見る人の解釈によって図の意味が変わってきますので、この図は多義的であると言えます。 figure-ground illusion の説明でも、この図は中央の白い壺としても、両側の黒い輪郭としての顔としても知覚される例とされています。

組織において多義性(equivocality)が高いとは、単に情報が不足しているというよりも、同じ情報に対して複数のもっともらしい解釈が成り立ち、意味が一義的に定まらないことを意味します。 Weick は uncertainty を情報不足、equivocality を複数の合理的解釈がありうる状態として区別しています。このような状況下では、問題は一義的に捉えられるものではなく、問題の設定そのものが極めて困難になると言えます。

そこで、組織は組織の機能を妨げないレベルまで多義性を削減しなければならないということが注目されました。しかも、その際に必要なのは、単に追加のデータを集めることだけではなく、対話や相互作用を通じて意味をすり合わせることです。 Weick の説明でも、多義的な状況では、人々はすでにあるデータをどう整理するかという文脈や枠組みを必要とするとされています。

■ 精緻化されたモデル:不確実性と多義性の統合

組織の情報処理モデルは、環境からの情報処理課題として、情報の不確実性に加えて、情報の多義性も明示的に考えることで、組織の情報処理をより統合的な組織の調整活動という視点から説明するものへと精緻化されていきます。ここでは、不確実性への対処と多義性への対処とでは、求められる情報処理の性格が異なることが重要です。

精緻化された組織の情報処理モデル_不確実性と多義性.png

まとめてみましょう。

組織は、不確実性を削減するためには、明確に定まった問題の解決に必要な特定の情報を収集しなければなりません。これは、情報不足を埋める方向の情報処理です。

一方、多義性を削減するためには、当事者間で解決すべき問題の意味を明確化し、それに向けて相互作用しながら合意を形成することが求められます。多義性が高い場合には、追加情報の量よりも、意味づけや解釈の共有が重要になります。 Daft & Lengel の系譜でも、多義性が高いときには、より豊かな相互作用を可能にするコミュニケーションが必要になるとされています。

このように、組織の情報処理モデルは、情報の不確実性と組織の情報処理能力との量的適合を問題とする客観的側面に加え、情報の多義性という主観的・解釈的側面を取り入れることで精緻化されていきました。組織は、情報の不確実性と多義性の双方に対処するために情報処理活動を行っているのです。

■ まとめ

この回では、情報処理システムとしての組織について検討しました。まず、意思決定に関しては、そのプロセスとタイプ、それを支える情報技術について学習しました。そして、組織における意思決定については、問題状況の捉え方によって異なった発想のモデルが構築されていることも学びました。次に、組織がなぜ情報を処理しなければならないのかについて、組織の情報処理モデルを学習しました。さらに、その精緻化についても検討しました。ここで重要なのは、組織が扱う情報には、量の問題としての不確実性だけでなく、意味の問題としての多義性が含まれるという点です。

【キーワード】
多義性(equivocality)、ルビンの壺、解釈的側面、組織の情報処理モデルの精緻化、不確実性の削減、多義性の削減、合意形成、統合的な組織の調整活動、解釈システム