ーーーー講義録始めーーーー
コミュニケーションとは何か——組織論における位置づけ
今回は、古くて新しい経営情報学の重要なトピックとして、組織のコミュニケーションについて学習しましょう。この回の学習のポイントをまとめます。
まず、コミュニケーションの基本的な考え方を学習します。その上で、ICTによるコミュニケーションの進展と時空間の制約の克服、ICTによるコミュニケーションの技術的特性とそれがもたらす組織的効果について学びます。そして、組織のコミュニケーションを有効に行うために、メディア・リッチネスというメディア能力に着目し、デジタルメディアのリッチネスがいかに拡張されるかについても検討しましょう。
■ コミュニケーションの基本的な考え方
そもそも、人間の行動の多くがコミュニケーションと関連しています。組織においても、コミュニケーションは組織活動の中核をなす必要不可欠な基本的要素として扱われてきました。第2回で勉強したように、近代組織論の代表的論者とされるバーナード(C. I. Barnard)は、組織成立の基本条件として、共通目的、協働意思(貢献意思)、そしてコミュニケーションを重視しています。
バーナードは、組織メンバーが共通目的や協働意思を形成し、維持し、発展させるためには、コミュニケーションが欠かせないと捉えました。また、近代組織論の中核をなすサイモン(H. A. Simon)も、組織を意思決定の過程として捉え、その中で情報の伝達や理解が重要な役割を果たすことを示しました。このように、組織研究においては、早くからコミュニケーションが組織活動において必要不可欠なものであることが示されてきました。それは、今日の企業・組織においても変わっていません。
■ 伝統的なコミュニケーション・モデル
それでは、そもそもコミュニケーションとはどのようなものとして捉えられてきたのでしょうか。
図1に示されているように、どの企業においても、上司は何らかの目的や意図を持って部下に命令を伝達します。また、部下は上司に与えられた任務の結果を報告しなければなりません。このように、伝統的には、コミュニケーションは、何らかの目的や意図を持った送り手が受け手にメッセージを伝達することを中心に説明されてきました。
図1に示されていたように、上司から部下へ、また部下から上司へ、正確に情報が伝達されたか、その意味が伝わったか、意図された効果が上げられたかが問題とされました。つまり、伝統的なコミュニケーションは、主として、メッセージの送り手が主体的に行う、送り手から受け手への一方向的・直線的な情報伝達として捉えられていました。
それでは、伝えることはなぜ行われるのでしょうか。それは、相互に理解するためです。上司と部下とは、何を行うべきかを相互に理解しなければなりません。もっとも、組織コミュニケーション研究では、その後、コミュニケーションを送り手中心の一方向的な伝達としてみるだけでは不十分であると考えられるようになりました。とくに1980年代以降には、組織におけるコミュニケーションを、送り手と受け手が相互に意味を形成し続けるプロセスとして捉える見方が強まります。コミュニケーションは、送り手中心の一方向・直線的な情報伝達という伝統的な捉え方から、当事者間で行う相互作用を通じて、連続的かつダイナミックに意味が形成されるプロセスとして検討されるようになりました。
