ーーーー講義録始めーーーー
ICTによるコミュニケーションの技術的特性
ICTによるコミュニケーションは、次のような技術的特徴を持っています。ただし、ICTによるコミュニケーションの特徴づけには複数の理論的整理があり、ここではその中でも代表的な整理の一つとして、相互作用性、個別化、同報性、非同期性、外部記憶、再処理可能性といった特徴を取り上げます。以下、それぞれについて説明します。
■ 相互作用性(Interactivity)
相互作用性とは、多くのデジタルメディアが、送り手と受け手の間で反応や応答を比較的容易に往復させることのできる性質を持つことを意味しています。相互作用性は、個人を単なる受動的な反応者にとどめるのではなく、メッセージの形成ややり取りに能動的に関与する存在へと位置づけます。
■ 個別化(Personalization)
個別化とは、デジタルメディアが、多数の受け手の中の特定の個人や集団に対して、その属性や状況に応じたメッセージを送ることができることを意味します。個別化は、対面ではない環境においても、相手に合わせた情報提示や応答を可能にし、コミュニケーションの適合性を高めます。
■ 同報性(Broadcasting)
同報性とは、多数の人に同時にメッセージを送ることができる特徴です。同報性は、組織において情報を一斉に周知したり、共通認識の基盤を形成したりするうえで有効です。また、デジタルメディアは複数のやり取りを並行して扱える場合があり、その点でも組織内の情報共有を支えます。
■ 非同期性(Asynchronicity)
非同期性とは、デジタルメディアが、必ずしも同じ時点に相手と接続していなくても、各個人の都合の良い時点でメッセージを送受信できることを意味します。非同期性は、個人が時間をある程度コントロールしながら、より柔軟にコミュニケーションを行うことを可能にする特性です。
■ 外部記憶(External Memory)
外部記憶とは、電子的なメッセージややり取りをデジタル記録として保存し、後から参照・検索できることを言います。この特徴によって、コミュニケーション内容は一過性のものにとどまらず、組織の記録や知識資源として蓄積されやすくなります。近年の組織コミュニケーション論では、このような性質は persistence(持続性)とも重なる重要な特徴として論じられています。
■ 再処理可能性(Reprocessability)
再処理可能性とは、保存されたメッセージを後から何度も読み返したり、比較したり、分析したりできることを意味します。これは、media synchronicity theory において reprocessability として整理されている能力に近いものです。この特徴によって、過去の記録との差異の確認、情報の整理、データの分析、知識の再利用がしやすくなり、今日の組織においては、問題発見や問題解決、組織的学習を促進する重要な役割を果たしています。デジタルメッセージの蓄積は、組織記憶の形成や活用にもつながります。
