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ICTが組織に与える影響とは?Sproull&Kieslerの二段階理論で学ぶ組織コミュニケーション #放送大学講義録(経営情報学入門第3回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

ICTがもたらす組織的効果——二段階的理解

このようなICTによるコミュニケーションは、組織にどのような効果をもたらすのでしょうか。ICTによるコミュニケーションがもたらす組織的効果に関しては、スプロールとキースラー(Sproull & Kiesler)による、first-level effects と second-level effects という二段階的な見方が有名です。彼女らは、新しいコミュニケーション技術の効果を、導入時に期待されやすい効率化の効果と、導入後に社会的・組織的な関係の変化として現れる効果とに分けて考える必要があると論じました。

スプロールらは、情報技術によるコミュニケーションは、組織の中でも重要なプロセスであるコミュニケーションそのものに作用するため、組織の働き方や情報の流れ、人々の関係のあり方に大きな影響を与えると考えました。したがって、その意義は、単なる機械処理能力の向上としてだけではなく、人々の結びつき方や組織のあり方の変化という観点から捉える必要があります。

■ 第1段階の効果:予測可能な技術的効果

第1段階の効果は、生産性や効率性の向上といった、比較的予測可能な技術的効果です。例えば、電子メールは非同期的であるため、電話のような同期的なコミュニケーションに比べて、相手の作業をその場で中断させずにメッセージを届けやすいという点で効率的です。また、電子メールの同報性によって、1人に送るのとほぼ同じ操作で、多数の相手に同じメッセージを送ることができるため、情報周知の迅速化やメッセージの定型化など、効率性の向上が期待できます。こうした効果は、導入時にあらかじめ見込みやすい first-level effects にあたります。

技術的効果は、ある程度は測定することもできます。例えば、ボイスメールや電子メールを導入する企業は、その効率化の効果を数字で把握するために、導入によって人件費をどれだけ節約できるかという経費削減計算や、担当者に別の仕事を割り当てることで生み出される付加価値の見積もりを行うことができます。このような評価は、第1段階の効果を把握する代表的な発想です。

■ 第2段階の効果:社会システム上の変化

第2段階の効果は、社会システム上の変化を意味します。これは、新しい技術が人を新しい情報や新しい相手に結びつけることによって生じるものであり、今までとは違うことに関心を向けたり、今までとは違う人と違う形で関わり合ったりすることから生まれます。こうした変化は、人々の時間の使い方、重要だと考えるもの、社会的接触、相互関係を変化させ、さらに社会的役割や社会的関係そのものにも影響を及ぼします。

これをわかりやすい例で考えてみましょう。皆さんは友人とどのようにして待ち合わせていますか。かつては、待ち合わせるには「午後2時に駅の改札で」などと、時間と場所をあらかじめ指定しなければ待ち合わせることが難しい場面が多くありました。今日では、スマートフォンやSNS、メッセージアプリを活用することで、移動しながらでも相手と連絡を取り合い、柔軟に打ち合わせることができます。この例は、Sproull & Kiesler の議論そのものの直接事例ではありませんが、二段階的な効果を理解する補助例として考えることができます。

今日のSNSやメッセージアプリの活用を考えてみましょう。誰とでも、いつでもつながりやすいという特性は、連絡や調整を効率化するという点で、第1段階の予測可能な技術的効果として理解できます。何時間も駅で待たされることは減り、効率的に会うことができます。また、以前は連絡が途絶えていた相手を探し出し、再びつながることもできます。一方で、こうしたデジタルなつながりが、人間関係の質や孤独感、社会的孤立にどのような影響を与えるかについては、近年、公的機関や研究でも懸念や議論が示されています。これは、技術導入時には十分には予測しにくかった、社会システム上の変化として考えることができます。

■ 2段階理論が示す留意点

ICTによるコミュニケーションの組織的効果に関しては、その可能性として次のような点に留意しなければなりません。
(1)第2段階の効果が比較的軽視される傾向があること。
(2)予期せぬ結果は、主に第2段階の効果から生じやすいこと。
(3)第2段階の効果は、導入直後よりも、時間がたって人々の行動や考え方の変化が認識される中で明らかになりやすいこと。
(4)第2段階の効果は、それ自体が社会や組織から影響を受け、また逆に社会や組織へ影響を与えること。したがって、技術を活用している人間自身も、技術の使い方や設計、運用の方向性を通じて、第2段階の効果に影響を与えていること。

このことは、次に検討するように、組織のコミュニケーションにおいて活用されるデジタルメディアが、生来の能力を発揮してコミュニケーションの有効性を高めるのみならず、組織と相互作用することでその能力を拡張するものであることとも関連しています。こうした見方は、技術の効果を固定的に見るのではなく、技術と組織との相互作用として理解する立場ともつながっています。

 

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