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デジタルメディアのリッチネスはなぜ拡張されるのか?状況・社会・経験・併用から学ぶ組織コミュニケーション #放送大学講義録(経営情報学入門第3回その6)

ーーーー講義録始めーーーー

 

デジタルメディアのリッチネスを拡張する要因
——状況・社会・経験・メディアの併用

今日のデジタル社会では、実際にメディアはどのように活用されているのでしょうか。組織におけるデジタルメディアのリッチネスは、固定的なものとしてではなく、状況的要因、社会的要因、経験要因、メディアの併用などから強い影響を受けることが指摘されています。こうした見方は、古典的なメディア・リッチネス理論を、その後の社会的影響研究やチャネル拡張理論によって発展的に捉える立場と結びついています。

■ 状況的要因

有効なコミュニケーションを実現するために対面関係を活用したいという場合でも、時間がない、そこに行けないという制約から、相対的にリッチネスが低いメディアをうまく活用しなければならない場合があります。また、時空間の制約を克服できるかどうかは、当該デジタルメディアに実際にアクセスできるかどうかという状況的要因によっても影響されます。これは、相手が必要に応じてメディアに物理的にアクセスできるということだけでなく、そのメディアを円滑に利用できる状態にあるかどうかという実践的条件も含んでいます。こうした物理的・心理的アクセス可能性を考慮して、デジタルメディアをうまく活用することが求められます。もっとも、これらはチャネル拡張理論の中心概念そのものというより、デジタルメディア活用の実践的条件として理解するのが適切です。

■ 社会的要因

デジタルメディアの活用に関しては、個人の行動に対する社会的影響や、メディアが持つシンボリックな要因などの社会的要因を考慮する必要があります。社会的影響を強調する研究は、個人のメディアの認知や活用が、メディアの客観的特性だけで決まるのではなく、社会的プロセスの影響を受ける主観的なものであることを主張しています。社会的影響としては、同僚や上司の態度や行動、仕事・集団の規範やルール、受け手との関係から受ける影響などがあります。

社会的要因からメディア活用を説明しようとする研究は、活用の場である組織コンテキストごとに、使われるメディアのリッチネスの知覚が変わると考えます。つまり、組織コンテキストによってメディア・リッチネスの評価は異なるのです。また、メディアはそれ自体、メッセージ内容を超えた意味を持つものでもあります。その意味は、時間の経過とともに組織によって社会的に構築されたものです。シンボリックな要因によって、組織ごとにデジタルメディアが持つ意味が、そのメディアのリッチネスの知覚を拡張する可能性も考えられます。

■ 経験要因:チャネル拡張理論

カールソンとズムッド(Carlson & Zmud)によるチャネル拡張理論は、デジタルメディアのメディア・リッチネスの知覚が経験によって拡張・開発されることを主張しています。そこで重要とされる経験は次の4つです。
(1)メディアそのものに関する経験
  ……個人がそのメディアをどのくらい活用したことがあるか
(2)コミュニケーショントピックに関する経験
  ……扱われているコミュニケーションの内容にどのくらい馴染みがあるか
(3)コミュニケーションパートナーに関する経験
  ……コミュニケーションパートナーをどのくらい知っているか
(4)組織コンテキストに関する経験
  ……コミュニケーションが行われる場をどのくらい理解しているか

これらの経験を積むことによって、デジタルメディアは、利用者にとってよりリッチなものとして知覚され、より有効なコミュニケーションを導くものになると説明されています。ここで重要なのは、メディア自体の技術的仕様が変わるというより、経験の蓄積によって、利用者がそのメディアをより豊かなものとして理解し、活用できるようになるという点です。

■ メディアの併用

あるデジタルメディアのリッチネスは、他のデジタルメディアとの併用によって開発され得るという研究や実践的知見もあります。特に、あるデジタルメディアのリッチネスは、よりリッチネスレベルが高いとされる別のメディアと併用される場合に、拡張される可能性が高くなると考えられます。例えば、電子メールと電話の併用において、電子メールのリッチネスは、よりリッチな電話というメディアとの組み合わせによって、相手理解や文脈共有を補われるかたちで拡張されうることが、実践面からも指摘されています。ただし、こうした拡張は常に自動的に生じるわけではなく、課題の性質や利用の仕方に左右されます。

このことは、今日では多くのデジタルメディアが単一の機能だけでなく、多くの機能を備えていることから、メディア・リッチネスを拡張する機能をすでに備えているということができるかもしれません。しかし、デジタルメディアの活用については、メディアと組織との相互作用、組織コンテキストを考慮することが欠かせません。つまり、デジタルメディアの有効性は、単なる技術的属性だけではなく、組織内での意味づけ、経験の蓄積、他メディアとの組み合わせの中で形成されるのです。