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「持続可能な社会」とは何か――SDGs時代に学ぶサステイナビリティ入門 #放送大学講義録(持続可能な社会と生活第1回その1)

ーーーー講義録始めーーーー

 

科目のイントロダクション――「持続可能な」とはどういう意味か
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皆さんは「持続可能な社会」や「持続可能性」といった言葉を、日常のニュースや学校、企業の取り組みの中で、しばしば耳にすることと思います。持続可能な開発目標、いわゆるSDGsにも示されているように、これらは現代社会におけるとても重要なキーワードです。SDGsは、2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核に位置づけられた国際目標であり、貧困、教育、ジェンダー、水と衛生、エネルギー、経済、都市、気候変動、生物多様性、パートナーシップなど、私たちの社会全体に関わる幅広い課題を含んでいます。

この科目では、「持続可能な社会」とはどんな社会なのか、そしてそれは私たちの暮らし、私たち一人ひとりの行動とどのようにつながっているのか、またグローバルに、そして身近な地域において、これをどうしたら実現できるのかといった点について、皆さんと一緒に学び、考えていきたいと思います。

科目の全体構成はご覧のようになっています。持続可能な社会と、それをどう実現していくかを、大きく3つのパートに分けて考えていきたいと思います。まず第1回目から第5回目までは、そもそも持続可能な社会とは何か、そして持続可能な社会の実現のために取り組まなければいけない環境や社会の課題とは何かといった、問題の所在を中心に見ていきます。そして第6回目から第10回目までは、市民や生活者、企業、投資家や政府など、様々な取り組み主体に焦点を当てて、それぞれの役割と、どのように取り組んでいったら良いのかを見ていきます。そして第11回から最終第15回までは、国内各地域における実際の課題解決への取り組み事例を紹介しつつ、持続可能な社会の実現に欠かせないガバナンスやパートナーシップ、教育などの重要な達成手段について考えていきます。

とりわけ、この科目全体を貫く問題意識として、「問題の本質は何か」「解決の担い手は誰か」「どんな視点での行動が求められるか」「私たち一人ひとりの生活とどうつながっているか」といった点を常に念頭において、問題を掘り下げていきたいと思います。この科目の受講を通じて、皆さんがそれぞれ置かれた立場で、持続可能な社会の実現のために何をどうすれば良いのかを「自分事」として考え、そして行動することにつながっていくことを願っております。

それでは早速、第1回目のテーマに入っていきましょう。今回はまず、最も基本となる概念である「持続可能な社会」や「持続可能な発展」とは何かについてお話ししたいと思います。持続可能な社会を論じる前提として、そもそも「持続可能な」とはどういう意味なのか、その概念を正しく理解しておくことが必要になります。

「持続可能な」、英語では「サステイナブル(Sustainable)」という言葉、あるいはその名詞形の「サステイナビリティ(Sustainability)」という言葉は、近年では専門家だけではなく一般社会にも浸透して、多くの人が使う言葉となりました。しかし、言葉が市民権を得たとはいえ、様々な理解や解釈のもとに使われており、必ずしも共通の正しい理解が浸透しているとは言えないように思います。

この概念を理解するうえでよく参照されるのが、1987年に公表されたブルントラント報告書、正式には『Our Common Future』です。この報告書では、持続可能な開発を「将来世代が自らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在世代のニーズを満たす開発」と説明しています。ここで大切なのは、「いまの私たちの豊かさ」だけを考えるのではなく、「これから生まれてくる世代の選択肢」も守るという視点です。つまり、持続可能性とは、単に何かを長く続けるということではなく、現在の生活、経済、社会のあり方が、将来の人びとの生活条件を壊してしまわないかを問う考え方なのです。

例えば、「持続可能な」という言葉を「持続的な」とイコールだと考えて、単に継続的に右肩上がりに経済成長する、すなわち成長し続けるという意味で「持続可能な成長」という言葉が使われることがあります。もちろん、経済が安定していることや、人びとが安心して働き、暮らせることは、持続可能な社会にとって重要です。しかし、資源を使い尽くしたり、環境への負荷を将来世代に先送りしたり、格差や貧困を放置したりしながら続く成長は、本来の意味での「持続可能な」成長とは言えません。

また、「持続可能性」や「サステイナビリティ」というと、地球温暖化や生態系の劣化などの環境問題とイコールのことだという受け止め方も、おそらく多いのではないかと思います。たしかに、気候変動、生物多様性の損失、資源の枯渇、廃棄物の増加といった環境問題は、持続可能性を考えるうえで避けて通れない中心的な課題です。しかし、それだけではありません。持続可能な社会を考えるということは、貧困や格差、教育、健康、働き方、ジェンダー平等、地域社会のあり方、企業活動、政治や行政の仕組み、そして私たちの日々の消費や生活の選択までを含めて考えるということです。

つまり、「持続可能な」という言葉には、環境を守るという意味だけでなく、人間の生活の基盤を守ること、社会の公正さを保つこと、経済活動を将来にわたって成り立つ形に変えていくこと、そして現在世代と将来世代の両方に責任を持つことが含まれています。ここを押さえておかないと、「持続可能性」という言葉は、便利だけれども中身の曖昧なスローガンになってしまいます。この科目では、その言葉を単なる流行語としてではなく、私たちの生活と社会のあり方を見直すための、具体的なものさしとして考えていきたいと思います。

図表:誤解されやすい「持続可能な」の意味

よくある理解 何が不十分か 講義で押さえたい理解
持続可能=ずっと続くこと 何を、どのような条件で続けるのかが問われていない 将来世代の可能性を損なわず、現在のニーズを満たすこと
持続可能な成長=右肩上がりの経済成長 環境負荷、資源制約、格差、将来世代への影響が抜け落ちやすい 経済・社会・環境のバランスを取りながら成り立つ発展
サステイナビリティ=環境問題 環境は中心的課題だが、それだけではない 貧困、教育、健康、働き方、地域、企業、生活行動まで含む
SDGs=企業や行政の取り組み 市民や生活者の行動とのつながりが見えにくくなる 政府、企業、投資家、地域、市民、生活者が関わる共通課題