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MDGsとSDGsの違いとは|目標数・対象範囲・企業の役割までわかりやすく比較 #放送大学講義録(持続可能な社会と生活第2回その4)

ーーーー講義録始めーーーー

 

次に、MDGsと比較した場合のSDGsの特徴を見ていきましょう。SDGsは、前身である国連ミレニアム開発目標(MDGs)の後継としての性格を持っています。したがってMDGsと比較してその違いを理解することによって、SDGsの特徴をより理解しやすくなります。中でも特にポイントとなる重要な違いは以下の通りです。

 

MDGsとSDGsの比較表 PNG

 

まず、課題の対象範囲の広さが挙げられます。MDGsでは8つの目標、21のターゲット、60の公式指標が設定されており、SDGsよりもいずれも数は少なく、極度の貧困、初等教育、ジェンダー平等、乳幼児死亡率、妊産婦の健康、HIV/エイズ・マラリアなどの感染症、環境の持続可能性、開発のためのグローバル・パートナーシップを中心に、主として開発途上国の開発課題に焦点を当てていました。国連のMDGs報告書でも、MDGsの進捗は8目標、21ターゲット、60公式指標によって測定されると説明されています。

持続可能な発展の重要な要素である環境についても、MDGsでは目標7「環境の持続可能性の確保」で言及されています。しかし、全体として見ると、環境は8目標のうちの一つとして位置づけられており、気候変動、海洋、生態系、生物多様性、持続可能な消費と生産といった課題が、現在のSDGsほど細かく展開されていたわけではありませんでした。したがって、MDGsに環境の視点がなかったということではなく、SDGsと比べると、扱いの幅と重みが限定的だったと理解するのが正確です。

これに対してSDGsでは、より幅広いグローバルな課題に言及しています。SDGsは17の目標と169のターゲットから構成され、進捗を測るグローバル指標については、国連統計部の現行リストで一覧上251指標、重複を除くと234の固有指標が示されています。 目標13から15は、気候変動、海洋、陸域生態系という直接的な環境目標です。また、目標6の水と衛生、目標7のエネルギー、目標11の都市、目標12の持続可能な生産と消費なども、環境と深く結びついています。こうして見ると、SDGsでは環境に関する目標が大幅に充実したことがわかります。

またSDGsには、目標8の働きがいのある人間らしい仕事と経済成長、目標9の包摂的で持続可能な産業化・技術革新とイノベーション、目標10の不平等の是正、目標12の持続可能な生産と消費など、産業と経済に関する要素が大幅に組み込まれました。国連の2030アジェンダは、すべての国とすべてのステークホルダーが協働してこの計画を実施すると述べています。 つまりSDGsは、環境・経済・社会の3つの要素を統合した、持続可能な発展の定義に沿った総合的な目標体系になっているのです。

次に、新たな概念として格差への注目などがあります。富の集中と偏在、貧富の格差拡大は世界的な傾向であり、貧困問題は途上国だけの問題としては捉えられなくなっています。SDGsではMDGsに比べて、貧困や格差をより普遍的な課題として捉え、不平等是正の新たな目標である目標10を設けて、格差縮小の視点を強調しています。ここで重要なのは、SDGsが「どこか遠い国の開発課題」ではなく、先進国を含むすべての国に関わる課題として構想されている点です。

3番目に、策定プロセスにも大きな特徴があります。MDGsと比べてSDGsで大きく異なるのは、策定プロセスへの幅広いステークホルダーの参加です。政府や国連機関だけでなく、市民社会、研究者、地方自治体、若者、企業など、さまざまな主体の声を取り入れながら議論が進められました。国連開発グループの報告書「A Million Voices」は、ポスト2015開発アジェンダをめぐって、国別協議、テーマ別対話、MY Worldグローバル調査などを通じて、世界中の100万人を超える人々の声を集めたと説明しています。 また国連のMY World 2030の説明では、MY World調査にほぼ1000万人が回答したとされています。

企業セクターも、SDGsをめぐる議論や、その後の実施において重要な役割を果たす主体として位置づけられるようになりました。例えばWBCSD、すなわち持続可能な発展のための世界経済人会議のような組織は、企業が持続可能な社会への移行にどのように貢献できるのかをめぐって、政策提言や実践の共有を行ってきました。WBCSD自身も、企業を結集して、ネットゼロ、自然にポジティブで公平な未来に向けた解決策を進める組織であると説明しています。

ただし、ここで注意したいのは、企業の関与を一枚岩で捉えないことです。企業の参加には、SDGs達成に向けて技術、資金、雇用、イノベーション、事業モデルの力を生かそうとする前向きな側面があります。一方で、企業活動が環境負荷や人権問題、労働問題、格差拡大を生み出す場合もあります。したがって、企業が関わればそれだけでよいということではありません。重要なのは、企業活動そのものを持続可能で包摂的な方向へ変えていくことであり、単なるイメージ戦略や宣伝としてSDGsを利用することではないのです。

2015年のSDGs採択直後には、「17個の目標は数が多すぎる」「何でもかんでも盛り込みすぎだ」といった批判的な意見もありました。たしかに、8目標だったMDGsと比べると、SDGsは17目標、169ターゲットという大きな体系になっています。そのため、最初に見ると複雑で、どこから理解すればよいのかわかりにくい面があります。しかし、それは同時に、貧困、環境、経済、格差、平和、制度、パートナーシップといった課題が、もはや別々には解けないほど深く結びついていることの表れでもあります。

多様な視点や立場の違う意見を取り入れていくことは、SDGsにとって非常に重要です。なぜなら、目標達成に必要なのは、先進国から途上国への一方的な支援だけではないからです。先進国も自らの生産と消費、エネルギー、都市、働き方、格差、企業活動を見直す必要があります。途上国にも、それぞれの地域の実情に応じた開発と環境保全の両立が求められます。そして政府だけでなく、企業、自治体、市民社会、学校、研究機関、地域コミュニティ、個人が、それぞれの立場から行動することが必要になります。こうした幅広い参加と合意形成の積み重ねが、SDGsを単なる国連文書ではなく、社会全体で取り組む目標にしているのです。

最後に、経済の要素や企業の役割の重視もSDGsの大きな特徴です。持続可能な発展を実現することは、もはや政府だけの役割ではありません。民間投資や企業活動にも組み込むことで、経済自体を持続可能で包摂的なものに変えていき、投資家や企業の力を目標達成に必要な推進エンジンとすることが求められています。開発資金に関するアディスアベバ行動目標でも、民間金融や企業活動が、包摂的な経済成長、雇用創出、貧困や不平等の削減において重要な役割を持つことが確認されています。

SDGsとMDGsとの大きな、そして重要な違いは、この目標達成に向けた民間セクター、とりわけ企業が果たす役割に関する認識です。MDGsの時代にも、国際協力や社会貢献に取り組む企業は存在しました。しかしSDGsに関しては、企業への期待がいっそう高まるとともに、非常に多くの企業がSDGsに関心を寄せ、寄付やボランティアなどの社会貢献活動としてだけでなく、事業戦略、投資判断、サプライチェーン管理、人材戦略、商品開発、情報開示などに組み込んで取り組むようになっています。これは大きな違いです。

もちろん、企業がSDGsを掲げているからといって、それだけで本当に持続可能な取り組みをしているとは限りません。SDGsウォッシュと呼ばれるように、実態が伴わないまま、見かけだけSDGsに貢献しているように見せる問題もあります。だからこそ、企業のSDGsへの取り組みを見るときには、どの目標に関係しているのか、どのターゲットに貢献しているのか、どのような指標で進捗を説明できるのか、そして負の影響をどう減らしているのかまで確認することが重要です。

以上、MDGsとの違いについてお話ししました。こうして見てみると、SDGsは単にMDGsの期限が来たからさらに15年延長したものではありません。MDGsの成果と課題を引き継ぎながら、対象を先進国と途上国の双方に広げ、環境・社会・経済を統合し、格差や持続可能な消費と生産、都市、平和、制度、パートナーシップ、企業の役割まで含めた、より包括的な目標体系へと発展したものです。SDGsは、持続可能な発展の本質をより正面から捉え直した国際目標として理解する必要があるのです。