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クラスター爆弾禁止条約とNGOの力:オスロ・プロセスから投資禁止キャンペーンまで #放送大学講義録(持続可能な社会と生活第6回その5)

【要約】

 

クラスター弾に関する条約、Convention on Cluster Munitions(CCM)は、2008年5月に採択され、2010年8月1日に発効した人道的軍縮条約である。クラスター弾は、親爆弾の中に多数の子爆弾を収め、空中で広範囲に散布する兵器であり、民間人を巻き込みやすく、不発弾が戦後も長く危険を残す点で深刻な人道問題を引き起こす。条約は、使用、生産、取得、貯蔵、保有、移譲を禁止し、被害者支援や汚染地域の除去も定めている。条約化の背景には、Human Rights WatchなどのNGOによる被害調査と問題提起があり、2003年にはCluster Munition Coalition(CMC)が設立された。CCW枠内の交渉が進まない中、ノルウェーなどの中堅国家とNGOが連携し、オスロ・プロセスを通じて2008年の条約採択につなげた。また、NGOは金融機関や投資家にも働きかけ、ベルギーでは2007年にクラスター弾への投資禁止法が成立した。企業の製造撤退には複数の要因があるが、条約化、市民社会の監視、投資禁止キャンペーンは、クラスター弾をめぐる企業行動にも影響を与えた。この事例は、アドボカシー型NGOが国際法、世論、金融、企業行動を結びつけ、非人道的兵器をめぐる国際規範を形成しうることを示している。

 

ーーーー講義録始めーーーー

 

アドボカシー型NGOの事例――クラスター爆弾禁止条約とNGOの力

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次は、アドボカシー活動の事例です。NGOの活動が、国際世論を動かし、新たな国際条約の採択と発効に大きく関わった例があります。それが、クラスター弾に関する条約、Convention on Cluster Munitions(CCM)です。日本語では「クラスター弾に関する条約」または「クラスター爆弾禁止条約」と呼ばれることが多く、署名式がオスロで行われたことから、講義などでは「オスロ条約」と呼ばれることもあります。この条約は、2008年5月30日にダブリンで採択され、2008年12月3日にオスロで署名開放され、2010年8月1日に発効しました。【根拠1】

CCMは、クラスター弾がもたらす人道上の被害に対処するための包括的な条約です。条約は、クラスター弾の使用、開発、生産、取得、貯蔵、保有、移譲を禁止し、さらにそのような行為を援助・奨励・誘導することも禁じています。また、すでに保有しているクラスター弾の廃棄、汚染地域の除去、被害者支援、透明性報告、国内実施措置なども定めています。つまり、単に「使ってはいけない」というだけではなく、貯蔵弾をどう処分するのか、残された不発弾をどう除去するのか、被害者をどう支援するのかまで含めた、人道的軍縮条約なのです。【根拠2】

▼ クラスター爆弾の構造と問題点

【図表:クラスター爆弾の構造(模式図)】
親爆弾、すなわちコンテナーの中に、数個から数百個の子爆弾、つまりサブミュニションが収納されている。航空機からの投下、または地上の大砲・ロケットによる発射の後、空中でコンテナーが開き、子爆弾が広い範囲に散布される。子爆弾の一部は地上で爆発せず、不発弾として残留する。

この兵器の非人道性には、いくつもの側面があります。第一に、クラスター弾は多数の子爆弾を広範囲に散布するため、軍事目標だけを正確に攻撃することが難しく、民間人を巻き込む危険が高い兵器です。第二に、子爆弾は小型で、形状によっては子どもの目を引きやすく、拾ったり触れたりした民間人が犠牲になることがあります。第三に、不発弾が残ると、紛争が終わった後も、農地、通学路、住宅地、復興作業の現場に危険が残り続けます。第四に、不発弾の除去には専門的な技術と大きな危険が伴い、年月と費用がかかります。そのため、クラスター弾は、戦闘中だけでなく、戦後の復興や地域の暮らしにも長い影を落とすのです。ICRCも、CCMを、文民と戦闘員の区別、軍事目標への攻撃限定、文民・民用物への配慮という国際人道法の基本規則を補強する重要な条約として位置づけています。【根拠3】

 

クラスター爆弾の構造(PNG)をダウンロード

 

▼ 条約化への道――NGOが切り拓いたオスロ・プロセス

条約化の背景には、NGOによる被害調査と問題提起がありました。Human Rights WatchなどのNGOは、コソボ紛争やアフガニスタン、イラクなどにおけるクラスター弾の使用実態を調査し、民間人被害や不発弾問題を国際社会に訴えていきました。1999年にはHuman Rights Watchがクラスター弾の使用停止を求め、2003年11月13日にはオランダのハーグでCluster Munition Coalition(CMC)が立ち上げられました。CMCは、クラスター弾の使用、生産、貯蔵、移譲の禁止を求める市民社会の国際的なネットワークとして、NGO、宗教団体、専門家団体、被害者団体などをつないでいきました。【根拠4】

当初、クラスター弾の問題は、特定通常兵器使用禁止制限条約、Convention on Certain Conventional Weapons(CCW)の枠内でも議論されていました。しかし、クラスター弾を大量に保有・使用してきた国々や、軍事的有用性を重視する国々との間で合意形成が進まず、実効性のある禁止条約づくりは難航しました。こうした状況の中で、ノルウェー政府が主導し、NGOや被害者、市民社会と連携しながら、CCWの枠外で独自の条約交渉を進める動きが生まれます。これがオスロ・プロセスです。ノルウェーの国別プロファイルでも、CCWでの取り組みが十分な成果を生まなかったことを背景に、ノルウェーが2006年11月にオスロ・プロセスを始めたと説明されています。【根拠5】

2007年2月にオスロで開催された会議では、クラスター弾の禁止を目指すオスロ宣言が採択され、クラスター弾によって民間人に容認できない被害を与える兵器を禁止する、法的拘束力のある国際文書を2008年までに作るという目標が掲げられました。その後、リマ、ウィーン、ウェリントンなどで会議が重ねられ、2008年5月にダブリンで開催された外交会議で、Convention on Cluster Munitionsが採択されました。そして同年12月、条約はオスロで署名のために開放されました。【根拠6】

ここで重要なのは、この条約が、軍事大国間の通常の軍縮交渉だけで生まれたものではないということです。もちろん、最終的に条約を採択し、署名し、批准するのは国家です。しかし、その過程で、NGO、被害者、市民社会、そしてノルウェーなどの中堅国家が密接に連携しました。NGOは、現場で起きている被害を調査し、写真や証言、報告書を通じて問題を可視化し、政府代表に働きかけ、メディアや市民に訴え、交渉の場で禁止条約の必要性を訴え続けました。このように、クラスター弾禁止条約は、アドボカシー型NGOが国際ルール形成に深く関わった代表的な事例だと言えます。

ただし、条約には限界もあります。すべての国がCCMに加入しているわけではなく、クラスター弾を保有・使用してきた国の中には、未締約の国も残っています。したがって、条約が発効したからといって、世界からクラスター弾の危険が直ちに消えたわけではありません。しかし、条約は、クラスター弾を非人道的な兵器として国際的に stigmatize、つまり強く非難される対象にし、使用や生産、投資、移譲に対する政治的・社会的コストを高めました。その意味で、CCMは国際法上の禁止であると同時に、国際規範を作り出した条約でもあります。

▼ 経済へのアドボカシー――投資禁止法の成立

クラスター弾をめぐるNGOのアドボカシーは、国際政治の場だけにとどまりませんでした。NGOは、金融機関や投資家にも働きかけました。なぜなら、兵器を作る企業の背後には、融資、株式保有、債券購入、投資信託などの金融の流れがあるからです。クラスター弾を本当に減らすには、政府に条約を求めるだけでなく、製造企業に資金が流れ込む仕組みにも目を向ける必要がありました。

この分野で重要な事例がベルギーです。ベルギーは、2006年にクラスター弾を禁止する法律を制定した最初の国であり、2007年にはクラスター弾への投資を禁止した最初の国とされています。Landmine and Cluster Munition Monitorは、ベルギーが2006年にクラスター弾禁止を法制化し、2007年にクラスター弾への投資を禁止した最初の国であると説明しています。【根拠7】

ベルギーでは、Handicap International BelgiumをはじめとするNGOが、金融機関、市民、政治家に対して、クラスター弾製造企業への投資の問題を訴えました。また、Human Rights WatchやPAX、Netwerk Vlaanderenなどの団体も、責任ある投資や金融機関の社会的責任という観点から、クラスター弾製造企業への投資を問題化していきました。こうした働きかけは、法律だけでなく、金融機関の投資方針にも影響を与えました。Arms Control Associationの記事も、ベルギーが2007年にクラスター弾製造企業への投資禁止を法制化し、その後、アイルランドやルクセンブルクなども投資禁止を導入したと説明しています。【根拠8】

ただし、「その動きはフランスやニュージーランドなどにも広がった」と言う場合には、少し慎重である必要があります。国によって、法律として禁止した場合、議会決議や政策方針として示した場合、検討段階にとどまった場合など、制度の強さに違いがあります。したがって、講義では、「ベルギーの事例は、他国の議論や市民社会のキャンペーンにも影響を与えた」と表現しておくのが正確です。

また、企業の行動にも変化が見られました。Singapore Technologies Engineeringは2015年に、クラスター弾をもはや生産していないと発表しました。また、米国のTextronは2016年に、米国で最後に製造されていたクラスター弾の生産を停止すると発表しました。これらの企業行動の背景には、受注減、政治環境、輸出承認の困難、投資家や市民社会からの圧力など、複数の要因があります。したがって、「NGOの働きかけだけで企業が撤退した」と単純に言い切ることはできません。しかし、条約化、投資禁止キャンペーン、金融機関への働きかけ、市民社会による監視が、クラスター弾をめぐる企業活動を続けにくくする環境を作ったことは確かです。【根拠9】

このように、クラスター弾をめぐるNGOのアドボカシー活動は、三つの点で重要です。第一に、現場の被害を調査し、問題を可視化したこと。第二に、ノルウェーなどの中堅国家と連携し、条約という国際ルールの形成に関わったこと。第三に、金融機関や企業にも働きかけ、経済活動の側から兵器の生産を抑える流れを作ったことです。これは、アドボカシー型NGOが、単に政府に要望書を出す存在ではなく、国際法、世論、投資、企業行動を結びつけながら社会を動かす力を持ちうることを示しています。

もちろん、アドボカシーには限界もあります。条約に参加しない国が残り、実際の使用が続くこともあります。被害地域の除去作業や被害者支援には、長い時間と費用が必要です。それでも、クラスター弾禁止条約の成立は、被害者、市民社会、NGO、中堅国家が連携すれば、軍事大国が主導しない形でも国際規範を作り出せることを示しました。持続可能な社会を考えるうえで、この事例は非常に重要です。なぜなら、持続可能性とは、環境や経済だけではなく、人間の安全保障、平和、被害者支援、企業と金融の責任まで含むものだからです。

【キーワード】
クラスター弾に関する条約(Convention on Cluster Munitions, CCM)/クラスター爆弾禁止条約/オスロ・プロセス/Cluster Munition Coalition(CMC)/Human Rights Watch/Handicap International Belgium/Landmine and Cluster Munition Monitor/責任ある投資/投資禁止法/ベルギー/Textron/Singapore Technologies Engineering/人道的軍縮/アドボカシー型NGO

 

【根拠1】CCMは2008年5月30日に採択、2008年12月3日に署名開放、2010年8月1日に発効しました。(clusterconvention.org)

【根拠2】CCMは、クラスター弾の使用、貯蔵、生産、移譲を禁止し、貯蔵弾廃棄、汚染地域除去、被害者支援、透明性報告、国内実施措置なども定めています。(clusterconvention.org)

【根拠3】ICRCは、CCMを、文民と戦闘員の区別、軍事目標への攻撃限定、文民・民用物への配慮という国際人道法の基本規則を補強する条約と説明しています。(icrc.org)

【根拠4】CMCは2003年11月13日にハーグで立ち上げられました。Human Rights Watchは1999年にクラスター弾の使用停止を求めたNGOとして言及されています。(noclusterbombs.org)

【根拠5】ノルウェーは、CCW枠内での取り組みが行き詰まった後、2006年11月にオスロ・プロセスを開始しました。(the-monitor.org)

【根拠6】国連の国際法視聴覚ライブラリは、2007年のオスロ会議、リマ、ウィーン、ウェリントン、2008年5月のダブリン会議を経て、2008年5月30日にCCMが採択されたと説明しています。(legal.un.org)

【根拠7】ベルギーは、2006年にクラスター弾禁止を法制化した最初の国であり、2007年にクラスター弾への投資を禁止した最初の国です。(the-monitor.org)

【根拠8】Arms Control Associationは、ベルギーが2007年にクラスター弾製造企業への投資禁止を法制化し、アイルランドやルクセンブルクも投資禁止を導入したと説明しています。(armscontrol.org)

【根拠9】Singapore Technologies Engineeringは2015年にクラスター弾を生産していないと発表し、Textronは2016年に米国で最後に製造されていたクラスター弾の生産停止を発表しました。(the-monitor.org)