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消費者の権利はどう生まれたのか――ケネディ教書からCIの「8つの権利・5つの責任」まで #放送大学講義録(持続可能な社会と生活第7回その1)

【要約】

 

消費者の権利は、1962年のケネディ大統領による「安全への権利」「知らされる権利」「選ぶ権利」「意見を聞いてもらう権利」から国際的に広まりました。その後、Consumers Internationalは生活の基本的ニーズ、被害救済、消費者教育、健全な環境などを含む8つの権利と、批判的意識、行動、社会的弱者への配慮、環境配慮、連帯という5つの責任を整理しました。日本では2004年の消費者基本法改正により、消費者の権利の尊重と自立支援が基本理念として明確化されました。消費者は単なる買い手ではなく、情報を確認し、声を上げ、社会や環境に配慮して行動する生活者です。こうした考え方は、1985年に採択され、その後改訂されてきた国連消費者保護ガイドラインにもつながっています。

 

ーーーー講義録始めーーーー

 

消費者の権利の誕生と「8つの権利・5つの責任」――ケネディ教書からConsumers Internationalまで

今回は、持続可能な社会を実現する上での消費者・生活者の役割についてお話しします。まず、社会における消費者の権利と責任、そしてその役割についての議論がどのように展開してきたのかを、歴史的に振り返ってみたいと思います。

■ ケネディ大統領が示した4つの権利

出発点は、消費者の権利です。消費者の権利については、1962年3月15日に米国のジョン・F・ケネディ大統領が連邦議会に送った「消費者の利益保護に関する特別教書(Special Message to the Congress on Protecting the Consumer Interest)」の中で示した、次の4つの権利が、その後の国際的な議論に大きな影響を与えました。

① 安全への権利
② 知らされる権利
③ 選ぶ権利
④ 意見を聞いてもらう権利

ここで大事なのは、ケネディ大統領が消費者を単に「商品を買う人」としてではなく、政策的に守られるべき主体、そして社会の中で声を持つ主体として位置付けたことです。これは、のちの各国の消費者政策や、日本における消費者基本法の考え方にもつながっていきます。日本では1968年に消費者保護基本法が制定されましたが、消費者の権利が基本理念として明確に位置付けられたのは、2004年に同法が消費者基本法へ改正されてからです。なお、1975年にはフォード大統領によって、⑤消費者教育を受ける権利が追加されたと整理されています。

■ Consumers Internationalが提唱した8つの権利と5つの責任

その後、これらの権利をもとに、「消費者の8つの権利と5つの責任」という考え方が広く知られるようになりました。これを提唱したのは、各国の消費者団体を結ぶ国際的な組織であるConsumers International、略称CIです。日本語では「国際消費者機構」と呼ばれます。

ケネディ大統領が示した4つの権利に、生活の基本的ニーズが満たされる権利、被害の救済を受ける権利、消費者教育を受ける権利、健全な環境で暮らす権利が加えられ、消費者の8つの権利として整理されました。消費者庁の資料では、CIの「8つの権利と5つの責任」は1982年のものとして紹介されています。ただし、教材や解説によっては、1980年に8つの権利が整理され、1982年に5つの責任を含む形で示されたと説明されることもあります。ここでは、年次を細かく断定するよりも、1980年代初頭に国際的な消費者運動の中で、権利だけでなく責任も含めた枠組みとして整えられていった、と理解しておくのがよいでしょう。

消費者の8つの権利は、一般に次のように整理されます。

① 生活の基本的ニーズが満たされる権利
② 安全への権利
③ 知らされる権利
④ 選ぶ権利
⑤ 意見を聞いてもらう権利
⑥ 被害の救済を受ける権利
⑦ 消費者教育を受ける権利
⑧ 健全な環境で暮らす権利

ここに加えて、消費者の5つの責任も示されました。消費者の5つの責任として挙げられているのは、次のとおりです。

① 批判的な意識を持つ責任
② 主張し行動する責任
③ 社会的弱者へ配慮する責任
④ 環境へ配慮する責任
⑤ 消費者として連帯する責任

■ 権利と責任は表裏の関係

なお、権利と責任は表裏の関係にあります。例えば、消費者の権利を守るためには、消費者自身が広告や表示をうのみにせず、批判的な意識を持ち、必要な情報を確認し、問題があれば声を上げることが大切です。逆に、社会や環境への責任を果たす行動をとるためには、消費者が十分な情報を得る権利や、消費者教育を受ける権利が欠かせません。

このように、権利と責任は対立するものではありません。権利があるからこそ、消費者は自分の生活を守ることができます。そして責任を自覚するからこそ、消費者は社会全体をよりよい方向へ動かす主体にもなれます。持続可能な社会を考えるとき、消費者は単なる「買い手」ではありません。何を選び、何を問い、どのように行動するかを通じて、市場や政策、企業活動に影響を与える生活者でもあるのです。

次回は、こうした消費者の権利と責任の議論が、グローバルな政策文書にどのように反映されていったのかを、1985年に国連総会で採択され、その後1999年と2015年に改訂・拡張されてきた国連消費者保護ガイドラインの変遷を通じて見ていきます。