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サステナブルファイナンスとは何か――ESG投資・SRI・インパクト投資をわかりやすく整理する #放送大学講義録(持続可能な社会と生活第9回その1)

【要約】

 

サステナブルファイナンスとは、持続可能な社会の実現に向けて、投資・融資・債券・企業開示・市場制度など金融の仕組み全体を活用する考え方である。SRIは社会的責任投資、Responsible InvestmentはESG課題を投資判断や企業との対話に組み込む責任投資、ESG投資は環境・社会・ガバナンスを重視する投資手法を指す。インパクト投資は財務的リターンと測定可能な社会的・環境的成果を同時に追求し、コミュニティ投資は地域課題の解決に資金を向ける。これらは重なり合いながら、SDGs達成に必要な資金を動員し、社会経済の転換を支える役割を担っている。

 

ーーーー講義録始めーーーー

 

サステナブルファイナンスとは何か
―定義と用語の整理―

今回は、持続可能な社会を実現するために、投資や金融がどのような役割を果たすのかについてお話しします。前回は企業の役割の重要性をお話ししましたが、その企業に対して資金を提供する投資家や金融機関の影響力と役割も、同じように重要となります。企業は自分たちだけで事業を動かしているわけではありません。株式市場や債券市場から資金を調達することもあれば、銀行などの金融機関から融資を受けることもあります。したがって、どのような企業や事業に資金が流れるのか、どのような活動が投資家や金融機関から評価されるのかは、社会全体の方向を大きく左右します。このように、持続可能な社会の実現に資する投資や融資、債券、金融市場の制度、企業情報の開示、金融機関のリスク管理などを広く含む金融のあり方を、サステナブルファイナンスといいます。言い換えると、投資や融資を行う際に、財務面だけではなく、環境、社会、ガバナンスへの対応も考慮し、持続可能な発展を金融市場の側から促進していく動きです。近年、この考え方はますます重要視されてきています。特にSDGsの達成には大きな資金の投入が必要であり、開発途上国や新興国では、SDGs達成に必要な資金と実際に動員されている資金との間に、年間数兆ドル規模のギャップがあると指摘されています。そのため、社会経済を大きく変革する推進力として、サステナブルファイナンスは欠かせないとの認識が強まっています。

社会や環境への対応なども考慮して投資先を決定する投資法を表す用語としては、以前から責任投資(Responsible Investment)という言い方がありました。また、社会的責任投資(Socially Responsible Investment)の頭文字をとったSRI(エスアールアイ)という言葉も長く使われてきました。SRIは、歴史的には宗教的・倫理的な価値観に基づいて、武器、たばこ、ギャンブルなど、望ましくないと考えられる事業を投資対象から外すような実践と関係して発展してきました。ただし、現在の責任投資は、単に「投資しない企業を選ぶ」という消極的な方法だけを意味するものではありません。企業の環境対応、労働慣行、人権への配慮、地域社会との関係、取締役会の構成、情報開示、株主との対話などを投資判断に組み込み、投資家として企業に働きかけていくことも含まれます。その後、SRIのSをSocialからSustainableへと読み替え、Sustainable and Responsible Investmentという名称も用いられるようになり、社会的責任だけでなく、長期的な持続可能性との結びつきを強調する言い方が広がってきました。そして近年では、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を連ねたESG投資という呼称も一般化してきており、とりわけビジネスと投資の世界で、企業と投資家を中心に頻繁に用いられるようになりました。なお、英語としては、EnvironmentではなくEnvironmental、Social、Governanceと説明されることも多く、いずれの場合も、環境・社会・ガバナンスの三つの観点を投資分析や意思決定に組み込むという点が重要です。

その他、インパクト投資やコミュニティ投資など、投資の社会的・環境的な成果をより明確に意識した投資スタイルも広がってきています。インパクト投資とは、財務的なリターンを求めながら、同時に、肯定的で測定可能な社会的・環境的インパクトを生み出すことを意図して行う投資です。したがって、単に「社会に良さそうな企業に投資する」というだけではなく、どのような課題に対して、どのような変化を生み出すのかを意識し、その成果を測定しようとする点に特徴があります。コミュニティ投資は、地域や、通常の金融では十分に資金が届きにくいコミュニティに資金を振り向け、住宅、雇用、教育、医療、生活支援、地域産業などの課題解決を支える投資のあり方です。このように、持続可能な社会作りを目指す投資手法は発展を遂げ、多岐にわたって実践されており、さまざまな用語が使われています。ただし、これらは互いに完全に切り離されたものではありません。SRI、責任投資、ESG投資、インパクト投資、コミュニティ投資は、実務上重なり合って用いられることもあります。本講義では、これらの投資や金融の動きを広く包含する呼称として、サステナブルファイナンスという言葉を用いることにしたいと思います。

◆ 主な用語の整理

 

PNG表:主な用語の整理(文字大きめ版)