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発達心理学の全体像がわかる――時間軸と発達領域から生涯発達を立体的に捉える #放送大学講義録(発達心理学特論第1回その3)

【要約】

 

人の発達は、受胎から老年期までの時間軸と、身体、認知、記憶、言語、情動、自己、愛着、社会性、道徳性などの発達領域を重ねて捉えられる。発達段階の境界は便宜的で、各領域は独立せず、生涯を通じて相互に関係しながら変化・維持される。本講義では、前半に領域別、後半に発達段階別の特徴を学び、最終回に発達上の困難と支援を考える。

 

ーーーー講義録始めーーーー

 

発達を捉える2つの軸――時間軸と発達領域、講義全体の構成

人の発達は、受胎に始まり、出生前期、新生児期、乳児期、幼児期、児童期、青年期、成人期、老年期を経て死に至るまでの時間軸に沿った変化と、それぞれの時期に見られる複数の発達領域の変化とを重ね合わせることによって捉えることができます。発達心理学では、発達を子どもが大人になるまでの変化だけに限定せず、受胎から死まで、生涯にわたって生じる変化と持続として考えます。

ここでいう時間軸と発達領域は、人の発達を整理し、理解しやすくするための2つの軸です。この2つだけが発達を引き起こす原因だということではありません。実際の発達には、遺伝的・生物学的条件、家庭、学校、友人関係、文化、社会制度、歴史的な時代、本人の経験や選択など、さまざまな要因が関係しています。そのため、この2つの軸は、複雑な発達を見通しよく捉えるための枠組みとして用いるものだと考えてください。

これを踏まえて、今回の講義は全体15回を次のように組み立てています。

初めの第1回と第2回では、発達的変化に関わる全体的な問題を取り上げます。発達とは何か、発達をどのような理論や方法によって捉えるのか、生涯を通した変化を考える際にどのような視点が必要なのかを整理します。

その後、前半の第3回から第8回では、人の発達を捉える際に重要な発達領域のいくつかに焦点を当てて見ていきます。認知・知能、記憶、言語とコミュニケーション、情動、自己、愛着と対人関係、社会性、道徳性などです。これらは、それぞれ独立して発達するものではありません。例えば、言語の発達は認知や記憶、対人関係と深く関係します。情動の発達は、自己理解、愛着、社会性とも関係します。ある領域の変化が別の領域の変化を促したり、反対に制約したりすることもあります。

また、人の発達全体を捉えるためには、身体、脳、感覚、運動、健康などの身体的発達も欠かすことができません。発達心理学では、発達領域を大きく身体的発達、認知的発達、心理社会的発達に分けて整理することがありますが、実際にはこれらも相互に密接に関係しています。

後半の第9回から第14回は、第8回までに見た各領域の発達を、時間軸の中で、それぞれの時期の特徴として順に見ていきます。乳児期、幼児期、児童期、青年期、成人期、老年期の順です。新生児期については、乳児期の初期として扱う場合もありますが、出生直後には独自の身体的・心理的特徴があるため、必要に応じて乳児期の中で区別して説明します。

なお、乳児期、幼児期、児童期、青年期、成人期、老年期という発達段階の区分は、人間の発達を理解しやすくするための便宜的なものです。それぞれの段階が、ある年齢になった瞬間に明確に切り替わるわけではありません。どこまでを幼児期とし、どこからを児童期とするか、あるいは青年期と成人期の境界をどこに置くかは、理論、研究目的、文化、教育制度、社会制度などによって異なります。成人期についても、成人移行期、成人前期、成人中期、成人後期など、さらに細かく分ける場合があります。

この2つの方向から見ていくことで、時間を縦糸に、発達領域を横糸とした、人の発達の全体像を考えることができます。縦糸は、受胎から老年期まで、人がどのような時間を歩んでいくのかという方向です。横糸は、身体・運動、認知、記憶、言語・コミュニケーション、情動、自己、愛着・対人関係、社会性、道徳性などが、それぞれどのように変化し、維持されるのかという方向です。

縦糸と横糸が交差するところには、その時期の、その領域における発達の特徴があります。例えば、乳児期の言語・コミュニケーション、幼児期の自己理解、児童期の道徳性、青年期の対人関係、成人期の認知、老年期の記憶といった組み合わせを考えることができます。

ただし、縦糸と横糸は、現実には完全に別々のものではありません。また、各領域は、それぞれ同じ速さや同じ方向に変化するわけでもありません。ある時期には身体的発達が顕著であり、別の時期には自己や対人関係の変化が大きな意味を持つことがあります。同じ人の中でも、ある能力は向上し、別の能力は維持され、さらに別の能力は低下することがあります。

このように時間軸と発達領域を重ね合わせて見ることによって、人の発達の全体像だけでなく、そこに関わる問題や支援へのヒントについても、一体的に理解できるようになると考えます。発達上の困難が見られたときにも、単にその人の年齢だけを見るのではなく、どの発達領域に困難が現れているのか、ほかの領域にはどのような強みがあるのか、これまでどのような経験をしてきたのか、周囲の環境がどのように関係しているのかを考える必要があります。

そして最後の第15回では、第14回までの内容を踏まえて、発達の中で出会う困難にどう向き合えばよいのかを考えていきたいと思います。発達上の困難を、本人の能力や努力だけの問題として考えるのではなく、本人と環境との関係、利用できる支援、周囲との相互作用、生涯の中での変化の可能性を含めて捉えていきます。

こうした時間軸に沿った変化と、発達の各領域における変化という2つを重ね合わせて見ていくと、次のようなイメージで捉えることができます。

発達の時間的な変化は、受胎に始まり、出生前期、新生児期、乳児期、幼児期、児童期、青年期、成人期、老年期という順に進んでいきます。ただし、出生前発達は厳密には胚種期、胚子期、胎児期などに分かれます。したがって、「胎児期」を出生前発達全体と同じ意味で用いるのではなく、ここでは講義上、出生前期という広い表現を用います。

それぞれの時期には、身体・運動、認知、記憶、言語・コミュニケーション、情動、自己、愛着・対人関係、社会性、道徳性といった発達領域における変化と持続があります。

例えば、認知や記憶は、乳幼児期や児童期だけで発達が終わるものではありません。青年期、成人期、老年期にも、獲得、維持、再編成、低下などの変化が見られます。言語も、幼児期に話せるようになれば完成するわけではなく、児童期以降も語彙、文法、文章理解、対話能力、社会的状況に応じた言葉の使い方などが変化していきます。

情動や自己、愛着、対人関係、社会性、道徳性についても同様です。愛着は乳幼児期に重要な基礎が形成されますが、その後の友人関係、恋愛関係、家族関係、親子関係、介護関係などにも関わります。成人した子どもと高齢の親との関係の中にも、愛着に関わる問題が現れます。

身体的・生理的な発達についても、成長期だけに見られるものではありません。青年期から成人期への移行では、身長や体重のように目立つ変化が少なくなっても、身体機能や健康状態は変化し続けます。成人期、老年期にも、身体、脳、感覚、運動、健康に関わる変化があります。

したがって、それぞれの時期の特徴は、いくつかの領域の特徴を機械的に足し合わせることによってできるのではありません。身体、認知、記憶、言語、情動、自己、愛着、対人関係、社会性、道徳性などの複数の領域が相互に関係し、その人の生活環境や経験とも結びつきながら、その時期の発達的特徴が形づくられます。

今回の授業では、初めに発達領域ごとの特徴を横断的に学び、その後に、それらの領域が各発達段階でどのように現れるのかを時間軸に沿って学びます。領域から見る方向と、時期から見る方向を行き来しながら、人の発達を立体的に捉えていきたいと思います。

[図:発達の時間軸〈縦糸〉と発達領域〈横糸〉のイメージ]

画像を出力する

この図の縦方向は、出生前期から老年期までの時間軸を示しています。横方向は、身体・運動、認知、記憶、言語・コミュニケーション、情動、自己、愛着・対人関係、社会性・道徳性などの発達領域を示しています。

各欄に置かれた点は、それぞれの時期に、それぞれの領域が関係していることを表しています。ただし、この点は、すべての領域がすべての時期に同じ程度に変化することや、同じ重要性を持つことを意味しているわけではありません。また、発達段階の境界は便宜的なものであり、各領域は互いに独立せず、相互に関連しながら生涯を通じて変化し、あるいは維持されます。

このように、縦糸としての時間軸と、横糸としての発達領域を組み合わせることによって、人の発達の全体像を捉えることができます。さらに、その人が置かれている家庭、学校、職場、地域、文化、歴史的時代などを重ねて見ることで、一人ひとりの発達を、より具体的かつ多面的に理解できるようになります。