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発達心理学の研究方法を徹底解説――観察法・横断研究・縦断研究・コホート研究の違い #放送大学講義録(発達心理学特論第1回その7)

【要約】

 

発達研究には、観察、実験、面接、質問紙などのデータ収集法、量的・質的・混合研究法、横断・縦断・コホート研究などがある。Darwinの1877年の乳児観察は初期の代表例だが、科学的観察には体系的な記録が必要である。横断研究は異なる年齢集団を一時点で比較し、縦断研究は同じ対象を複数時点で追跡する。コホート研究は共通特性を持つ集団について要因と結果の関連を調べるもので、前向き・後ろ向きの設計がある。各方法には長所と限界があり、発達を受胎から死までの時間軸、複数の発達領域、社会文化的文脈の中で捉え、異なる方法による知見を積み重ねる必要がある。

 

ーーーー講義録始めーーーー

 

発達研究の方法――観察から縦断研究・コホート研究まで、そしてまとめ

人の発達を捉える研究方法には、さまざまなものがあります。その中でも、観察研究は最も基本的で重要なアプローチの一つです。人という存在を丁寧に観察し、その行動や、行動が起こった状況、時間的な経過を記録に残すことは、多くの発達研究の重要な出発点になります。

ただし、日常生活の中で何となく人を見ることと、科学的な観察とは同じではありません。科学的な観察を行うためには、誰を、どの場面で、どのくらいの時間、どのような基準によって観察するのかを定め、できるだけ体系的に記録する必要があります。複数の観察者が記録する場合には、同じ行動を同じように判断できているかという、観察者間の一致についても検討しなければなりません。

また、すべての発達研究が観察から始まるわけではありません。既存の理論や先行研究から仮説を立て、実験、質問紙、面接、心理検査、行政記録、生理指標、脳機能測定などを用いて検討する研究もあります。したがって、観察は唯一の出発点ではありませんが、人が実際にどのように行動し、変化しているのかを知るための基本的な方法だといえます。

乳児の観察研究の初期の代表例として、Charles Darwinの記録が知られています。Darwinは1877年に、“A Biographical Sketch of an Infant”という論文を学術誌『Mind』に発表しました。この論文は、第2巻第7号の285頁から294頁に掲載されています。

Darwinは、主として長男William Erasmus Darwinが1839年に生まれた後の行動を、継続的に記録していました。この記録をもとに、反射、感覚、情動表出、恐れ、怒り、愛情、模倣、連合、言語、道徳感情の萌芽などについて論じました。

これは、現代の大規模な乳児研究と同じ方法によるものではありません。一人の子どもを中心とした観察であり、父親が研究者でもあるという点から、観察対象の少なさや観察者の期待による偏りなどに注意が必要です。しかし、乳児の行動を時間に沿って細かく記録し、そこから心の発達を考えようとした初期の研究として、その後の児童研究や発達心理学に影響を与えました。

ここで、Darwinの論文が、乳児の「無意識」を直接記録したものだと理解するのは適切ではありません。乳児の内面を直接測定したのではなく、観察された表情や行動、発声、反応の変化から、感情や認知の発達を推論した論考です。

研究方法を考えるときには、いくつかの整理の仕方があります。例えば、どのような方法でデータを得るか、どのような性質のデータを分析するか、誰をどの時点で調べるか、そして何を明らかにすることを目的とするか、という観点から整理することができます。

ただし、この四つは互いに排他的な分類ではありません。一つの研究が、観察法を用いた縦断研究であり、同時に量的研究でもあるということがあります。また、面接による質的研究を、特定の出生コホートに対して繰り返し行うこともできます。研究方法の名称は、データ収集法、時間的設計、分析法、研究目的など、異なる側面を表していることに注意してください。

まず、どのようにデータを得るかという観点から、観察法、実験法、面接法、質問紙法、検査法などを考えることができます。

観察法には、家庭、保育所、学校、公園など、日常の生活に近い状況で行動を観察する自然観察があります。その一方で、研究者が課題や場面をあらかじめ設定し、その状況でどのような行動が現れるかを記録する構造化観察もあります。

したがって、観察法は、自然な状況だけで行われるわけではありません。例えば、乳児と養育者が一定時間遊ぶ場面を研究室に設定し、その間の視線、接触、発声、応答などを観察する研究もあります。

実験法では、研究者がある条件、すなわち独立変数を意図的に変化させ、その違いが行動や成績などの従属変数にどのような影響を与えるかを調べます。比較する条件を設け、それ以外の条件をできるだけ統制することで、原因と結果について検討します。

ただし、発達研究では、倫理上の理由から実験的に操作できない要因が多くあります。虐待、貧困、災害、疾病、養育の欠如などを研究目的で生じさせることはできません。そのような問題については、自然に生じた状況を観察したり、既存の記録を利用したり、統計的に関連を検討したりする必要があります。

面接法は、研究参加者に質問し、その経験、考え、感情、意味づけなどを聞き取る方法です。面接は対面だけでなく、電話やオンラインで行われることもあります。

面接には、あらかじめ定めた質問を同じ順序で行う構造化面接、主要な質問項目を準備しながら回答に応じて順序を変えたり、質問を追加したりする半構造化面接、話題を比較的自由に展開する非構造化面接などがあります。

半構造化面接では、ある程度共通した方向性を保ちながら、相手の状況や回答に応じて質問内容や順序を変え、必要な追加質問を行います。これによって、複数の参加者の回答をある程度比較しながら、それぞれの経験の背景や意味を詳しく把握できます。公衆衛生分野の調査でも、あらかじめ準備した半構造化された質問を基礎に、回答を掘り下げる面接が用いられています。

次に、どのような性質のデータを分析するかという観点から、量的研究、質的研究、混合研究法を考えることができます。

量的研究では、反応時間、得点、回数、身長、質問紙の評定値など、数値として表されたデータを用い、統計的な方法によって集団の傾向、差、関連、予測などを検討します。

質的研究では、面接で語られた経験、観察記録、会話、文章、映像などを対象に、その意味、構造、経過、文脈などを詳しく分析します。

ただし、量的研究と質的研究の違いを、単に「数量化できるデータ」と「数量化できないデータ」の違いとするのは十分ではありません。質的データについても、特定のカテゴリーが何回現れたかを数える場合があります。一方、量的な数値についても、その数値が本人の生活の中で何を意味するかを考える必要があります。

両者の違いは、データの形だけでなく、何を明らかにしようとするのか、どのような方法で分析し、どのような形で結論を導くのかという研究の考え方にも関係します。

量的研究と質的研究の長所を組み合わせる方法が、混合研究法、英語ではmixed-methods researchです。APAは、研究対象をより十分に理解するために、量的研究と質的研究の要素を組み合わせる研究として説明しています。

例えば、質問紙を使って多数の人の傾向を量的に調べた後、その中の一部の人に面接し、数値だけではわからなかった経験の背景を質的に明らかにすることができます。反対に、最初に面接を行い、そこで見つかったテーマをもとに質問紙を作成して、多数の対象者に調査することもあります。

ただし、量的データと質的データを同じ研究で集めるだけでは十分ではありません。混合研究法では、研究課題、研究設計、分析、結果の解釈のいずれかにおいて、両方の結果をどのように結びつけるかが重要になります。

3つ目に、誰をどの時点で調べるのかという、時間的な研究設計について見ていきます。発達研究で代表的なものに、横断研究と縦断研究があります。

横断研究とは、一つの時点、または比較的短い期間に、異なる年齢や異なる特徴を持つ複数の集団を調べ、比較する研究です。例えば、3歳児、4歳児、5歳児の違いを調べたい場合に、それぞれの年齢の子どもを同じ時期に調査します。横断研究は、異なる年齢集団を同じ時点で比較する研究設計です。

横断研究は、比較的短期間で複数の年齢を調べることができ、参加者の脱落も起こりにくいという利点があります。ただし、そこでわかるのは、調査した時点における年齢集団間の違いです。同じ人が3歳から4歳、4歳から5歳へと、どのように変化したかを直接追跡しているわけではありません。

また、年齢集団の違いには、年齢そのものだけでなく、生まれた時代、受けた教育、家庭環境、社会状況などの違いが含まれる可能性があります。これをコホート効果と呼びます。したがって、3歳児と5歳児の違いを、すべて2年間の発達によって生じたものだと断定することはできません。

縦断研究とは、同じ個人または同じ集団を、複数の時点で繰り返し調べる研究です。例えば、ある子どもたちを3歳の時点で調べ、同じ子どもたちを4歳、5歳でも調査します。

縦断研究では、同じ人の中で何が変化し、何が維持されたかを直接検討できます。年齢が上がるにつれて全員が同じように変化するのか、変化の仕方に個人差があるのか、早い時期の特徴が後の状態とどのように関連するのか、といった問題を調べることができます。縦断研究は、同一の対象や変数について複数時点のデータを収集する研究であり、数週間から数十年まで、期間は研究によって異なります。

ただし、縦断研究には時間と費用がかかります。また、引っ越し、参加意欲の低下、疾病、死亡などによって、途中で調査に参加できなくなる人が出てきます。これを参加者の脱落、英語ではattritionと呼びます。

特定の特徴を持つ人が多く脱落すると、最後まで残った参加者だけを調べた結果に偏りが生じることがあります。さらに、同じ課題を繰り返すことで参加者が課題に慣れることや、研究期間中に社会や教育制度そのものが変化することも考慮しなければなりません。

横断研究と縦断研究の長所を組み合わせるために、複数の年齢集団を同時に調査し、それぞれを追跡する系列研究またはコホート系列研究が用いられることもあります。これによって、年齢の影響、測定時期の影響、出生コホートの影響を、ある程度区別して検討することができます。

誰をどの時点で調べるかに関係する研究として、コホート研究もあります。コホート、英語ではcohortとは、出生年、居住地域、職業、特定の経験や曝露など、ある共通する特徴を持つ集団を意味します。

コホート研究では、共通する特徴を持つ集団を定め、その集団における要因と、その後に生じる発達、健康、行動などの結果との関連を調べます。CDCは、観察的なコホート研究について、異なる曝露を持つ人々を集団として捉え、その後、疾病や健康状態が生じるかを追う研究として説明しています。

コホート研究は長期間にわたって行われることが多く、縦断研究の一種として扱われる場合があります。しかし、単に特定集団について長期間調査すれば、すべてコホート研究になるというわけではありません。どのような共通特性によって集団を設定し、どの要因と結果の関係を調べるのかが重要です。

また、コホート研究には、研究開始後、将来へ向かって対象者を追跡する前向きコホート研究と、すでに蓄積されている過去の記録から対象集団を設定し、曝露と結果の関係を再構成する後ろ向きコホート研究があります。CDCも、コホート研究には前向き研究と後ろ向き研究があると説明しています。

例えば、ある地域や一定期間に生まれた子どもを対象に出生コホートを構成し、アレルギーに関する調査を定期的に行うことができます。その地域のすべての赤ちゃんを対象とする場合もありますが、一定の条件によって選ばれた標本を対象とする場合もあります。

出生時の健康状態、家族歴、食事、住環境、動物との接触、大気環境などを記録し、その後のアレルギーの発症時期、症状、経過などを追跡すれば、どのような要因が発症や悪化と関連しているかを調べることができます。

コホート研究では、ある結果が新たに発生する割合、すなわち発生率を調べたり、複数の要因と結果との時間的な関係を検討したりできます。CDCの説明でも、曝露の異なる集団を追跡し、その後の疾病発生を比較することが、コホート研究の基本として示されています。

ただし、観察的なコホート研究で関連が見つかったからといって、その要因が結果を直接引き起こしたと直ちに断定することはできません。調べた要因と結果の両方に関係する第三の要因、すなわち交絡要因や、参加者の選ばれ方、測定誤差などが影響している可能性があります。

最後に、何を目的とするのかという観点から研究を整理してみましょう。まず、ある年齢の人にどのような特徴が見られるのか、ある問題を経験している人がどの程度いるのかなど、現象の状態や分布を明らかにする記述研究があります。「実態研究」という表現が用いられることもありますが、一般的には記述研究、英語ではdescriptive researchなどと呼ばれます。

次に、二つ以上の変数がどのように関連しているかを調べる研究があります。例えば、睡眠時間と学業成績、養育者の応答性と子どもの情動調整、孤立感と抑うつ傾向などの関連を調べます。

さらに、ある要因がその後の状態を予測できるかを検討する研究、原因と結果の関係を検討する研究、理論から導かれた仮説を検証する研究などがあります。

研究によって一定の知見が得られた場合には、それをもとに教育、心理支援、医療、福祉、環境調整などの介入を開発することがあります。介入研究では、研究者が意図的に支援やプログラムを実施し、その影響を調べます。

その介入によって、対象となる行動、能力、症状、生活の質などが実際に改善したかを調べるものが、介入評価研究または効果評価研究です。効果を判断するためには、介入を受けていない集団や別の介入を受けた集団との比較、介入前後の測定、無作為割付などが用いられることがあります。

ただし、一定の関連が確認されたからといって、すぐに介入へ移れるわけではありません。介入を行うためには、安全性、倫理性、対象者の同意、費用、実施可能性、期待される利益と不利益などを慎重に検討する必要があります。

また、発達研究全体について、「現段階では介入に関する明確な結論が得られていない」とまとめることはできません。すでに有効性がある程度確認されている支援や教育方法もあります。その一方で、どの介入が、どのような人に、どの年齢で、どのような環境のもとで有効なのかが十分にわかっていない問題も数多くあります。

したがって、実態を丁寧に記述し、関連や発達過程を検討し、それをもとに介入を設計し、その介入の効果と限界を評価するという研究の積み重ねが重要になります。期待した効果が得られなかったという結果も、次の研究やより適切な支援を考えるための重要な知見です。

今日は、発達とは何か、つまり発達をどのように捉えるのかという話をしました。人の発達は、望ましい能力や知識だけを一方向に積み重ねていく過程ではありません。獲得と喪失、変化と持続、成長と再編成などが組み合わさりながら進むものです。

獲得を単純にプラス、喪失を単純にマイナスとみなすこともできません。ある役割を獲得することで、別の可能性を手放すことがあります。反対に、自分にとって不適応な行動や考え方を失うことが、望ましい発達につながる場合もあります。

さらに、人の発達を捉えるときには、受胎から死に至るまでの生涯にわたる変化と持続という視点を持つことが重要です。同じように見える行動であっても、どの時期に、どのような生活史や環境の中で生じたのかによって、異なる意味を持つことがあります。

短い期間の変化を見る研究と、数年、数十年という長い期間を通して変化を見る研究では、見えてくるものが異なります。ある時点では困難に見えた経験が、後の発達の中で別の意味を持つこともあります。反対に、一時的には問題がないように見えても、長期的には別の影響が現れる場合があります。その意味で、生涯を視野に入れて発達を考えることが大切です。

発達の理論家として、Freud、Piaget、Havighurst、Erikson、Baltesらの考え方を取り上げました。Freudは幼児期の欲動と無意識的葛藤、Piagetは子どもによる知識の構成と認知構造の変化、Havighurstは人生の各時期に現れる発達課題、Eriksonは生涯にわたる心理社会的危機、Baltesは発達の多方向性、獲得と喪失、可塑性、歴史的・文化的文脈を重視しました。

これらの理論は、発達の同じ側面を説明しているわけではありません。また、いずれか一つの理論だけで人間の発達の全体を説明できるわけでもありません。それぞれの理論が、どのような発達現象に注目し、何を説明でき、どのような歴史的・文化的限界を持つのかを比較することが重要です。

なかでもEriksonの視点は、乳児期から老年期までの各時期に、社会との関わりの中で異なる心理社会的課題が現れることを示した点で、生涯発達を考える一つの重要な手がかりになります。ただし、生涯発達を理論化したのはEriksonだけではなく、HavighurstやBaltesをはじめ、ほかの研究者の理論と合わせて理解する必要があります。

3つ目に、発達研究の方法について見てきました。発達に関するデータを得るということは、単に子どもたちの「今」の状態を記録することではありません。

ある能力や行動が、どのような過程を経て現れたのか、その後どのように変化するのか、個人差がどのように生じるのか、家庭、教育、文化、歴史的時代などの環境とどのように関係するのかを検討することが必要です。

子どもの発達を研究する場合にも、その時点の年齢差だけでなく、同じ人の変化、出生コホートや時代の影響、発達領域間の関連などを考慮しなければなりません。成人期や老年期の研究についても同様です。

そうした意味で、発達の時期を時間軸として捉えることと、身体、認知、言語、情動、自己、愛着、対人関係、社会性などの発達領域を捉えることは、極めて重要です。

時間軸を縦糸、発達領域を横糸として組み合わせることで、ある時期の一つの能力だけを見るのではなく、人が生涯の中で、複数の領域にわたってどのように変化し、何を維持し、何を獲得し、何を失っていくのかを立体的に捉えることができます。

さらに、その人が置かれている家族、学校、職場、地域、文化、社会制度、歴史的時代を重ねて見ることで、一人ひとりの発達をより具体的に理解できます。

発達研究では、どの方法が常に最も優れているということはありません。観察法、実験法、面接法、質問紙法、横断研究、縦断研究、コホート研究、量的研究、質的研究、混合研究法には、それぞれ異なる長所と限界があります。

研究課題に応じて適切な方法を選び、一つの研究だけで結論を急がず、異なる方法による知見を積み重ねていくことが、人の発達をより確かに理解し、必要な支援へつなげていくために大切だと考えます。