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MYCINとエキスパートシステムの進化(AIシステムと人・社会との関係第2回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

マイシン(MYCIN)について

マイシンの開発背景

マイシンは、1970年代にスタンフォード大学の大学院生であるエドワード・ショートリフらを中心に開発されました。彼らは、医学部の専門家たちに感染症診断に関する知識をインタビューし、その知識を**「もし〜ならば〜」という形式のルール(IF-THENルール)**としてコンピュータに表現することを試みました。

このルールを用いて、感染症の診断や病原菌の同定、薬の投与法を決定するエキスパートシステムが開発され、最終的に**診断精度70%**を達成しました。当時、医師の診断精度が約80%とされており、マイシンは専門家に迫る性能を持つシステムとして評価されました。


マイシンの成功の要因

マイシンの性能は、内部に表現された知識(IF-THENルール)の質と量によって決まると言えます。このシステムでは、以下のプロセスが重要でした:

  1. 専門家の知識の収集
    感染症診断に関する知識をインタビュー形式で獲得し、それをルールとして形式化。

  2. 知識の表現形式

    • 英語による表現(自然言語)
    • コンピュータで処理可能な形式(記号表現)への変換。

図表の説明

印刷教材の図2-1には以下の内容が示されています:

  1. 上段:英語で記述された感染症診断ルールの例。
    • 例:IF the patient has a fever AND a rash, THEN consider measles.
  2. 中段:上記を日本語に翻訳した例。
    • 例:もし患者が発熱しており、発疹があるなら、麻疹を考慮する。
  3. 下段:記号表現に変換された形式(コンピュータ内部で処理可能な形式)。
    • 例:IF fever = true AND rash = true THEN diagnosis = measles

推論エンジンと自然言語処理の課題

マイシンのようなエキスパートシステムには、推論エンジンと呼ばれるソフトウェアが使用されます。この推論エンジンは、条件部(IF)と結論部(THEN)で構成されるルールを基に診断を行います。

  • 条件部(条件節):ルールの「もし〜ならば」の部分。
  • 結論部(結論節):ルールの「〜する」の部分。

しかし、コンピュータは自然言語を完全に理解することが困難です。したがって、ルールは自然言語から記号表現に変換され、コンピュータが処理可能な形式で表現されます。


意義と課題

マイシンは、エキスパートシステムの性能が知識の質と量に依存することを示した画期的なシステムです。しかし、自然言語処理の限界により、知識を記号表現に変換する過程が必要でした。この課題は現在でもAI研究の重要なテーマとして取り組まれています。