F-nameのブログ

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自然現象を数学で捉える基礎(初歩からの物理第2回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

先生、「関数が便利」というのはよくわかったのですが、他に知っておくと良い関数にはどんなものがありますか?

「そうですね。幅広く知っておく必要はありませんが、指数関数と三角関数、この2つがわかっていれば十分役立つでしょう。では、三角関数の特徴について少し説明しましょう。今、この装置のスイッチを入れると回転します。上から見ると円運動に見えますが、横から見ると往復運動、つまり振動しているように見えますよね?」

そうですね、往復している運動に見えます。

「そうです。実は円運動と振動は密接に繋がっていて、円運動を横から見るとバネの振動運動と同じように見えるのです。このため振動は三角関数で表され、三角関数には円周率(π)が頻出します。πは円周の比率を表すもので、円周を1周すると2πです。ですから、三角関数にはよくπが登場するのです。」

ここまで微分積分の考え方と便利な関数について見てきましたが、他に知っておくべき情報はありますか?

「もう一つ重要な点があります。物理では大きさだけでなく、向きを持つ量も非常に大切です。こちらの天気図をご覧ください。矢印は風の強さと向きを示していますね?」

はい、風向と風速ですね。

「そうです。風速には強さだけでなく南東や北西といった向きの情報も含まれます。このように大きさと向きを合わせ持つ量をベクトルと呼び、物理において非常に重要です。」

そういえば、先生、「一定のスピードで走っている車には加速度があるか?」と聞かれたらどう答えればいいのでしょうか?

「スピードが一定であれば加速度はないように思えますが、もし進行方向が変わると加速度が発生します。これは、速度には向きも含まれるためです。例えばカーブを曲がる車はスピードが一定でも向きが変わるので加速度があることになります。このようにベクトルの考え方が重要になってくるのです。詳細は教科書にも書かれていますので、ぜひご参照ください。」

それでは、今回のお話をまとめましょう。

  1. 瞬間を微分で捉えることで運動が理解できる。
  2. 円運動は横から見ると振動に見え、三角関数で表される。
  3. 大きさと向きを持つ量はベクトルで表すことができる。

「特に前半で強調しましたが、瞬間を捉えるという発想は物理にとって画期的でした。そして、その瞬間を積算する微分積分により、速度と位置、さらには加速度の関係が明らかになります。」

おかげで、なぜ自然現象を記述するのに数学が不可欠かがよく理解できました。関数は自然現象を表す共通言語のように思えます。

 

 

 

微積分で理解する速度と位置の関係(初歩からの物理第2回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

そうですね、逆に、瞬間速度から位置の変化を求める、つまり逆算することも可能ですね。

今やったのは、時間を細かく区切って瞬間ごとの速度を捉えることです。今度は、これらの瞬間を集めて有限の時間幅にしていく、つまり細かく分けたものを積み上げていく操作を行います。これが積分です。分けて積み上げる、つまり「積み分ける」ことが積分の考え方です。

実は、積分という発想は微分よりも古く、アルキメデスがすでにこの考え方に言及しています。さらに、惑星運動の法則で知られるケプラーも積分の発展に貢献しました。ケプラーが17世紀初頭にワインを買おうと酒屋に行ったとき、樽の容量を正確に測る方法がなくて困ったそうです。それで、ワイン樽を薄くスライスし、簡単な図形として積み上げて容量を計算すれば良いと考えました。もちろん実際に樽を切ったわけではなく、頭の中で思い描いたわけです。こうしてケプラーは、1615年に『ワイン樽の容量測定法』という著書を発表しました。

話を戻して、速度と位置の関係をどのように表すかを見てみましょう。

こちらのグラフをご覧ください。横軸が時間、縦軸が速度を示しています。このグラフでは、速度が直線的に増加している、つまり加速している様子が描かれています。赤く塗られた短冊形のエリアは、非常に短い時間間隔での速度を示し、各時間間隔での速度が変わらないものとして扱っています。つまり、短い時間であれば速度を一定とみなして良いわけです。

こうして短い時間ごとに速度を一定とみなして積み上げていくと、最終的に三角形の面積を求めればよいということになります。

階段状の短冊が非常に細かくなれば、滑らかな三角形とみなしても問題ありません。この赤色の三角形の面積は、底辺×高さ÷2で求めることができるため、これを用いて位置の変化を求められます。

また、12at2\frac{1}{2} a t^2の形で表されることに気づきますね。比例定数 aa は省略していますが、t2t^2 の形が出てきます。これが積分の結果として導かれる形です。また、微分を用いてこの位置関数から速度を得ることもできます。

これを行き来できるのが微積分の基本であり、これはニュートンやライプニッツが確立した概念です。このように、微分と積分は位置と速度の関係を把握するための重要なツールです。

微積分を使うと、瞬間速度を求めるだけでなく、逆に瞬間速度から位置を求めることもでき、物理現象の理解が一層深まります。この話をさらに進めていくと、微積分学へとつながっていくのです。

 

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こちらが「時間を横軸」「速度を縦軸」にしたグラフです。速度は直線的に増加し、その下の青色のエリアが積分された「位置」を表しています。位置は速度の時間に対する積分で、時間の二乗に比例する関係を示しています。このグラフで、微分・積分を通じた速度と位置の関係が視覚化されています。 

 

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等加速度運動と加速度の定義(初歩からの物理第2回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

では、こちらにあるのは、実際にガリレオが400年以上前に行った実験装置を模したものです。早速、この実験を実施してみましょう。

まず、実験用ボールを転がすところから始めます。この実験では、ボールが転がる際の加速運動の様子を観察します。ガリレオは、実際に転がる物体の動きを遅くし、観測しやすくするために斜面を使用しました。次に、途中で鳴る鈴についてですが、これは重要な役割を果たしています。

ガリレオは、鈴の位置を調節し、音が鳴る間隔を一定にすることで、物体が一定時間ごとにどれだけの距離を進むかを確認しました。この過程で、加速度の概念が登場するのです。

実際に式に当てはめてみましょう。距離 x(t)x(t) は、比例定数 cc と時間 tt の2乗に比例します。このことから、次の式が成り立ちます。

x(t)=ct2

そして、この式を利用して、微分計算で瞬間速度を求めてみましょう。具体的には、次のような手順で行います。

  1. 時刻 ttt+Δtt + \Delta t における距離 x(t)x(t) と x(t+Δt)x(t + \Delta t) の変化量を計算します。
  2. 微分を行うことで、瞬間速度 v(t)v(t) を求めます。

この微分を用いることで、速度が時間とともにどんどん速くなる「加速運動」を理解できます。これは、ガリレオが見つけた斜面上の加速運動の本質を数式で表現したものです。この加速度を aa と表すことで、以下の重要な運動方程式が導かれます。

x=12at2

この式は、物理教科書に「等加速度運動の基本式」として紹介されているもので、ガリレオの斜面の実験から得られた結論の1つです。

 

 

 

微分を用いた瞬間速度の求め方(初歩からの物理第2回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

質問者:「先生、ここに書かれている 'Δt' っていうのが消えてしまったんですが、これはどうやって計算されたんでしょうか?」

先生:「良い質問ですね。これは 't' と 't + Δt' の差、つまり 't + Δt' から 't' を引いているんです。そうすると、時間の変化が 'Δt' だけになります。この間に位置がこれだけ変わりました、というのが変化の割合ですね。」

質問者:「なるほど、そういうことなんですね。」

先生:「そうなんです。では、ここで重要な点が出てきます。先ほども話に出た '瞬間' をどう捉えるかという点です。瞬間というのは、この時間の幅 'Δt' を可能な限り小さくしていくという考え方です。」

質問者:「具体的にはどれくらい小さくですか? 1秒? 0.1秒? それとも0.001秒でしょうか?」

先生:「良い指摘です。ここで数学の強みが発揮されます。『限りなくゼロに近づける』という数学の考え方、つまりリミット(limit)という概念を使います。このリミットをかけることで 'Δt' を限りなくゼロに近づけていきます。」

質問者:「では、時間の幅がゼロに近づいたとき、何が残るのでしょうか?すべてがゼロになってしまいそうですが。」

先生:「実際に 'Δt' がゼロになると、分母と分子がともにゼロになりますが、ここで特殊な計算が出てきます。この状態は '0/0' という表記になりますが、数学ではこれがゼロにならず、ある有限の値が得られるように工夫されているんです。」

質問者:「そうなんですね。」

先生:「こうしてリミットの概念を使うのですが、毎回この表記を使うのは面倒です。そこで、数学ではこの変化を 'dx/dt' という記号で表します。これは 'xをtで微分した値'、あるいは 'tによる導関数' と言います。」

質問者:「それが瞬間の速度になるんですね。」

先生:「はい、物理ではこの速度を 'v' と表記し、英語の 'velocity' の頭文字から来ています。これは '瞬間瞬間の速度' を表すので、時刻 't' が定まればその瞬間の速度が 'v' で表されることになります。 'Δt' はもうゼロに縮めているので登場しません。」

質問者:「では、特定の時刻 't' における瞬間速度をこうやって書けるということですね。」

先生:「そうです。全ての項がイコールで結ばれるこのロジックで計算が非常にシンプルになります。もしこの書き方が少しでも理解しやすく感じられたなら、それはもう大成功ですね。ここで数学の強みが発揮されるわけです。」

 

 

 

瞬間速度と微分の関係を学ぶ(初歩からの物理第2回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

次のステップとして、微分と積分を使って「なぜ二乗が出てくるのか」ということを探っていきたいと思います。

運動を表すために数値や関数を用いることはわかりましたが、時間と共に変化する運動を数学の言葉でどのように追いかければいいのでしょうか。ここからは微分と積分の考え方が登場します。これが次のテーマです。


会話内容

話者A:「さて、どうですか?例えば、ある人が車で家を出てから10分後に警官に止められ、スピード違反で捕まったとしましょう。警官は『あなたは時速100キロで走っていましたね』と言う。するとその人はこう切り返します。『10分しか経っていないので、1時間の距離が出ていないはず。だから時速なんて計算できないでしょう?』と言い返したという話がありますが…」

話者B:「確かに、その説明はちょっと苦しいですね。速度って瞬間瞬間で変わりますよね。けれど、その瞬間ごとの速度をどう表すかが問題なのではないでしょうか?」

話者A:「そうです。『道のり ÷ 時間』で計算すると、ただの平均速度になり、実際の瞬間の変化を捉えられません。ここで微分の考え方が登場します。さっき示した図を少し一般化していきましょう。時間 tt を特定せずに、そのまま tt としておきます。つまり、好きな時刻を代入できるようにします。時刻 tt での物体の位置を x(t)x(t) と表すと、関数としての一般的な書き方になりますね。」

話者B:「つまり、好きな数値を tt に代入すると、その時刻での xx の位置が出てくる、ということですね。」

話者A:「そうです。そして、瞬間の速度を決めるために、どうすればいいと思いますか?」

話者B:「2つの時刻を比較すればいいんでしょうか?」

話者A:「その通りです。時間が少し進まないと、速度については話せません。進んだ時間の幅を『デルタ』、つまりギリシャ文字 Δ\Delta を使って表すことが一般的です。『少し進んだ時間』を表すとき、時間の幅 Δt\Delta t を使います。」


ここで、説明のために Δt\Delta t の間隔を広げて書きますが、実際には極限的に小さくしていくことを考えます。では、時刻 tt における位置が x(t)x(t) であり、時刻が t+Δtt + \Delta t に移ったときの位置を x(t+Δt)x(t + \Delta t) とします。

話者A:「このとき、位置の変化量を時間で割れば平均速度が求められます。この計算を数式で書くと、次のようになります。」


数式の説明

  1. 位置の変化量は x(t+Δt)x(t)x(t + \Delta t) - x(t)
  2. 平均速度は、位置の変化量を時間の幅で割ったもの x(t+Δt)x(t)Δt\frac{x(t + \Delta t) - x(t)}{\Delta t} となります。

 

 

 

物理における運動解析と微分の役割(初歩からの物理第2回)#放送大学講義録

図表は書き起こしを元に、ChatGPT で作成したもの(実際とは違う)。

 

ーーーー講義録始めーーーー

 

さて、次のステップとして、微分と積分を使って、なぜ距離が時間の2乗に比例するのか、その仕組みを探っていきたいと思います。

「運動の様子を数や関数で表せることはわかりましたが、刻一刻と変化する運動を、数学の言葉でどう追いかければいいのでしょうか?」
これは微分と積分の考え方が登場する場面です。この内容が次のテーマとなります。


質問者:
「微分と積分を使うって話ですが、時速を計算する方法で例えられるでしょうか?」

講師:
「そうですね。たとえば、ある人が家を出て10分後に警察にスピード違反で止められたとします。警官は『時速100キロで走っていましたね』と言う。しかしドライバーが『出発してから10分しか経っていないから、まだ時速が定義できないはずだ』と反論したら…苦しい言い分ですよね。」

質問者:
「スピードって刻一刻と変わるものですよね。その瞬間瞬間の速度をどうやって表すかがポイントなのかなと思いますが。」

講師:
「その通りです。単に『距離 ÷ 時間』と計算すると、平均的な速度になってしまい、刻一刻の変化はわかりません。ここで『微分』の考えが役に立つんです。図を見てください。」

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図1:時間 tt と位置 x(t)x(t) の関係図



 

この図では、ある時刻 tt における物体の位置を x(t)x(t) として示しています。物体の位置が時間に応じて変化する様子を視覚的に表現しており、横軸に時間 tt、縦軸に位置 x(t)x(t) が描かれています。これにより、特定の時刻に対応する物体の位置を把握でき、関数としての表現が可能になることを示しています。

 

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講師:
「今、時間 tt における物体の位置を x(t)x(t) とします。これが一般的な関数の書き方です。tt に任意の数値を入れると、位置 xx が出てきます。インプットとアウトプットの関係を使うことで関数として表現できるんです。」

質問者:
「速度をどう決めればよいでしょうか?例えば、2つの時刻を比較するのはどうでしょう?」

講師:
「それも良いアプローチです。物理では、少し時間が経過することを、ギリシャ文字の Δ\Delta(デルタ)で表し、時間差を Δt\Delta t とします。そして、位置の変化量 Δx\Delta x を時間差 Δt\Delta t で割ることで、平均的な速度を求めることができます。」

 

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図2:速度の計算式

 

速度を求めるために、2つの時刻を使った位置の変化量を示す式が描かれています。この図は、速度を次のように計算する式で表しています。

 

x(t+Δt)x(t)Δt

ここでは、時間 tt から t+Δtt + \Delta t までの位置変化を x(t+Δt)x(t)x(t + \Delta t) - x(t) で表し、それを時間差 Δt\Delta t で割ることで、平均速度を表現しています。この図は、刻一刻と変わる運動を捉えるための微分の考え方の導入部分として位置づけられています。

 

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講師:
「この式は位置の変化を時間で割ったものです。これを極限で考えて、Δt\Delta t が非常に小さくなるときの速度を求めると、瞬間の速度がわかるわけです。このように、数式を使って刻々と変化する運動を捉えることができるのです。」

 

 

 

物理における数式の役割と関数の重要性(初歩からの物理第2回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

「すみません、ちょっと気になるんですけど、この比例定数の cc って何でしょうか?」

「いや、それ、まさに重要なポイントですね。それから、なぜこの関数が2次関数なのか、また、さっきの実験では特定の時間しか観測していませんでしたが、この tt はどんな値でも代入できるのかと、疑問が出てきますよね。その点についてお話しします。」

「実はガリレオはこれを見つけただけで大発見をしたわけですが、答えを完全に解明するには至らなかったんです。そして、この疑問を解決したのが、まさにアイザック・ニュートンです。ニュートンは、この比例定数 cc が重力、いわゆる万有引力と関係していることを突き止めました。」

「なるほど、ニュートンが解明したんですね。」

「そうです。ニュートンによると、地上付近では重力は一定です。この重力という力が一定であるために、この定数 cc が現れるわけです。ただし、詳しくは次回の授業のテーマになりますので、今はモヤモヤが残るかもしれませんね。」

「わかりました。そうすると、2次関数になる理由も次回わかるんですね?」

「はい、2次関数になる理由については、微分と積分の考え方が関わってきます。それに、もう1つ重要なのが、先ほどの実験で観測した時間 tt ですが、どんな値でも代入できるかという点です。もし、装置の大きさや傾きを変えた場合、あるいは異なる物体を転がした場合に結果が変わってしまったら、法則とは言えません。しかし、どんな設定であっても状況が変わらない限り、この式は万能です。」

「そうなんですね、どんな時間を代入しても成立するんですか。」

「そうなんです。この関数の強力さはそこにあります。たとえば、距離を測定して時間を記録すると、距離と時間が2次関数の関係になることがわかりました。これがまさに物理法則の一つです。」

「実験結果を数学の言葉に翻訳することで、一般性や普遍性が生まれるということですね。」

「その通りです。こうして物理で数学が使われる理由が少し見えてきたと思います。」