さまよっているような量的研究もたまに見かけたりもする。
------講義録始め-------
第10回の講義では、「統計を使って研究を進め、考えるとは」というテーマに取り組みます。研究計画の段階で、皆さんが目指す研究目的の変数を測定するために、調査票の作成や測定機器を使用して実験や開票調査を行っていると仮定します。実験や調査が完了すると、パソコンの表計算ソフト上で研究対象者のid番号の行を作成し、各idの列に機械や調査票で測定した変数を入力してデータセットを作成します。
解析のためにこのデータセットを作成した後、統計ソフトを用いて分析を始めます。今回の講義では、その後の手順について説明します。ただし、基本的な統計学の知識、たとえば統計学的検定の方法や係数値の計算方法については既に多くの教材があるため、今回の講義での説明は省略します。すでにある程度の統計の知識を持っていることを前提として進めますので、統計学の基本については後で教材を読み直してください。
まず、なぜ統計を使用して研究を進めるのか、そしてなぜ量的な研究デザインを採用したのかについて考えてみましょう。自分が量的な研究を選択した理由は、研究の対象となる集団の特性や状態に関心があったからです。臨床現場では、各患者の状況が異なるため、集団の特性を一般化することに疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし、集団の特性は、その集団を構成する人々に共通する特徴を指します。例として、手術を受けた100人の男性患者を対象とした調査で、80人が術前に社会復帰の不安を感じていた場合、この手術を受ける男性患者の80%がその不安を持っていることがわかります。この情報は、患者へのサポートや情報提供のための方針決定に役立ちます。
しかし、各人の不安の度合いや意味は異なる可能性があり、それを数字で捉えることは難しいと感じるかもしれません。そのため、以前の第8回の講義で学んだように、様々な方法で質問を設計したり、生理学的マーカーや脳波計などを使用して詳細に測定する方法も考えられます。研究計画の段階で、どのような集団に対して、どのような変数をどのように測定するのかを決定しました。そして、その変数の特性によって測定方法や調査票の作成方法、後の分析方法が大きく変わります。変数の特性を示す基準を「尺度」と呼びます。尺度にはいくつかの種類があり、これは今回の講義で必要となります。