ーーーー講義録始めーーーー
推論木(推論議)を用いた後ろ向き推論と不確実性推論
ルールベースの構成と推論木
図2-4 の直前に示された形式的な10個のルールを基に、後ろ向き推論、不確実性推論、説明機能についてまとめます。
- 各ルールは
OAV表現形式の条件節(対象、属性、値)を持ちます。- 例:
Pは実際にはP(O, A, V)という形式で表現されています。
- 例:
- 結論
Dを仮定し、後ろ向き推論を開始します。 - ルールの最後に記載された数値は確信度 (CF 値) を表し、0.1~1.0の範囲で結論の確からしさを示します。
図2-4では、このルールベースを基に構築された推論木(推論議)が示されています。
- 線で接続されたノード: アンド関係(すべて成立する必要がある)。
- 線で接続されていないノード: オア関係(いずれか1つが成立すればよい)。
推論プロセスの流れ
後ろ向き推論では、結論部から条件部へ処理を進め、以下のように展開します:
- 結論
Dが成立すると仮定。F(P AND Q) => Dのルールに従い、PとQを展開。PはさらにP1 AND P2およびP3へ、QはQ1とQ2に展開。
- 臨床データ
F1~F10に到達したら、それ以上展開できないため、ユーザー(医師)に質問します。- 例: 「
F1の属性は何ですか?」という質問。 - 医師が「はい、確信度0.9」などと回答。
- 例: 「
推論の結果とルールの切り替え
例として、以下のような流れを考えます:
F1とF2が成立し、F3が不成立だった場合:F(F3 AND F4) => P2により、P2は不成立。- 結果として、
F(P1 AND P2) => Pにより、Pも不成立。
- しかし、
F(P3) => Pのような別のルールがあるため、このルールに移行し、F5に関する質問が提示されます。
不確実性推論の計算方法
確信度(CF 値)の計算は以下の通りです:
- アンドノード(AND の関係):
- 条件節の中で最も小さい CF 値を採用。
- その値とルール自体の CF 値を掛け合わせ、結論部の CF 値を算出。
- オアノード(OR の関係):
- 各ルールの CF 値を正規化して加算。
- 例:
CF1に対し、1 - CF1の範囲内で次のCF2を加算。
打ち切り条件と診断の終了
- CF 値が 0.2 未満 になる場合、不成立と判断する打ち切り条件が設定されることがあります。
- 例: 結論
Dの CF 値が 0.14 の場合、打ち切り条件によりDは不成立と判断され、新たな仮説を基に推論を再構成します。
説明機能
推論木では、医師が推論プロセスに疑問を持った場合、以下の説明機能を利用できます:
- WHY コマンド: ある質問や行動の理由を説明。
- 例: 「なぜ
F5を質問するのか?」
- 例: 「なぜ
- HOW コマンド: ルールや条件節がどのように処理されたかを説明。
- 例: 「どのルールを使って
P3を処理したのか?」
- 例: 「どのルールを使って
これにより、医師が推論プロセスを理解しやすくなり、AIシステムの透明性が向上します。
総括
このように、マイシンの後ろ向き推論では、推論木を用いた複雑な展開や不確実性推論が行われます。また、説明機能により、ユーザーが推論の詳細を確認できるため、透明性と信頼性が高いシステムとなっています。
