F-nameのブログ

はてなダイアリーから移行し、更に独自ドメイン化しました。

「放課後博物館」と「遠足博物館」 ―博物館の二つの顔― #放送大学講義録(博物館教育論第13回その3)

ーーーー講義録始めーーーー

 

伊藤さんは、前述の地域博物館論の中で、「第3世代の博物館」という表現を紹介し、それを「参加し体験するという継続的な活用を通して知的探求心を育んでいくことを目指す施設であり、日常的利用が可能な場所に設置されることが条件となる」と位置づけました。
また、近年の博物館制度をめぐる議論においても、博物館は「展示観覧施設」という枠を超え、市民が学ぶ拠点・地域文化の発信拠点として機能しうること、さらには市民を主体とした活動が推進され、地域文化活動のハブとなっていることが指摘されています。

1976年の平塚市博物館開館から活動を20年以上展開した1990年代半ばごろ、濱口さんは当初の博物館を目的思考で捉えた分類をさらに単純化し、「博物館には究極的には2つのタイプがある」と考えるようになりました。それが「放課後博物館」と「遠足博物館」です。この2つは博物館の両輪であり、魅力的な遠足博物館と活発な放課後博物館が連携をとって初めて充実した博物館環境が整うと、濱口さんは考えていました。

遠足博物館とは、遠足で見学に出かけるような館だといいます。一方、放課後博物館では、もの珍しいものに出会うというよりは、日ごろ見慣れたものの価値を再発見する楽しみに重点が置かれています。これは平塚市博物館が目指してきた、地域に暮らす人びとが日常的に関わり、地域を見直す手がかりを得るという方向性とも重なります。

利用者は地域の人が中心であり、利用の形は行事への参加、問い合わせ、ボランティアとしての協力など、多様な形があります。市民が協力者として調査や資料・情報の蓄積にも関わりうることで、博物館と市民の間の情報の流れは一方向ではなくなり、学芸員と市民が力を合わせて資料と情報を蓄積していく回路が生まれます。その究極の目的は、地域に暮らす市民がより良い未来を作っていくために、より深く地域を知ることです。それが社会教育施設としての博物館が果たし得る重要な役目だと、濱口さんは考えていました。

放課後博物館は遠い存在ではなく、気軽に何度でも通えて、学芸員や他の利用者らとともに、自ら地域を調べ、地域の魅力や価値を再発見し、発信できる身近な博物館です。自分の足で歩くからこそわかること、感じること、発見を参加者同士で共有し、発信すること。地域博物館ならではの学びがあるでしょう。

また、各地の博物館でも、市民参加を支える仕組み(会員組織、ボランティア、調査協力者制度など)が整えられています。たとえば滋賀県立琵琶湖博物館では、継続的な参加の枠組みとしてフィールドレポーター制度が設けられています。
見学者・利用者という立場から、より博物館側とともに一緒に活動していく存在になり、学芸員とともに地域の調査、資料収集を行い、地域の魅力や価値を掘り起こし、発見や学んだことを地域に還元していく。自分の暮らす地域やその近隣に、このような地域博物館があるか、ぜひ探して、まずは足を運んでみてほしいと思います。

 

〔図1〕「放課後博物館」と「遠足博物館」:対比の整理(講義内容の要点)

観点 放課後博物館 遠足博物館
想定される利用 地域住民が日常的に通う 非日常の見学(遠足・旅行的訪問)
学びの核 見慣れたものの価値を再発見/地域を調べる 代表的・希少な展示に触れる
参加の形 行事参加、問い合わせ、協働、ボランティア等 主に見学・鑑賞(+学習プログラム)
位置づけ 地域に根ざす学びの拠点 “魅力”で人を引きつける顔