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語用論(2)-意味論から語用論へ-(新しい言語学第10回)

意味論しか大学では学ばなかった。確かに意味論だけではコミュニケーションの解明には充分ではないかも。

 

語用論。言外の意味。字面通りには言われていないことを問題にする。字面の意味は?意図。言いっ放しでは伝わらない。言った人の意図を推論する。グライスの会話の理論。レトリック。当たり前のようにやっているが、コミュニケーションの不思議。意味の計算は何故出来るか?言われた言葉の意味は見当がつきそうだが、その問に答えを出すには過去の出来事や話したこと、相手の事情を参照しなければならない。学問的には大きな転換が必要。人は不思議なことを毎日やっている。語用論はどうやって別れたか?
「明日の夕ご飯はどうなさいますか?」事前には話をしていないと焦ってしまう。ただ聞いただけだけど。質問なのか誘いなのか微妙。意味論と語用論の違いの事例。なめらかにコミュニケーション出来なかった。純粋に尋ねたから意味論的。はい、食べます、と答えると頓珍漢になる。誘いなどの別の意図がある?尋ねた背後の意図。字面通りの意味が意味論。意図まで探るのが語用論。言葉が何かを意味すると考えるのが意味論。何かを意図するのが語用論。発話と発話者。学問の歴史と並行している。意味論は伝統的言語学の一分野。食べるか食べないかを。家で食べるか外食するか。一人で食べるか友達と食べるか。基本的に夕ご飯はどうするか?というニュアンス。聞いた方の意図を察していない。言葉から人へ。意味論を超えている。字面の意味をいくら突き詰めても意図は掴めない。人の意図まで辿る必要がある。意味論から語用論へ。
先程の問いを発する。焦らないためにはどのような条件が必要?夕ご飯にまつわる会話を事前にしていること。問いが自然に聞こえるには、何らかの会話がなされたことが必要。そのような想定のことを、語用論的前提という。何らかの共通点が。会話をしたことがなかったから意図が掴めない。前提と聞き手の頭の中での解釈。コミュニケーションには隠れた多くの前提が在る。その上に言葉が乗せられている。授業で何の話をしたか知っている。色々な前提が隠れている。前提部分では改めて言葉にしない。相互了解。でないと言葉ばかり多くなって辿り着けなくなる。暗黙の前提。改めて語らない。コミュニケーションの経済効率を。とても関係の深い言葉を。「これそれあれどれ」。前提というものを最大限に利用。夕ご飯を食べる日の相談を。眼の前にある、今に最も近い、などの条件。「この」や「これ」。自分だけカレンダーを見ていても分からない。「あの」。二人が共有。かつ、今ここにはない。自分も知っている過去の経験。時々そこから外れる用法もある。「あの頃は大変だった」。回想の「あ」。聞き手はそのことを知らない、初めて聞く。話し手はそれを承知だが、お説教みたいなニュアンス。「そんな話していない」。「そ」系の指示詞。自分の管轄ではない、とみなしている。夕ご飯の話は違う。前提は多くを語る。
ダイクシス、という問題。意味論から語用論へ。語用論は何を見ようとしているか?人が意味する、への転換。見る角度を変える。コミュニケーションの中で言葉を使う時、何を言っても良いのではない。言うべきでないこと、先ずは嘘。言って良いと何を信じていいかわからなくなる。誤解を与える表現も相応しくない。嘘かホントかは言いようがない、けれど相応しくない。論理学や意味論は命題の真偽を問題にしたが、それだけでは片付かない問題に気がついた。適切性。適切かどうかが問題。真でも偽でもないが、唐突で不適切。意味論が命題の真偽を問題にしたのに対し、語用論は適切さを問題にする。真偽はともかく、適切性というのは何が該当する?言われた人はどうして戸惑うか?ただの質問なら当たり前だし、誘いが含まれるなら察しなければ。人は言葉で合意をする。発話行為、言語行為。語用論といえばこれ?
語用論の流れの中で画期的となったのは発話行為論。オースティン。スピーチアクト。儀式性や形式性の高いケース。結婚式における契約、誓いの言葉。裁判で言う判決。言うことがそのまま契約。裁判長が刑罰を言い渡すのは法的効力を持つ。在る場面である言葉をいう、それがそのまま行為となる、発話行為となる。開会宣言。船の命名式。日常ではしょっちゅうある訳ではない。普通の言葉ではないタイミング。かなり決まっている。儀式性が目立つ。権威のつく人が言う必要もある。サール。日常の行為。発話行為が身近に。だが今度は規則がやたらと出てくる。手続に分解される。凄くなってしまった。行為を構成する規則。構成規則。違和感を持つ人も。アメリカの人。アメフトの例が出てきてなんとなく分かる。「せよ」「するな」ではなく、一定のやり方で相手のエンドに持ち込むとタッチダウン。法則ではなくて、一定の手続でこれが成立する。人々の発話行為もスポーツと同じルールブックを作ることが出来る。約束という行為のタッチダウン。クイズ。普通に円満に暮らしている夫婦。「明日は離婚しないと約束する」。約束の構成規則の不備。何が?離婚しないと言うコト自体が不自然。とても恐ろしい闇の世界。「お前のこと絶対に殺すって約束する」。普通は約束とは言わない。して欲しくないこと。約束の構成規則の中には、相手が好むことである、ということ。行為そのもののラベルが変わる、脅し、という行為に。発話行為論を専門にしている学者はあまり居ない。日常の暮らしの中で、「何々すると約束するね」と言った記憶は?言い方が重要。大人になってから随分だが、あまり言っていない。子供の頃は指切りげんまんするが、大人ではあまりしない、借金返済について債権者から凄まれて約束する、というイメージ。約束をしないのではなく、子供のように一つの文で完結した形で約束をしない、というのが。色々言いながら、「ご心配なく」と言う。細かい事の積み上げ式。依頼に関して「お願いします」という言葉は山場ではなかなか使わない。何となく言うと成立する、という訳ではない。実際はお願いではない。もって回った言い方をする。約束する、お願いする、という一文で成しているのではない。発話行為論は一つの文で一つの行為、と考えるが、実際はもっと複雑。アメフトや野球のようではない。現在の語用論の到達点。夕ご飯、と聞くのはオカシイこと。会話をどのようにする?まとまった形で。会話には構造がある。
言葉ではなく人が意味する。言葉が自動的にではなく。言うときには様々な前提がある。言葉で行為をする。行為は文という単位から大きい単位で。談話という形で。

 

新しい言語学―心理と社会から見る人間の学 (放送大学教材)

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