ーーーー講義録始めーーーー
法規範の類型について説明します。法規範は、大きく 行為規範、裁判規範、組織規範 の3つに分類することができます。
行為規範 は、人々が社会生活を営むうえでの行動基準を指示する法規範を指します。
通常、「～してはならない」（禁止）や「～しなければならない」（命令）といった形で定められています。
なお、法律上で直接禁止や命令が明記されていない場合でも、その背後には行為規範が存在することがあります。
裁判規範 は、裁判における制裁の発動や紛争解決の基準を主に裁判関係者に指示する法規範であり、裁決規範とも呼ばれます。
例として次のような規定があります：
- 刑法第199条：「人を殺した者は、死刑、または無期もしくは5年以上の懲役に処する。」
- 民法第709条：「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
裁判規範は、行為規範が遵守されなかった場合に適用されます。論理的には、裁判規範は対応する行為規範を前提とし、両者の性質を兼ね備えた規範も少なくありません。
例えば、刑法第199条の殺人罪に関する規定は「人を殺してはならない」という行為規範を、民法第709条は「他人の権利や法的利益を侵害してはならない」という行為規範をそれぞれ前提としています。
組織規範 は、国会、裁判所、行政機関といった国家の各機関や公共団体の組織構成や権限を定める法規範です。
具体例としては、次のような法律があります：
- 国会法、内閣法、裁判所法、国家公務員法
これらの3つの法規範の間には複雑な相互依存関係があります。同一の法規範が複数の規範類型に重複して属する場合も少なくありません。
各規範の役割と相互作用
- 行為規範 は、道徳、経済、文化の内容を取り込みつつ、道徳の実効性を保証し、経済活動を秩序立て、文化の建設を保護します。
- 裁判規範 は、法の有効な執行を保証し、特に裁判官による司法権の乱用を防止します。
- 組織規範 は、法に基づいて組織立てられた国家と結び付き、その中で国家の政治的生命を宿します。
以上のように、法は 行為規範、裁判規範、組織規範 がそれぞれの役割を担いながら、相互に支え合う複合的で立体的な重層構造を成しています。
