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道徳・正義と法(法学入門第9回)

どこまで法学入門の体裁が作られていたかはともかく、重要な内容を捉えていたようには思う。

 

山口亮介。道徳正義と法。法の規範としての性質や、何が法として使えるかの法源の話。構成員にとり共有の道徳や正義。大きく2つのポイント。法と道徳の関係。個人として社会の構成員として活動する時に規範の総体を道徳、倫理と呼ぶ。一定の行動指針になる。人々が社会生活を営むにあたり、構成員として何々すべきだ、すべきでない、という言い方で規制して安定化させるルールが求められる。社会規範は道徳倫理と重なる。道徳は法規範とどのような関係に立つか。前半ではこうした問に即して法と道徳の関係の理論。密接な部分や対立する部分などを概観。後半では正しさという価値を巡る問題として正義の観念を。正義感に駆られる。正義の味方。道徳的、道義的正義の色彩を持つ。もっとも正義の内容は個人の主観的内面的なものにとどまらない。客観的に人の行為を規制する側面を。法と正義が密接な関連を。こうした法と正義を巡る法学上の考え。
近代法の前提と成る国家や社会の。法と道徳は密接なところから。6世紀にローマ法大全。法の原理。これらは一般に考える法原理というよりは心構えという印象を。他にも現在の法律の中で一見して道徳的価値に関わる文言を見出すことが出来る。責任という用語。義務の意味。法学の上では不利益や制裁を負うものと。不法行為に対する損害賠償責任。民事責任。刑罰を科せられるべき責任。行為の批判が可能。刑事責任。専門用語としての責任。法と道徳の関係。様々な考えが。法の外面性と道徳の内面性。法は客観的な形で人の行為を規律。自分以外の他律的強制による。道徳は行為を為すものの内面にあるものを記述。区別により明確につけられるものではない。法律の条文に人の内面に踏み込んで規律しているものを見出すことが出来る。自分の行為を。故意。民法上の不法行為の要素の1つ。刑法における故意。結果の発生を意図認容すること。実態を踏まえれば、区別ははっきりしない。法と道徳はどのような関係が?法は人が従うべき道徳の最小限、という格言。道徳は社会において内面における規律やマナー。構成員各自の自己規制の規範。法は行為や態度を規律する規範。一定の罰則や損害賠償等の調整や義務付け、客観的で具体的な。一定の程度共有されその意味で一定の客観性を持つ価値。典型例として刑法典で違法な行為と。社会道徳を下敷きにした法原理が。
法と道徳の関係を別の角度から。実定法の位置づけ。実定法とは制定法や特定の社会における慣習や判例など。実定法の効力。法実証主義と自然法論の議論が展開。法実証主義。人間が作った法のみが法。法的効力を持ち人々を拘束。より端的に、法とは国家の法律を使った命令による。人為的に作られてた法の正しさを。自然法論。Nature。そうあるべきものという自然の本性。人の本性理性や人を超越した神による法の存在。自然法と矛盾する実定法には法的効力がない。決められたルールを守らなければ社会秩序は維持できない?法実証主義と自然法論という対立。悪法は法であるかの議論。国民のためにならない悪い内容の法の効力は?法実証主義では悪法も法。一定の手続で成立した法律も効力を持つので服する義務がある。その結果として為された非人道的な行為を否定することは出来ない。自然法論では悪法は法律の形態を持つ不法。法律を越えた法。悪法の法的効力を否定。第二次世界大戦後に大問題になる。戦時中のナチスドイツ。戦後に刑事責任を問う。結果として非人道的な行為に対して刑事訴追が。裁判の背景に、手続により制定された法は法である、という標語を越えた形で刑事訴追の可能性が。ラートブルフ。法実証主義と自然法論という2つの立場は法と道徳の間の関係にも。法と道徳とを端的に別個の、または一体のものとして考えるのは難しい。相違を踏まえた上で法を整合的に考える必要がある。過去から現在、未来に繋がる問題。道徳と法の関係の変容。科学技術などの進展で法と道徳の内容は変化しうる。一定不変のものではない。社会においてはこれまで道徳の問題が法規制の対象になったり、道徳を下敷きにして法による強制が効力を持たなくなる。尊属殺法定刑違憲事件。刑法典からの削除。199条の殺人の次の条文。200条は削除。そこには直系尊属を殺したる者は死刑または無期懲役。通常の殺人罪は5年以上の懲役。有期懲役の部分がない。背景にあるのは国家秩序を。前近代の法令にも広く見られる。法の下の平等に照らして違憲とする意見があった。刑法200条に違憲の判決が。道徳と法は何をすべきか、すべきでないかの考えで密接に。法の効力を巡り法実証主義と自然法論という考えが。道徳観自体が変化して法の内容を変える面も。
法と正義を巡る法学上の考え方や議論。正義の観念の歴史的形成。西洋における正義。辞書的な意味。人々の公平な扱い。公平で道理にかなう状態。制裁への法制度。公平な関係性と調和ある秩序、人間の特性。法学にとり重要。法と正義の関係性。膨大な議論が。正義についての観念。簡単にまとめると、個別の法律や判決が正義にかなうかの基準。アリストテレスの正義を巡る思想。正義の概念は一般的正義と特殊的正義に。一般的正義。遵守するとともに。特殊的正義。行為に具体的妥当性。平均的正義と配分的正義。矯正的正義。それぞれの人が持つ価値や属性に応じて利益や負担などを。比例に従った異なる扱いを是認する。差異を前提にした実質的正義。公法の分野で。個別の関係が均衡に。私法の分野で。アリストテレスの前提は決定に主体的に携わることの出来る個人の存在。正義の観念に基づき等しいものに注目するのではなく、等しいものと等しくないものを区別する基準の調達が必要。その後、配分的正義を巡っては個人の責に帰することのない場合は違うのでは。自分の努力ではどうしようもない貧困。社会的問題からの不平等。不利な状態のままで配分するのではなく、立法などの配慮を行うべき。社会的人権思想や福祉国家。正義の考えに影響。特に実質的正義の在り方を。正義の問題に対し、18世紀後半から英米法の分野で最大多数の最大幸福、功利主義や、20世紀のロールズ。手続的正義という観念が有力な説に。手続的正義の内容。一定のルールや手続に準拠したもの。結果として正不正を問題にしない。裁判のプロセスにおいて明確に定められ遵守されているか否か。基礎となるのは適正手続という考え方。国家権力の権原行使から自由などを保護。日本国憲法31条。適正手続という考え方の系譜。刑事事件の手続。憲法38条。刑事訴訟法311条。沈黙し供述を拒むことが出来る、被告人の黙秘権。法と正義。正義については道義的正義だけでなく公平な分配を。法学で用いられる正義の観念。実質的正義。別に手続的正義や形式面の手続も重要。
共有される道徳や正義の観念が法とどのような関連を持つか。社会生活を取り巻く道徳や正義や法の在り方。現在から未来に向かっても絶えず変化を。社会や価値観の違い。人任せにすることのない知的態度が必要。

 

法学入門 (放送大学教材)

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