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社会の問題を解決する(市民自治の知識と実践第4回)

社会に生起する問題を、手順を踏んで解決に臨まないと非合理性だけが残る、というのは肝に銘じるべきだろう。

 

岡﨑晴輝。社会の問題を解決する。その技術を。非常に多くの問題がある。環境問題。深刻である。特に深刻な問題を挙げると?直面した時に2つの落とし穴に陥りやすい。
現実は変えることは出来ないと諦める現実主義。丸山眞男。現実という言葉を使うとき。現実を与えられたものとしてしか捉えず、日々作られるものとして捉えない。既成事実とする。現実は実際には多様な側面をはらんでいる。多次元的な原理のうち一つしか見ない、一次元的に。多様な現実の中で支配権力の見解が現実的と考えて、反対するのは観念的であるとか非現実的であるとか。今でも思い当たる節がある。全ての現実を変えることは出来ないが。人為的に創設された制度であっても、歴史的に定着すると容易に変えることは出来ない。車の通行車線を変更するなど。返還後の沖縄。78年に右側通行から左側通行に。作業した人の証言。人の感覚は上手くはいかない。物損事故が相次いだ。バスの運転手。昨日まで右手で、今日から左手で箸を持って食べられるか。人間世界には地震や津波など人間にはどうしようもないことも。しかし現実全てが変えられるわけではない。原発は全て止まっても電気は賄えている。以前は大変なことになると言われていたけれど。現実が数年間で変わってしまっているという現実もある。変えられないと諦めるのは正しい態度とは言えない。
理想を追求するあまりに悪い状態を招く理想主義。ベストはグッドの敵である。言語学的にはありえないが、現実世界では非常に多く起こる。大飯原発の再稼働を止めようとする群衆。ちょうど真ん中に野田政権打倒というプラカード。確かに再稼働を決定したが、中長期的には脱原発をするという姿勢も。起こった市民は打倒しようとした。その結果何が起こったか。安倍政権に変わり再稼働の方向に。原発に反対する市民にとり最悪の結果。つまり山口二郎の言葉では完全主義に固執して最悪の結果をもたらしてしまったことに。こういう逆説が起こる。ベストを追求するのはバットを帰結する。社会の問題に直面したとき、現実主義の落とし穴と理想主義にも気をつける必要がある。ではどうすればよいか?
現実主義と理想主義。2つの落とし穴にどうすれば陥らないか。一つ一つ手順を踏んで問題解決を。6段階モデル。問題を定義するのが第一段階。解決する時に何が問題であるかを曖昧にしていることが多いが、解決は非常に難しくなる。問題を明確に捉える。問題を理想と現実のgapとして捉える。明確に把握することができる。放置自転車問題。駅前に非常にたくさんあるのが大変というだけでは漠然としている。どういうふうに解決すれば良いかが難しい。理想は駅前に自転車がないこと。0台。現実には100台ある。理想の0台と現実の100台。明確に捉えられる。非常に難しい作業。曖昧にすると問題解決の際に混乱する。何が問題であるか、理想と現実のギャップとして。理想的には数値で表現すること。第二段階。原因を把握する。理想と現実のGapが発生するには何らかの原因があるはず、それを把握する。大事なのはギャップが発生する原因は1つではないことを忘れない。複数の原因のうち、どれが主たる原因かを把握する。なぜ100台あるのか、いろいろな原因。駅前に放置してはいけないのを知らない人が居る、悪いと思っていてもモラルの問題で放置してしまう、駐輪場が少ない、あっても駅から遠い。公共交通機関が少ない。今直面している問題。主な原因を把握する。第3段階。目標を設定。現実と理想のgapを完全に埋めようとするといろんな副作用が。放置自転車を0台とする目標を。24時間警備員を配置するなど。そうすれば放置自転車は確かに0台になる。そのことで市民が息苦しさを感じるという副作用。ベストはグッドの敵になり得る典型例。ベストな状態を追求する結果副作用が生じる。100%理想と現実のgapを埋めるのではなく、余裕が必要になってくる。横軸に時間軸。何時までに理想を現実に近づけるか。縦軸。どこまで近づけるか。完全に一致させるのではなく、これくらい解決できればよいという水準を。放置自転車であれば100台だと大迷惑に。例えば10台に減らすことができればあまり妨げにならないし怪我の可能性も殆どない。10台まで下げようと考える。目標の設定。完全な理想を追求するのではなく適度な目標を設定する。第4段階。政策を立案する段階。現実を目標に引き上げるための具体的方法を。重要なのは、思考が萎縮しないように、判断や評価をしない。頭で浮かんだアイデアを全て抑制することなくピックアップする作業を。ブレインストーミング法。これを活用して頭に思い浮かんだ全てのアイデアを。バカバカしく思えても全て書き出す。第5段階。今考えだした政策を評価する。いろんな基準に照らして。考え出された政策を評価する基準。実現性、有効性、効率性など。実現性。真っ先に求められる。いくら理論上は素晴らしい政策でも実行に移せないと机上の空論に。法律上許されていないなど。実行には移せない。真っ先にすべては実現性の基準に照らして政策に点数をつけ評価する。有効性の基準。それぞれの政策を理想に引き上げるのに有効かどうか。原因の把握と密接に関連する。何が原因かにより有効かどうかが変わってくる。悪いと思っていない場合、ポスターを貼るのは有効。しかし悪いと思っていなければ放置は続く。理想と現実のgapの理由により政策の有効性が変わる。有効かどうかを考える。公平性の基準。ある者の利益のために別の者の利益を犠牲にしない。判断するには次のような思考実験を。自分が仮に不利益を被るとして、それを受け入れられるかどうか。判断がしやすくなる。平等性の基準と同一視してはいけない。東日本大震災の事例。ある被災地に。300枚の毛布が届く。その避難所には500人に。平等に配れないからと言って配らない事例があった。斎藤貴男。300枚しかないのならお年寄りや小さい子供が居る家庭に。もしくは家族で共有してもらう。効率性の基準。どれくらいコストを抑えられるか。同じように効果が上がる政策が2つあるとして、一方の政策が安く上がるならそちらの方が高い評価になる。コストと言った場合、単純にお金だけでなくエネルギーも。最後に第6段階。政策の評価。1つの政策か複数の政策を決定する。全ての基準で優位な政策があればよいが、あまりない。現実には別の基準に照らせば別の政策が良い、一長一短。だからこそ集団で討議して慎重に判断することが求められる。決断が求められる。理想主義と現実主義の2つの落とし穴に陥らないために、手順を踏んで考えていく。6段階モデル。問題を定義。理想と現実のgapを。gapの原因を把握。原因を把握するのは非常に重要。原因により有効性が変わってくる。リストアップをしてこの状況で何が主たる影響なのかを。問題を定義し原因を把握し現実をどこまで何時まで理想に近づけるか。とにかく目標を理想と一致させると多くの場合に副作用が。適度な基準の目標を。現実を目標に引き上げるための方法を一つ一つリストアップする。評価は封印する。上手く行かないとか不味いとか考えると思考が萎縮する。それを避けてどんどん頭からリストアップを。考え出された政策の一つ一つをいろんな基準で評価する。実現性。有効性。公平性や効率性。場合によっては他の基準もあるかもしれないが。一つ一つの政策に点数をつける。5段階評価で点数をつけるなど。評価を踏まえてどの政策(の組み合わせ)かを決定する。一長一短なので慎重に討議して決断の要素を伴いつつ。
以上、問題解決の6段階。問題の定義、原因の把握、目標の設定など。モデルに対しては批判が生じると思う。一方では問題というのは非常に複雑である。人間の能力には限定がある。合理的なモデルによってはとても対処し得ないという批判が。それをどのように考えるべきか。重要な指摘である。状況が複雑であること、人間の能力に限界があること、それらを考慮すべき。問題の分析などについてもせいぜいベターなものでしかあり得ない。他の人の討議に開いたものとして慎重に。失敗しても落ち込まないでチャレンジするのも大事。6段階の手順を魔法の公式のように繰り返すべきではない。だからといって、合理的思考を捨て去るべきではない。合理的な問題解決の方法に意味がないと切り捨てるよりも逆に。だからこそそれ故に思考のツール、道具が必要。家計のやりくりが非常に難しい、だからこそ家計簿というツールを使う。収入と支出のバランスを取れるように。問題解決のモデルも似ている。ツールになりうると考えるべき。状況の複雑性や能力の限界制は重要な指摘だが、非合理的決断を残すのはいけない。限界を自覚しつつ。有効なツールとして使用する。ベストというのは求めるべきでない。
ポイントは社会の問題を解決する際、現実主義と理想主義に陥らない、一つ一つ手順を踏んで考える。問題解決の6段階モデル。身近な事例に適用を。

 

市民自治の知識と実践 (放送大学教材)

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