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故意と錯誤(刑事法第5回)

錯誤論に奥まで突っ込まなかったのはある意味賢明かもしれない。法学部の新入生にとっての最初の難門なので。

 

白取祐司。故意と錯誤。犯罪の主観的側面。行為者の主観的要素、心理状態は重要。犯罪行為自体は客観的だが、故意過失がないと犯罪は成立しない。刑法38条。犯罪は罪を犯す意思、故意がないと処罰されない。過失を処罰するには規定が必要。空港の手荷物検査で禁止薬物が。後の裁判で無罪に。本人が主観的に薬物の存在を知らなかった。故意はなかったと。手続き的観点から。
故意または過失がないと。責任主義。故意も過失もないと帰責性はない。不可能を法は強制しない。いきなり線路上に。不可抗力と言える場合には故意も過失もない。検察官も起訴を見送ることが多い。過失には重過失が問題になることがある。日本の刑法は過失について程度を問題にしていない。強殺の刑罰を重くするのは外国の刑法にもあるけれど。過失については条文にある。故意については書かれていない。38条でそれぞれの犯罪行為により故意が必要と読む。犯罪成立に故意過失が要求される。この意味で保障機能を主観面から。
犯罪事実の認識や予見が必要。それ以上に積極的な意思は必要?少なくとも認識が必要。故意があったと言えるには?薬物の正確な名称は知らなくても意味の認識があれば問うことが出来る。90年2月の最高裁。化粧品と言われて腹巻きの中に隠すが見つかる。故意があるかどうか。正確に覚せい剤だと認識していなくても違法の物質と認識していれば故意はあると。密輸入する時に違法な薬物と認識していると故意に欠けるところはない。ヘロイン大麻など。いずれについてかの認識は必要ない。薬物について犯罪構成があるのに良いのか?
故意は人間の心理状態。認識予見について程度の必要がある。確定的故意。密輸入のように、かもしれないという認識の程度。無差別殺人なら被害者は誰でも良いと。不確定的故意。未必の故意。概括的故意。択一的故意。概括的故意。具体的に誰ということもなく自動車を歩道に突っ込ませる。殺人罪が成立。択一的故意。1つに結果を認識。幾つかあるものの1つに。未必の故意。結果の認識はないが故意を認めて良い場合。AがBを死亡させる故意をもって殺人。AはふざけてナイフでBを驚かせる。拍子でナイフが突き刺さる。過失致死罪にとどまる。結果の認識予見をしていない。中間的な。結果の予見はあるが望んでいない場合は故意か過失。認容していなければ過失に過ぎない。認容があれば故意を認めるべき。狭い道を通行して子供を死なせる。リスクを認識しているが避けられるとしたら過失。ムシャクシャして死なせても構わない、なら故意。認容説。外見的に同じでも内的な違いを重視。主観的事情が振り分けの決定性に。結果を予見していれば故意がある。必要以上に未遂の範囲が広がる。危険が高い行為をしても認容していなければ故意を認めない。結果発生を仕方がないという認識にも。過失との違いが困難に。蓋然性説。故意過失の区別を主観面からではなく、行為の客観的可能性を超える蓋然性。それがあれば故意犯とする。刑事裁判の証明が容易になる。蓋然性説なら主観を問題とせず客観的危険性を証明すれば良い。主観的要素を切り離すのは妥当か。動機説も。裁判所は?認容説や蓋然性説も。広島高裁05年3月11日。子供の虐待死を殺人罪で。殺意の認定が難しい。日常的虐待と全身衰弱状態の子供を窒息死。第一審は傷害致死だと。広島高裁は一般人であっても密封行為で蓋然性が高いと判断するのは容易。死の結果が高い蓋然性があると読める。双方を考慮?両立不可能でもない。
錯誤。故意の応用問題。罪を犯す意思。認識の対象は犯罪構成要件としての具体的事実。客観的には犯罪行為でも事実の認識を欠く場合。責任主義の問題。過失犯は別問題として。事実の認識がない場合は故意がないとして。軽い犯罪を起こすつもりで重い犯罪を。刑法38条2項。事実を知らなかった場合は重い罪により処断出来ない。具体的事実の錯誤。同じ構成要件。客体の錯誤。特定の人を殺すつもりだったが人が違った。方法の錯誤。玉がそれて別の客体に。因果関係の錯誤。因果経路について予期と異なる。抽象的事実の錯誤。異なる構成要件の。犬を殺そうとして飼い主にあたり死亡。殺人には問われない。錯誤には同じ構成要件の中の具体的事実の錯誤。異なる構成要件の抽象的事実の錯誤。その中に3つの類型が。事例が非常に複雑。客体の錯誤と方法の錯誤について。犯罪行為の客体には個性のあるものとないものが。誰の金を盗んだのかは無視して良い要素。人を殺すときには行為者にとり重要。無作為殺人でもない限り。では人が違えば?客観的には人を殺すつもりで人を殺しているのだから故意を認めて良い。人である点が重視されその限りで抽象化。犯罪の成立に影響しない。行為者の主観的故意と客観的結果に符号。具体的符号説。方法の錯誤。客体が本来のターゲットと予期せぬターゲットの2つ。幾つかのケースを。Aを狙って発射したらそばにいたBが死亡。玉はAを貫通してBにもあたり双方が死亡。Aの飼い犬を狙って、Bの飼い犬にあたり死んだ。ケース1の検討。具体的符号説を。具体的に一致することを要求。Aに対する殺人未遂罪。Bについては過失致死罪。そばに知りながら発泡した場合は予見しているかもしれない場合はBに対する殺人既遂が。殺意を持って発射しても既遂罪を問えない。過失の成否は錯誤の問題ではない。ケース3。動物を死なせるのは動物傷害罪。未遂処罰も過失処罰もない。未遂と過失になり双方とも処罰されない、無罪に。多くの学者は別の客体でも構成要件上は同じとする。ケース1については殺人既遂罪を。法定的符号説。結論的には妥当だが。更に見解は分かれる。ケース1ではAに殺人未遂を。故意は1つしかないのだからAに故意は問えないとする説もある。具体的符号説も似ているが。ケース3については法定的符号説では傷害罪が。これについては具体的符号説でも法益が重大でない場合は認めることも。罪数論でもないわけではない。具体的事例。判例。警察官からピストルを奪おうと思い銃を発射。AB2人に障害を。単なる殺人ではなく、強盗殺人や強盗殺人未遂が問題に。検察官は2つの強盗殺人と。東京高裁は未必の殺意を求める。2つの強盗殺人罪を。87年7月28日。最高裁。一般論として犯罪の故意があるとするには犯人が罪となる事実と具体的に一致することを要しない。法定的符号説に立つと。あてはめ。被告人が人を殺害する意図で殺害行為に。意図したAには殺害するに至らず。未遂罪に。予期しなかったBに障害を。因果関係が認められるから強盗との結合があると。Bに対して殺意がなくても。1個の故意であっても双方に。2つの強盗殺人罪が。理論的に無理がなく具体的結果が妥当な説はなかなかない。
故意や過失の立証。故意や未必の殺意。立証は容易ではない。自発するケースならともなく、否定する場合は争いが。子供に対する虐待、集団的な暴行事件。傷害致死に留めるのかは悩ましい。直接証拠がない場合に。間接証拠や間接事実を積み重ねて。殺意の3要件。殺意を認定する基準。傷の部位。凶器の用法、動機。傷の部位としては身体の部位が急所に近いか、凶器。ピストルかカッター。動機。よほどの動機がないと殺人に及ばない。背景的なことから立証を。今日は裁判員制度。自由心証主義。3要素が揃っていても殺意が否定できる主張に説得力があれば殺意を否認したりすることもある。捜査段階では自白調書を取ることが重視されていた。客観的に行うのは大きな課題。

 

刑事法 (放送大学教材)

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刑事訴訟法 第9版

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