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精神分析批評(1) -テクストの無意識(文学批評への招待第8回)

文学の批評は基本的に勝手に出来ないものだと思うけれど、よく知る文学作品なら自分なりの解釈に手を染めたくなるのだろう。

 

山田広昭。濱中博久。精神分析批評。テクストの無意識。精神分析とは?特に言語や文学の問題とどう繋がっていたのか、フロイトの考えに即して。精神分析批評の歴史的意味付け。ラカンの仕事を参照して。読みの方法論として、例として日本の作家の評論を。フロイトが神経症の治療をする際の基礎として理論と治療技法を。最大の発見は無意識概念の発見。心のなかに意識の届かない活発な領域。活発に活動。独自性は意識化を妨げている抑圧など心の防衛メカニズムに求めた。意識できないのはそこに意識化を妨げる力が存在しているから。神経症の症状は意識に表れ出ようとしているものとそうでないものとの葛藤が形を変えて現れたもの。葛藤の原因として広い意味の性を。精神分析が一般理論としてはるかな射程を持つことを。00年の「夢解釈」。夢の本質が偽装された欲望充足、メカニズム。夢の仕事。無意識の理解の鍵に。心の働きと心理学への道を。性の概念を大きく押し広げる。性欲を主張したので激しい批判がありながら、関心を集め20世紀最大の心理学に。文学批評の立場から。そもそもの始まりから言葉の関係と密接な関連を持つ理論と実践。1895年の「ヒステリー研究」。研究。5人の女性の症例研究。トーキングチェア。秘密は話をさせるということにある?語る動物としての人間。話すことは原則として1人では出来ない。話すとは誰かに向かって話しかけること。常に話しかけられる可能性を含む。関係性が持つ。単独に心は存在しているわけではない。話すことは根源的には物語ることに繋がる。両方を1語で話すことができるのは独逸語やフランス語で。自分に話すことは自分史を語ること。自分史は本来の意味での歴史、属している共同体の歴史を語ることと常に繋がる。誰よりもフロイトが意識。ヒステリー研究での理論的総括。精神療法だけでなく他の者と同じように局所診断などの教育も。病歴は短編小説のように読みうる。学問性の欠如に奇異な思いが。事柄の性質故のことだとして自分を慰める。心理学的公式を用いるにしても、ヒステリーのある種の洞察を。神経生理学者としての訓練。精神科の臨床の前にはニューロンシステム、中枢神経の研究を。心の動きを。物理学的心理学を。しかし大事な思いが抜け落ちているという疑念。心の問題にはナラティブの経由を。いかなる批評の実践か。ひとりひとりの無意識の世界。多くが著者の分析へと還元しようとする傾向。マリーボナパルト。精神分析批評の記念碑的作品。精緻な作品読解としてポーの伝記的事実を。しかし少なからず問題。診断学的。無意識的コンプレックスの材料に過ぎなくなる。典型的に還元主義的な批評。文学以外に答えを求めようとする問題。そもそも文学テクストの分析を応用心理学とみるのでは、単なる拡張の場や例示の場に過ぎなくなる。60年代にロラン・バルトが「作品からテクストへ」。作者からの自立を主張するテクスト論へと。テクストの意味を作者の無意識に還元する。現在では作者とその時代と切り離すという主張は影を潜める。作品を作者の自己表現という考えに戻って良いとは言えない。無意識を作者のそれと一旦切り離しテクストの無意識を。精神分析と言語との関係。ジャック・ラカンの仕事を。構造が主体に先立つ。主体のあり方を規定する。構成主義。レヴィ・ストロース。象徴しているものよりも現実的。シニフィアンはシニフィエに先立ちつつそれを規定する。内容と表現。普通は内容が先になる。これを逆転させて表現の体系が先にあると。民族学的観察からの事実の究明を。主観的感情で説明するのではなくシンボル体系で規定されていると。ラカンは無意識の理解そのものに持ち込む。無意識は個人の生育歴で説明されるのではない。ラカンがポーの短編「盗まれた手紙」。57年にゼミの参加者の前で。ラカンには文学批評に画期的。3つの短編の最後。Dという頭文字の大臣が王妃と思しき貴婦人の手紙を盗み自宅に隠匿している。これを盗み返す。門前で盗みが。最初の盗みは王妃の部屋で。大臣が入ってきて自分のポケットから手紙を脇に置き、報告を済ませた後に代わりに王妃の手紙を。王妃は気づくが何も言い出せない。手紙の奪還は大臣の屋敷の書斎。警察が調べても手紙を発見できないのを見て、人目のつくところに違いないと判断し、真ん中に吊り下がっているのを無造作に。そっくりの手紙を用意して騒ぎを外で起こして奪還。手紙への3つの視点。何も見ていない視線。第1の視線が何も見ていないことを知る目線。その両方を目にとっている目線。手紙の保有者。隠さなければならない者。この場所。第1の場面から第2の場面。視線の担い手はすり替わる。変化を引き起こしたのは手紙の移動。大臣が居る場所は同じものになる。この移動を通じて他の登場人物の位置も移動。何も見えていない視線の。盲目性は警視総監の無能に象徴。第3の視線を占めるのがデュパン。デュパンの振る舞いも大臣のそれを繰り返す。同じ頭文字のD。ラカンは登場人物の心理を決定しているのが手紙という保有するシニフィアンを。シニフィアンとの関係で三角形上の位置を。無意識の内に決定。ラカンに先立ち解釈を試みたポナパルト。手紙の存在に言及。知られざる母の恋人。罪の観念と結びついている。手紙は不倫の罪の象徴。隠し場所に選ばれる暖炉。マントルピースの形態と女性の下半身の形態。盗まれた手紙は不在のペニスの象徴。去勢を受けていることの象徴。吊り下げられるのは否認。同じ精神分析的手法といっても大きな距離がある。ラカンは知っていて敢えてずらした。
言語と文学との関係。フロイト。歴史的位置づけ、ラカン。無意識の概念。抑圧を始めとする心の防衛System。意識化を妨げている。葛藤。広い意味での性。言葉の問題と密接な関係を持つ。annnaO。話す治療。話すことは原則として1人では出来ない。話しかけられる可能性。関係性。単独で心は存在しているのではない。物語ること。歴史と同じ用語。自分史。共同体の歴史と繋がる。
ラカンの読解を見たが、精神分析批評がテクストに何を発見するのかではなく、どのように発見するか。精神分析的アプローチの特徴。フロイト。精神分析に首を突っ込む以前にロシアの人間が画家の再吟味を行い模写を区別することを。ヨーロッパ各地の美術館に革命を。主要な特徴を度外視せよと。見過ごされていた事柄を。そこまで正確にしなくても良いと思っていた些細な部分を強調することで。ロシア名は偽名。本当はモレルビンというイタリアの医者。医学的精神分析的なもの。あまり注意されていない諸特徴から。「推論的パラダイムの根源」。フロイトの精神分析へ繋ぐ。認識論的パラダイムの転換。推論的パラダイム。細部を無意識的記号として。核心にあるのは意識の外の要素を中核として見るということ。みたところ何の重要性もないような細部に。精神分析。形式のゆらぎやちょっとした空白などのテクストの注意しないと見落とすようなものを。兆候とみなす。精神分析批評が持つ方法論的固有性。一般的な読みの方法を。懐疑の解釈学。精神分析批評はテクストの中に探り出すコンプレックスなどではなく、兆候的読解と言いうるものに。マルクス主義的世界観を。カルチュラル・スタディーズやポストコロニアリズム。批評が目指すのは歴史的政治的なものの検出。社会的な力を明るみに。書き手の意識や読み手の意識から省かれている。実際に行っていることと行っていると思っていることは多くの場合一致しない。社会的行為や政治的行為の裏側に無意識の広大な領域が。「政治的無意識」。兆候的読解の例。そこにはフロイトのフの文字もない。日本の作家坂口安吾の評論。「白痴」などを。「日本文化私観」や「堕落論」。戦後に古代史への関心を。数多くの文章を。「飛騨高山の抹殺」。古代の日本で東に向かう交通路として重要だったはずの飛騨について公式の歴史書に不可解な空白が。隣の信濃は国譲り神話の最後の抵抗地。飛騨諏訪と2国特別の扱い。飛騨は古代史上1つも重大な記事がない。それはそうだが何も無いのが不思議。隠されていると推量せざるを得ない。空白がはっきりした空白ではない。ある特別な視点が見つけ出す空白。あまりにも重大であるが故に編纂者が隠さざるを得なかった兆候として。鍵は飛騨に残された伝説。1つの身体に2つの顔。それぞれ手足がある。分身の兄弟。古事記の景行天皇記。兄弟か姉妹。2組の話は多いが著しいのは神武天皇など。空白と対を成す過度な反復。8世紀初めの古事記や日本書紀が隠す。壬申の乱。秘密が重大で隠す必要があるのはそうしなければならない現実的に生々しい。記紀編纂が必要だった理由。正統性の問題。その重大なことを分散して繰り返し手を変え品を変えてシンボライズ。神話の多くは悲劇に満ちている。編纂した側が殺したから。悲しいながら美しいと。記紀編纂の差し迫った必要性。飛騨が空白のままなのは近江への進軍に関わっているから。正鵠を得ているかの議論は置くとして、テクストでの着目点は精神分析的。短編小説のファンだった。自らの方法を兆候的読解術と呼んでも不思議はない。推理小説こそ文学的に体現するから。

 

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