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発達障害の原因、誤解、親の役割、早期対応の重要性、および適切な環境調整の必要性について解説。発達障害支援の原則を強調。(精神疾患とその治療第11回)#放送大学講義録

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表1-1と1-2には、発達障害に関する誤解について記載されています。

先ほどもお話ししましたが、発達障害は生まれつきの中枢神経系の機能障害が原因です。親のしつけや育て方が根本的な原因となることはありません。しかし、多くの親御さんは、自分のせいではないかと悩んでいます。そういう親に対して、愛情が足りないや育て方が悪いと責めてはいけません。例えば、食事の好き嫌いは、しばしばわがままと誤解されがちですが、基本的には生まれ持った発達の特性です。

ですので、無理に食べさせたり、何でも食べるように強制することは良くありません。反対に、適切な支援へと繋げるために、「大丈夫」や個性や性格といった安易な慰めは控えるべきです。「大丈夫」と言われると一時的に安心しますが、発達障害は医学的に完全に治癒する状態ではありませんが、その特性に合わせた関わり方によって、発達障害があってもその子のペースで発達できます。

したがって、「個性や性格」「大丈夫」といった言葉で支援を受けられなくなることを避けたいと思います。その子に適した時期に適切な発達支援を受けることが不可欠です。余談になりますが、発達障害は早期発見、早期対応が重要です。一般的には、3歳から5歳頃の幼児期を指しますが、発達障害は一生続くものなので、本人や家族が困った時が早期対応の時ということになります。

必要以上に早く支援を受ける必要はありませんが、何らかの壁にぶつかった時に支援を受けることが大切です。これについても後ほど触れたいと思います。

さて、発達障害について話してきましたが、ここで発達障害の定義について考えてみたいと思います。テキストに記載されていますが、私は発達障害を、生まれつきの発達の凸凹に日常生活の不適応が加わった状態と考えています。発達の凸凹は、生まれ持った能力の遅れやアンバランス、発達の特性とほぼ同じ意味で使います。これは人間なら誰もが持っているものです。したがって、凸凹や特性には良し悪しや優劣はありません。

人間が社会で生きていく上で、五感や運動能力、会話力、理解力、注意力、集中力、計画力など様々な能力が必要です。大人になると、思考力や学習力、社会性、そして適応力なども必要になります。これらの能力の発達に凸凹があって、さらに日常生活で何らかの問題を抱える状態が発達障害です。

不適応とは、個々の発達特性と環境との間のミスマッチを指します。発達障害は状況によっても変わるため、適切な環境調整によってその人の発達を支えることができます。例えば、発達が遅れている子には、その子のペースに合わせたカリキュラムで学習を進めることで、学習が促進されます。このような状況依存性が支援の重要なポイントです。

たとえ発達に凸凹があっても、その凸凹に合わせた環境を整え、苦手なことはサポートし、得意なことを伸ばすことで、不適応は最小限に抑えられ、その人本来の発達が促されます。発達障害の支援の目標は、発達の凸凹に合わせた環境調整を通じて、日常生活の不適応を減らし、発達を促進することです。ただし、不適応やミスマッチの程度は様々で、障害と非障害の境界は明確ではありません。

重要なのは、たとえ障害が軽いと思われても、本人が生活に困っているなら支援が必要であるということです。スペクトラム概念が導入され、障害の度合いが連続体として捉えられています。非常に重度な障害があっても、適切な支援により日常生活がスムーズに進んでいれば、不適応は大きくないということです。目的は、不適応を最小限に抑えることです。