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継続ケア提供の高齢者コミュニティCCRC(暮らしに活かす不動産学第11回)#放送大学講義録

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また、アメリカにはCCRCがあります。CCRCとは何でしょうか?日本にはそのような場所がないのでしょうか。教えていただきましょう。

CCRCは、コンティニュイングケアリタイアメントコミュニティの略で、健康な時から介護、認知症になるまで継続的なケアを提供する高齢者のコミュニティのことです。では、なぜCCRCが求められているのか、その背景は何でしょうか。それは介護移転リスクです。

例えば、自宅で暮らしていて、病気や怪我がきっかけで入院し、その後老人ホームに入所すると、そこで重い介護が必要になったり認知症になったり、あるいは財産的な余裕がなくなると別の老人ホームや高齢者住宅に移るという介護移転リスクが高まります。これが「住宅すごろく」と呼ばれるものです。これは避けたいものです。

この介護移転リスクを払拭したのがCCRCです。健康な時から介護、認知症になっても、一つの場所で安心して暮らせる、継続的なケアを受けられるのがCCRCの理念です。

CCRCは全米で約2000か所あり、居住者は約70万人にもなり、大きな市場を形成しています。都市型、郊外型、リゾート型、さまざまな立地で展開されています。興味深いのは、大学連携型のCCRCです。

こちらのCCRCは大学の近くにあり、約400名の高齢者が暮らしています。余生を母校の地で暮らしたい、あるいは近隣の高齢者が集まり、再び大学に通い、学生と触れ合いながら元気に暮らしています。400名の居住者の平均年齢は84歳。そのうち約8割は健常者です。そして、介護や認知症になってもここで安心して暮らせるという住まいです。

さらに、隣に大学病院があり、これも大きな安心感に繋がっています。CCRCの基本理念は3つあります。体の安心、お金の安心、心の安心です。体の安心は健康支援や介護支援。お金の安心は生活コストや介護コストの安心感。そして心の安心は、集って暮らすことによって寂しくない繋がりが生まれ、生きがいが生まれることです。

この体、お金、心の安心が備わった住まい方、コミュニティが大事ということです。では、既存の高齢者住宅と比べてCCRCは何が違うのでしょうか。まずは健康状態です。具合が悪くなってからでなく、元気なうちに入居すること。そして入居動機。不安だから、あるいは迷惑をかけたくないからというネガティブな動機ではなく、健康寿命を延ばしたい、楽しみたい、役立ちたいというポジティブな動機です。そして、ここでの居住者は支えられる人でなく担い手であるという思想です。