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高齢者支援:成年後見制度と不動産信託(暮らしに活かす不動産学第11回)#放送大学講義録

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では、こうした問題が起こらないようにするにはどうしたら良いのでしょうか。

そこで、認知症などの理由で判断能力が不十分な者を保護し、支援する法制度として、成年後見制度が設けられています。この制度の役割は、家庭裁判所により選任された成年後見人、補佐人、補助人や任意後見契約で定められた任意後見人が、本人の利益になる契約が有効に結ばれるように支援したり、逆に本人の不利益になる契約が結ばれないよう保護したりすることです。

法定後見制度のメリットとしては、判断能力の程度など本人の事情に応じた保護、支援が受けられるように、後見、補佐、補助の3種類が用意されていることです。そして、家庭裁判所により選任された成年後見監督人、補佐監督人、補助監督人が成年後見人、補佐人、補助人を監督するため、彼らが本人の保護や支援に反する行為をすることを防止できます。

次に、任意後見制度のメリットとしては、本人に十分な判断能力があるうちに自分で代理人、すなわち任意後見人を選任して代理権を与える事務を任意後見契約で定めるので、本人の意思に従った保護、支援が可能です。そして、家庭裁判所が選任する任意後見監督人が任意後見人を監督するため、任意後見人が本人の保護や支援に反する行為をすることを防止できます。

 

そして、信託という方法もあります。どんな方法でしょうか。

高齢者のためのもう1つの仕組みとして、不動産信託制度があります。信託の意義や仕組みについては、印刷教材で解説しています。高齢者が所有する不動産を信託する相手、つまり受託者としては、信託業者だけでなく、家族や親族など信頼できる人を選ぶことができます。

不動産信託を利用するメリットは、不動産の管理、運用、処分が円滑に行われる点です。民事信託の場合、信頼できる第三者に信託の受託者あるいは同意権を与えておけば、委託者である高齢者が認知症などにより意思決定ができなくなったり、自ら監督できない状況になっても、受託者が不動産の管理、運用、処分を適切に実施するよう、監督者や同意権者がチェックしてくれます。また、高齢者が死亡した場合、受託者は不動産を売却して諸費用を精算した残額を相続人に支払うため、相続をめぐるトラブルも起きにくいとされています。