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公共政策の専門知識と形成プロセス(公共政策第11回)♯放送大学講義録

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そこで、まずはこれまでにも触れてきた「専門知」という概念から考えていきましょう。現代の政府は民主主義のもとで決定し、実施していかなければなりませんから、人々の納得を得ずに政策を進めることは難しいというのが大前提です。

要するに、どのような政策を取るにしても、一定の根拠を示す必要があると言えます。政策を構想したり、根拠付けに使われたりする知識を、ここでは「専門知」と呼びます。政策資源に注目するこの授業の見方に即して言えば、政策資源の使い方や組み合わせ方を考えていく際に使われる知識であると言えるでしょう。そして、ここで重要なのは、専門家には大きく2つの種類、すなわち政策領域に関する専門家と政策過程に関する専門家があるということです。順番に見ていきましょう。

第1の政策領域に関する専門知は、新型コロナウイルス感染症におけるウイルスの特性に関する知識や、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスに関する知識といったことを念頭に置いてもらえるとわかりやすいかもしれません。政府が政策を実施していくためには、その政策がどのような効果を生むのかというメカニズムを説明していく必要があります。政策の対象となる社会の問題を正しく理解し、解決の方向性を考えるためには、対象領域の知識が不可欠です。学問分野としては、経済学や工学をはじめ、個別の政策分野ごとに、健康政策であれば医学や栄養学、農業政策であれば農学、気象や地震といったことには理学に関する知識が当たります。

それぞれの学問分野で公共政策と関連した研究が日々生み出され、技術開発も行われています。しばしば、こうした政策決定に投入される知識のことを、公共政策学では「ナレッジインプット」と呼びます。日本語では「院の知識」と言ったりすることがあります。ただ、こうした「院の知識」だけで公共政策を作ることはできないというのが通説的な考え方です。