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リンデマンとノールズの成人教育論(成人の発達と学習第7回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

司会者:そうしますと、リンデマンとノールズは成人教育に関して、ほぼ同じ考えに立っていたということでよろしいでしょうか。

堀先生:そうですね。リンデマンもノールズも、基本的にはデューイの考え方に基づいているという点で共通しています。そのため、多くの類似点が見られます。ただし、必ずしもすべてが同じというわけではありません。

司会者:例えば、どのような点が異なるのでしょうか。

堀先生:リンデマンはドイツ系移民で、ヨーロッパの教育、特にデンマークの国民高等学校の伝統に大きく影響を受けています。そのため、彼の成人教育観は、政治的な教育というよりも、リベラルな教養教育に重点を置いています。つまり、ヨーロッパ的な成人教育の教養主義的な側面が強く、ノールズとはこの点で異なると言えるでしょう。

司会者:なるほど。先ほど挙げていただいたリンデマンの成人教育の特徴の2つ目として、成人教育は非職業的な性格を持つという点がありました。その点も、やはりヨーロッパ的なリベラルな教養教育に関連するのですね。

堀先生:そうです。リンデマンは職業教育よりも、労働者の労働と教養を結びつけるような教育の在り方を考えていました。それに対して、ノールズは企業や職場を研究の中心に据え、職業教育や訓練の場での実践をより向上させる形でアンドラゴジー論を展開しました。この点で、両者のアプローチは大きく異なります。

司会者:リンデマンとノールズは同じアメリカ人ですが、リンデマンはヨーロッパ的な伝統に影響を受け、ノールズはアメリカ的な現場主義や実用主義を重視したという違いがあるんですね。

堀先生:そうです。ノールズはリンデマンが掲げた成人教育のアイデアをマニュアル化し、平易で実用的な手続き論として展開しました。

司会者:確かに、ノールズの著作の中には成人教育の現場を想定したマニュアルのような内容が多く、利用しやすいという特徴がありますね。

堀先生:それは、ノールズがハーバード大学を卒業した後、すぐに定職に就かず、卒業翌年から5年間、マサチューセッツ州で全米青年育成事業に非常勤指導者として関わり、18歳から25歳の失業青年に対する職業訓練プログラムの編成に従事していたことが影響しています。

その後、ボストン、デトロイト、シカゴのYMCAやYWCAで活動し、30代に入ってからシカゴ大学大学院に進学しました。働きながら修士課程、そして博士課程で学んでいたのです。

このような経歴から、ノールズの成人教育には実践的で、成人の日常生活に直接役立つ側面が強調されているのだと思います。

司会者:研究者の関心は、その人の経歴に大きく影響されるものですからね。