ーーーー講義録始めーーーー
ここまでのお話では、物理の見方や考え方が中心だったと思いますが、具体的に物理学はどのような自然現象を対象にしているのでしょうか?
ええ、物理学が対象とするのは、自然界全体に及びます。宇宙の果てから、原子よりもさらに小さな極微の世界まで、広範囲にわたります。
自然界を長さのスケールで整理するという考え方もあります。ここに「10」の右肩に小さな数字が付いていますが、この見方について説明しますね。例えば、「1億」は「1の後に0が8つ」なので、これを10の8乗と表します。数字の右肩に小さな8を書くことで、大きな数を簡潔に表現できます。日本語ではこれを「べき指数」と言い、英語では「パワー」と言います。
例えば「6億」は「6×10の8乗」と表現できます。逆に、小さな数、例えば「1億分の1」は、10の-8乗というようにマイナスの指数を使って表します。
確かに、たくさんのゼロを並べるよりも、指数を使ってシンプルに書く方が便利ですね。
そうです。大きな数を扱うのが非常に簡単になるので、ぜひ覚えておいてください。さて、この数の表し方を理解したところで、もう一度図に戻ります。現在観測できる宇宙の大きさは、おおよそ10の26乗メートルです。ここから3桁ずつ下がっていき、27乗、24乗といった具合にゼロの個数が減っていきます。例えば、太陽系や地球、人間の大きさは10の0乗(つまり1)に近いスケールです。人間のサイズは大体1メートル前後ですね。
ここからさらに小さなスケールに入っていくと、ウイルスや分子、原子があり、原子はさらに電子や原子核で構成されています。そして、原子核は陽子と中性子でできており、そのさらに内部にはクォークという基本粒子が存在します。このように、物理学は広大な距離スケールからミクロの世界まで、40桁ほどの範囲をカバーします。
すごく広いスケールを扱えるというのは、とてもワクワクしますね。
そうですね。普段私たちが見ている自然界は非常に限られていますが、物理学の視点を通すと、一気に視野が広がります。しかも、物理学では数少ない基本原理を使って、地上と宇宙、ミクロの世界をつないで理解できるのです。これが物理学の大きな魅力です。