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リトルワールド展示設計:言語と社会の魅力(博物館展示論第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

次に、第3室「言語」の展示を紹介します。こちらの展示は私が担当しましたが、基本構想の段階で「言語の本質である音声言語を中心にする」というテーマが提示されており、これに基づいて展示を設計しました。このため、内容の具体化に大変苦労しました。

例えば、電動式紙芝居を用いて世界各地の民話を音声で伝える方法も検討しました。また、展示の中心には、映像と音声を組み合わせた装置を採用し、来場者に様々な言語を聞いてもらう仕組みを展示業者と共に考案しました。

第3室の展示内容

この展示室では、世界の言語の多様性を実感してもらうことを目的としています。具体的には、以下のような構成になっています。

  • 映像装置による言語紹介:例えば「こんにちは」という挨拶を様々な言語で表現し、その映像を再生する装置。
  • 実際の物を使用した展示:言語に関連する物品を用いて、言語と文化の関連性を視覚的に伝えています。

展示の動線は自由動線が採用されており、来場者が自由に展示を鑑賞できる設計になっています。

第4室「社会」の展示

次に、第4室「社会」の展示を紹介します。この展示も私が担当しましたが、テーマの多様性から構想に非常に苦労しました。「社会」は文化人類学のエッセンスとも言えるほど広範囲な内容を含むため、展示資料の選定と構成に試行錯誤しました。

構想の過程

まず、文化人類学の概説書を読み返すとともに、収蔵庫に入り、展示用資料を確認しました。当時、資料のデータはコンピュータではなくカードで管理されており、そのカードを一枚一枚確認して資料の意味、用途、所属する社会構造などを調査しました。その結果、以下の展示構成にたどり着きました。

  1. 縦軸:人の一生をストーリーとして展開(生誕から成長、結婚、老年、死までの流れを描写)。
  2. 横軸:社会の成り立ちと構造(血縁関係、集団間の交易、リーダーシップ、年齢による社会組織など)。

第4室の展示内容

展示の動線は強制動線を採用しています。これは、時間軸に沿った一生をストーリーとして構成しているため、一連の流れを順序立てて観覧してもらう必要があるからです。来場者は、展示室内を進みながら「生まれた瞬間から死までの人間の一生」という縦軸のストーリーを追体験し、その中で社会構造の横軸を学ぶことができます。

展示の具体例としては、以下のような項目があります。

  • 結婚:儀式や習慣を紹介。
  • 社会構造:交易、血縁関係、リーダーシップの形式などを展示。