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展示階層性と文化人類学の手法(博物館展示論第1回)#放送大学講義録

ーーーー講義録始めーーーー

 

それでは映像をご覧ください。こちらは第4室「社会の展示室」です。
ここでは人が生まれ、育ち、大人になり、結婚し、亡くなるまで、つまり「人の一生」をテーマに展示が構成されています。
通過儀礼も重要なテーマの1つです。こちらは人が学習したり、遊んだりする様子を展示し、成人式のコーナーも設けられています。

次にこちらは結婚式のコーナーで、バリ島の結婚式が紹介されています。
その後、交易に関する展示へ進みます。交易に使われる製品や社会の仕組みを示す資料が展示されています。
また、リーダーシップをテーマにした展示では、ペルーやニューギニアのリーダーに関連する展示が行われています。
最後にお葬式をテーマとしたコーナーでは、祖先を祀る文化や儀式が紹介されています。祖先を敬うという人間の文化的側面がテーマです。

第4室を例に取り、展示を構成する上で重要な「階層性」について考えてみましょう。
展示には大テーマ、中テーマ、小テーマという階層性があります。これを論文の構造に例えると、大テーマが章、中テーマが節、小テーマが項に相当します。

たとえば、「生まれ育つ」という中テーマには、「育児用具」「子どもの服装」「遊び」などの小テーマが含まれます。
また、「結婚式」という中テーマには、「バリ島」「インド」「アラブ」の結婚式という小テーマがあり、それぞれの文化を展示で表現しています。

具体例を見ていきましょう。
第4室の最初の導入部分では、母子像が展示され、展示室のシンボルマークともなっています。これは「象徴展示」または「導入展示」と呼ばれるものです。
次に中テーマの「生まれ育つ」では、育児用具やゆりかご、子どもの衣装、遊び道具が展示されています。これらは、子どもの成長と学習が密接に関係していることを示しています。

さらに「結婚式」では、中テーマの一例として、バリ島の結婚式が小テーマとして展示されています。
同様にインドやアラブの結婚式も展示され、それぞれが独立した小テーマとして構成されています。

以上、展示の階層性について具体的な例を挙げて説明しました。
「社会」という大テーマは文化人類学そのものと言えるほど多岐にわたる複雑なテーマですが、階層性を意識してストーリーを組み立てることで、メッセージを整理し、伝えることが可能です。

ただし、長文の解説を展示に添えると観覧者が読み疲れてしまうため、解説はできるだけ短くする必要があります。
そのため、展示のメッセージをどの程度読み取れるかは観覧者に委ねられる部分も大きいです。
人によるガイドは非常に有効ですが、対応できる人数が限られるため、映像やメディアを活用した解説が効果的です。